世界新聞協会
世界新聞・ニュース出版社協会(せかいしんぶん・ニュースしゅっぱんしゃきょうかい、WAN-IFRA)は、100カ国で76の各国新聞協会、12の通信社、10の地域プレス組織、および多くの新聞社幹部個人で構成される国際的非営利、非政府組織である[1]。1948年に設立され、2011年現在、世界で18,000以上の出版物を代表している[2]。
略称 | WAN-IFRA |
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設立 | 1948年6月 |
種類 | 非営利組織、非政府組織 |
本部 | ドイツ フランクフルト |
貢献地域 | 全世界 |
公用語 | 英語、フランス語、ドイツ語 |
ウェブサイト |
www |
WAN-IFRAの目的は、報道の自由を擁護し促進すること[3]、新聞出版の発展を支援すること、世界的な協力を促進すること[4]であり、ユネスコ、国連、欧州評議会の相談役を務めている[5][6]。
WANによると、2007年から2011年にかけて、世界の新聞広告は41%減少し、760億ドルとなった[7]。
沿革
編集のちにWAN-IFRAとなった最も初期の組織は、国際新聞連盟(仏: Federation Internationale des Editeurs de Journaux et Publications、FIEJ)で[8]、世界中の自由な報道の存続のために戦うために、フランスとオランダの秘密報道の生き残りによって1948年に設立された新聞編集者の国際組織であった。
IFRAの起源は、ヨーロッパの出版社が新聞にカラー版を導入し始めた1961年に設立された国際新聞カラー協会(INCA)にある。1970年には、急速に発展する出版業界の技術面を扱うため、IFRA(INCA FIEJ研究協会)となった。
2007年には、MINDS(Media Information Network、当初はMobile Information and News Data Services for 3G)という非営利団体を設立し、報道機関や通信社向けの年次会議を主催している[9]。
2009年7月、世界新聞協会(WAN)は、ニュース出版業界の調査・サービス機関であるIFRAと合併し、世界新聞・ニュース出版社協会(WAN-IFRA)となった[10]。両組織はいくつかの類似した製品やサービスを構築し、会員の重複も増えていたために、5年以上前から合併について話し合いを続けていた[11]。この2つの組織は、定期刊行物部門で1世紀以上の関係を持っていた。
新聞については1日に全世界で16億人の読者を代表、1900億米ドルを売り上げている。新聞業界は世界第二位のシェアを持つ(29.8%)広告媒体であり,それはラジオ、アウトドア、映画、雑誌そしてインターネット業界の予算総計を越える。これに雑誌を組み合わせた場合、印刷業界は世界42%のシェアを持つ世界最大の広告媒体である。
アイデンティティと使命
編集WAN-IFRAは、人権を任務とする業界団体である[12]。その第一の目的は、報道の自由と新聞の経済的独立性の擁護と促進である。また、新たな戦略、ビジネスモデル、業務改善のための業界シンクタンクでもある[13]。
WAN-IFRAの主な活動は以下の通りである。
- 全世界における報道の自由、及びこれに不可欠な新聞業界の経済的自立の保護、促進。
- 異なる地域、文化同士の新聞委員会との接触、コミュニケーションの促進、それによる世界での新聞発行の支援
- 国家、地域の枠を越え、協会内での協力を推進
上記の目標の下、WAN-IFRAは、
- メディアの問題についての国際的議論の中での、新聞業界の代理し、報道の自由及び報道の専門的、営業上の利益の保護
- より良く有益な新聞の発行のため、情報、構想の世界的な交換の促進
- 新聞の発行や広告におけるあらゆる情報統制への反対
- 報道弾圧、及びそれへの侵害に対する反対運動
- 研修やその他の協力プロジェクトを通じた、途上国の新聞発行の支援
- 犠牲になった新聞発行者やジャーナリストに対する法的、物質的、人道的支援
等を行う。
WAN-IFRAはIFEX(International Freedom of Expression Exchange:表現の自由の交換に関する国際的ネットワーク)のメンバーである。IFEXは世界における表現の自由の監視、ジャーナリストや作家、ネットユーザーや、表現の自由について迫害を受けている者の保護を行う、非政府組織による世界的ネットワークである。また、IFEXTunisia Monitoring Group(チュニジアにおける表現の自由の監視組合)のメンバーでもある。これはチュニジアにおける人権改善を求める16の表現の自由回復協会からなるネットワークである。
WAN-IFRAはブリュッセルに本拠を置く地域協会、ENPA(European Newspaper Publishers Association:欧州新聞出版社協会)と多くの分野で密接に関わっている。
2009年6月19日、当時のWAN会長Gavin O'Reillyが、米ハフィントン・ポストのブロガーFaisal J. Abbas との対談で、本協会が世界70ヵ国3000名のメンバーを抱えるドイツの出版団体、IFRAとの合併に合意したことを明らかにし[14]、2009年7月、WAN(World Newspaper Association)とIFRAが合併して世界新聞・ニュース出版社協会(WAN-IFRA)となった[15]。
活動
編集- メディアの動向、技術革新、新たなるビジネスモデル、多重チャンネルの配布、及びそれに対するメディアの収束の影響等についての分析。
- 研修旅行、セミナー、そして出版等を通じた、新聞需要増加のための新聞会社の援助、広告、その他歳入の持続及び増加
- 新聞編集のビジネスについてのニュースの古参幹部とのアイデア、情報の交換の機会
- NIE活動の世界的普及の進展及び設立を通じ、新聞購読の文化の奨励のための国際協会の組織
本部
編集WAN-IFRAはドイツのフランクフルトとフランスのパリに本部を置き、シンガポール、インド、メキシコに支部を持つ[6]。
協会役員
