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七帝柔道記』(ななていじゅうどうき)は、増田俊也長編小説。増田の北海道大学柔道部時代の、七帝柔道の体験をもとにした自伝的青春小説私小説。第4回山田風太郎賞最終候補ノミネート作。

七帝柔道記
著者 増田俊也
発行日 2013年2月28日
発行元 角川書店
ジャンル 小説
日本の旗 日本
言語 日本語
ページ数 580
コード ISBN 978-4041103425
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北大天塩研究林を舞台とした『シャトゥーン ヒグマの森』で小説家デビュー以来、史上最強の柔道家木村政彦の人生を追った大長編『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』の執筆に専念していた増田が描く青春群像小説。

一丸の作画で漫画化されている。また、2016年にNHK-FM青春アドベンチャー』においてラジオドラマ化もされた。

目次

概要編集

 
北海道大学構内のクラーク博士像

戦前行われていた寝技中心の高専柔道を受け継いで、北海道大学東北大学東京大学名古屋大学京都大学大阪大学九州大学の旧帝国大学7大学で現在も行われている七帝柔道を題材に、昭和の風景が描かれる。実在の人物と架空の人物が混交しているが、他大学の選手も含め、登場人物のモデルのうち何人かは実名で描かれている[1]

増田は、作品に出てくる人物のモデルたちを、リアルタイムで書く評論などに「その後」の人生を織り交ぜて登場させたり、また登場人物のモデルたちと時々雑誌上で対談したりし、彼らのキャラクターに膨らみを持たせて独特の世界観を構築している。

戦前、旧制第四高等学校で高専柔道を経験した井上靖の自伝的青春小説『北の海』の続編を意識して書かれた作品である[2][3]。井上は『北の海』の中で四高の柔道部員にスカウトされ、「体格や才能がものをいう立技と違い、寝技は練習量がすべてを決定する柔道だ」「白帯でも体格が小さくても才能がなくても寝技なら練習量を増やせば必ず強くなれる」という言葉に惹かれて入部している[4]

ストーリー編集

愛知県立旭丘高等学校で柔道部に所属していた増田俊也は、勉強が得意な方ではなく、柔道だけに身を入れて高校生活を送っていた。ある日、地元の名古屋大学柔道部の部員たちにスカウトされ、その寝技のあまりの強さに驚き、名大部員たちに紹介された井上靖の『北の海』を読んで、自分も七帝柔道をやってみたいと思う。そして北海道大学柔道部へ入ることを決意し、2浪の末に入学した。

しかし、憧れて入学した北大柔道部は、戦前の高専大会で全国優勝し、戦後の七帝戦でも常に優勝を争っていたかつての北大ではなく、選手の小型化が進み、部員も少なく、七帝戦で連続最下位を続けている弱小チームだった。七帝の他の大学から馬鹿にされ、北大内の他の体育会の部からも蔑まれ、廃部説さえ流れる状況の中で、しかし学生たちは必死に突破口を見出そうと、練習量を極限まで増やしていく。

北海道警察特練柔道部(全日本選手権オリンピックを目指している柔道界のエリート集団)への連日の出稽古、ウェイトトレーニングコーチによる容赦のないハードトレーニング、そして普段の寝技乱取りで先輩たちに絞め落とされ、抑え込まれ、涙と鼻水を流しながら向かっていく。それでも突破口が見えてこず、七帝戦で連戦連敗、部員たちは苦しみ続ける。

柔道の練習場面だけではなく、昔から延々と続く部の伝統行事などで若者らしいはしゃぎぶりを見せたりするが、普段の部員たちは泣いてばかりいる。俺たちは一向に強くなれないと泣き、試合後も負けて泣く。「なぜ北大に来てまで、将来柔道で食っていくわけでもないのにこんなに苦しい練習をしなければならないのか」と泣く。

個性ある先輩、同期、後輩たちに囲まれて北国札幌で学生生活を送る北大柔道部員たち。春に若葉が萌える巨木、秋の紅葉、積雪が1メートルを超える地吹雪の中を、旅行やデートで青春を謳歌する一般学生たちを横目に、ただただ苦しい寝技の練習を繰り返す。深い雪に閉ざされた札幌の街で、友情が芽生え、恋愛をし、少年だった新入部員たちは青年へと成長していく。

後輩たちへの鎮魂歌編集

この『七帝柔道記』について、増田は『VTJ前夜の中井祐樹』の中で、3期下(増田が4年目の時の1年目)の主将・吉田寛裕(24歳で夭折)と、吉田の同期で副主将をつとめた中井祐樹バーリトゥードジャパンオープン95で右目を失明し、引退を余儀なくされた総合格闘家)への鎮魂歌であるとしている。そして「私が書かなくていったい誰が書いてくれるというのか」と、この『七帝柔道記』に対する思いを記している。

主な舞台編集

北海道大学柔道場
北海道大学武道館
 
実在の北海道大学武道場
の2階にある。物語のほとんどは、この柔道場の中で展開する。天井が高く、天窓があり、抑え込まれるたびに外の木々の枝が風にそよぐのが見える。
北海道大学キャンパス
増田が留年を繰り返して学部に進学しないため、出てくる校舎は教養部の建物が多い。日本一広い大学のため、キャンパスの真ん中をまっすぐ貫くメーンストリートは向こうがかすんで見えないほど。
みちくさ(居酒屋)
増田が入部時に、2期先輩の和泉唯信に初めて連れていかれた居酒屋。とんでもなく粗末で狭い。ママは大場久美子の叔母。北大正門近くにある。(閉店)
北の屯田の館(居酒屋)
山内義貴トレーニングコーチの経営する居酒屋。北24条にある。北海道警特練柔道部や陸上などの一流アスリートが常連として来ている。(現存)
みねちゃん(居酒屋)
レスリングコーチのみねちゃんが経営する居酒屋。北18条にある。増田たちはここで「おまえらの寝技はだめだ」と説教される。他の体育会部員たちも常連としてたくさん来ている。(2010年閉店)
イレブン(喫茶店)
略称「くりぜん」と呼ばれるクリームぜんざいを柔道部員が食いに行くところ。(1988年閉店)
正本(寿司屋)
略称「梅ジャン」と呼ばれる梅ジャンボ寿司を柔道部員が食いに行くところ。梅ジャンは一つの寿司がおにぎりほどの大きさがある。(2006年閉店)
宝来(中華料理屋)
略称「チャン大」と呼ばれるチャーハンの大盛りを柔道部員が食いに行くところ。北24条にある。(現存)

漫画編集

一丸の作画で漫画化されている。『ビッグコミックオリジナル』(小学館)に2014年8号から2016年9号まで不定期連載された後、『ビッグコミックオリジナル増刊』へ移籍して2016年7月号から連載されている。

ラジオドラマ編集

NHK - FM 青春アドベンチャーにて2016年ラジオドラマ化。

出演

脚注編集

  1. ^ 週刊ポスト』2013年4月5日号
  2. ^ オール讀物』2012年5月号
  3. ^ 週刊文春』2013年4月4日号
  4. ^ 『北の海』(新潮文庫)井上靖

外部リンク編集