三すくみ

三者における力関係

三すくみ(さんすくみ、三竦みとも書く)とは、三つの者が互いに得意な相手と苦手な相手を一つずつ持つことで、三者とも身動きが取れなくなるような状態のことである。つまり

  1. ABに倒される
  2. BCに倒される
  3. CAに倒される

という関係。例えばAを倒した場合、BCに倒されるのがわかっているので動くことができない。

三すくみの例 編集

矢印の向く相手に勝つ、という関係を表す。

通常のじゃんけん:グー(石) ← パー(紙) ← チョキ(はさみ) ← グー ……
「石」は「紙」に包み込まれ、「紙」は「はさみ」に切り刻まれ、「はさみ」は「石」に打ち砕かれる。下記(星拳)もじゃんけんである。
星拳(ほしけん):グー(天球) ← パー(水星) ← チョキ(地球) ← グー ……
上記のじゃんけんの一種である。チョキ(地球)の手の形のみ通常のじゃんけんと異なる。
 
虫拳 『拳会角力図会』 1809年
虫拳:ヘビ ← ナメクジ ← カエル ← ヘビ ……
日本最古の三すくみ。ヘビはカエルを一飲みにする。ヘビには負けるカエルだが、相手がナメクジならばやすやすと舌でとって食べる。しかしカエルに負けるナメクジにはヘビ毒が効かず、身体の粘液で(カエルより強いはずの)ヘビを溶かしてしまう(実際にはそのようなことはおこらないが、古い時代の日本ではそう信じられていた。ただし、ナミヘビ科にはナメクジを捕食する種もいる)。このときにカエルがナメクジを食べると、その後ヘビに食べられてしまうので、ナメクジを食べられない。ヘビ、ナメクジも同様の状態で、三者とも身動きがとれず三すくみとなる。
狐拳:狐 ← 猟師 ← 庄屋 ← 狐 ……
狐は猟師に鉄砲で撃たれる。猟師は依頼主の庄屋に頭が上がらない。庄屋は狐に化かされる。
← 蟻 ……
蟻は人に踏まれ、人は象に踏まれ、象は蟻に刺される。ちなみにインドネシア周辺のじゃんけんはこの形になっている。親指が象、人差し指が人、小指が蟻。

ゲーム・漫画における例 編集

火炎草木火炎 ……
コンピュータゲームポケットモンスター』、『パズル&ドラゴンズ』、『モンスターストライク』などに見られる三すくみ。火炎を消す水分を吸い取る草木草木を燃やす火炎で構成。
……
コンピュータゲーム『ファイアーエムブレム』に見られる三すくみ。に強いに強いに強いで構成。ただし、これを逆転させる武器も存在する。
こうげきまほうバリアこうげき ……
コンピュータゲーム『ガラクタ名作劇場 ラクガキ王国』のラクガキファイト及びテレビ番組『天才ビットくん』のコーナー・グラモンバトルに見られる三すくみ。こうげきに打ち勝つまほうまほうを跳ね返すバリアバリアを破るこうげきで構成。
陸軍海軍空軍陸軍 ……
ブラウザゲームトップウォー』に見られる三すくみ。陸軍に強い海軍海軍に強い空軍空軍に強い陸軍で構成。もちろん現実の戦争ではこの限りではない。
奴隷市民皇帝奴隷 ……
漫画賭博黙示録カイジ』に登場するギャンブルのひとつ、Eカードに見られる三すくみ。奴隷をこき使う市民市民を支配する皇帝、捨て身の行為で皇帝に襲いかかる奴隷で構成。奴隷そもそも失うものがないため、殺されてもともとの状態で皇帝を討つ可能性があることから、奴隷皇帝より強いとされる。

三すくみの構造 編集

trade-offs(トレードオフズ)原文「螂蛆螂蛆、互相食也」

螂蛆ムカデのこと。正三角形の配置構造を連鎖構造に言葉として表記した。「じゃんけん」の勝負とは異なるが、互いの影響を説明するうえで「三つ巴」や「三すくみ」と表現される説明が多くの理論で利用されている。

経営理論の例 編集

産業組織論(経済学)の主要なパラダイムとして構造 → 行為 → 成果(S-C-P)がある。産業構造がその産業にいる企業の行為(戦略)を決定し、行為が産業の成果を決定し、成果がその産業の構造を決定する。

同様な論理構造として

重要制約(Core Constraints)
利益 → 技術 → 権利(Economic-Technical-User)
物資(Resources)リソース
ヒト → 作用 → モノ(People-Process-Product)
顧客(Customers)カスタマー
時間 → 費用 → 品質(Schedule-Budget-Performance)

が上げられている(上記は、矢印の向く方向に強い影響を与え行動を決定させる、関係を表す)。

各要素の影響の強弱は1対1の関係(部分構造)では勝ち負けが発生する。拮抗状態が全体最適(継続)である各要素が正三角形の位置に配置されている状態である。

三すくみは位置関係と互いの距離によってバランスされている。「」と「」が一呑みで「」から余裕で逃走可能な距離(状態)では成立しないという論理構造である。この状態で、3匹が逃走するためには互いに距離を伸ばす(正三角形が相似的に拡大する)必要があると説明されている。

参考文献 編集

関連項目 編集