編集2011年現在のCEOはChristoph Riess。協会会長はアイルランド系独立ニュースメディアPLC(公開有限会社)の最高執行責任者役員Gavin O'Reillyである。会計はオランダのテレグラフメディアグループの最高財務責任者役員Fred Arp。
2013年から2017年までは、トーマス・ブルネガルド、2017年から2019年までは、Michael Golden[16]が会長を務めた[17]。2019年6月に、スペインのFernando de Yarza López-Madrazoが会長に選出された[17]。
世界編集者フォーラム
編集世界編集者フォーラム(WEF)は、世界新聞・ニュース発行者協会内の編集者のための組織である。
賞状
編集WAN-IFRAは、世界のジャーナリストやメディア機関のうち、報道の自由の擁護と促進に顕著な貢献をした者に対し授与される、"Golden Pen of Freedom Award(自由の金のペン賞)"を運営している[18]。
犠牲となったジャーナリストの集計
編集1998年以来、WAN-IFRAは殺害された世界のメディア関係者の年間集計を作成している。最悪の年は2006年度で、この年は110名ものメディア関係者が職務中に殺害された[19]。
補足
編集脚注
編集- ^ Merskin, Debra L. (2019-11-12) (英語). The SAGE International Encyclopedia of Mass Media and Society. SAGE Publications. ISBN 978-1-4833-7552-6
- ^ “Partners” (英語). en:News Media Alliance. 2021年6月11日閲覧。
- ^ “The Washington Post Press Freedom Partnership expands to include WAN-IFRA as partner, Aspen Institute as supporting partner” (英語). Washington Post. (January 4, 2021). ISSN 0190-8286. オリジナルのJanuary 16, 2021時点におけるアーカイブ。
- ^ “The Washington Post Press Freedom Partnership expands to include WAN-IFRA as partner, Aspen Institute as supporting partner” (英語). Washington Post. (January 4, 2021). ISSN 0190-8286. オリジナルのJanuary 16, 2021時点におけるアーカイブ。
- ^ “UNESCO and the World Association of News Publishers join forces to ensure survival of world's media” (英語). UNESCO (2020年11月25日). 2021年6月11日閲覧。
- ^ a b “Inquirer president appointed to WAN-Ifra executive board” (英語). Philippine Daily Inquirer (2020年9月27日). September 29, 2020時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年7月12日閲覧。
- ^ “Taxing times”. The Economist. 2023年7月12日閲覧。
- ^ “FIEJ”. 2023年7月12日閲覧。
- ^ “India’s premier wire service joins global network of news agencies”. La Presna Latina (28 April 2023). 9 May 2023時点のオリジナルよりアーカイブ。27 May 2023閲覧。
- ^ “WAN-IFRA — About WAN-IFRA”. 2015年9月7日時点のオリジナルよりアーカイブ。2011年5月9日閲覧。
- ^ “About”. Wan-Ifra. 2012年8月4日閲覧。
- ^ Merskin, Debra L. (2019-11-12) (英語). The SAGE International Encyclopedia of Mass Media and Society. University of Oregon: SAGE Publications. pp. 1912. ISBN 978-1-4833-7552-6
- ^ “About”. Wan-Ifra. 2012年8月4日閲覧。
- ^ Gavin O'Reilly revealing WAN/IFRA merger
- ^ “About Us - WAN-IFRA”. 世界新聞・ニュース出版社協会(WAN-IFRA). 2023年7月12日閲覧。 “In 2009, the two associations merged to create WAN-IFRA, the World Association of News Publishers.”
- ^ Ember, Sydney (2016年10月31日). “Michael Golden, Vice Chairman of Times Co., to Retire” (英語). The New York Times. ISSN 0362-4331 2023年7月12日閲覧。
- ^ a b “President” (英語). WAN-IFRA. 2023年7月12日閲覧。
- ^ Wan-Ifra. “Press Freedom”. Wan-Ifra. 2012年8月4日閲覧。
- ^ Media employees killed in 2006
- ^ IPI・WAN、韓国を言論弾圧監視対象国に指定
- ^ 世界新聞協会会長代行が韓国の新聞法改正案の問題点を指摘
- ^ “Wan-Press.org – Now Wan-Ifra.org” (英語). 2023年7月12日閲覧。
参照
編集- トーマス・ブルネガルド、世界新聞・ニュース出版社協会 (WAN-IFRA) 会長(2013 - 2017年)