中国人民軍海上民兵(ちゅうごくじんみんぐんかいじょうみんぺい)は、中国政府出資の海上民兵である[1]南シナ海で活動していると報じられていることから、2014年のクリミア併合時のロシアの「リトル・グリーン・メン」に言及した海軍兵学校のアンドリュー・S・エリクソンの造語である「リトル・ブルー・メン」と呼ばれることもある[2]

軍旗

海上民兵は、中国共産党中央軍事委員会国防動員部の指揮下に入る。民兵法等の規定上は人民武装部が海上民兵を管轄し、装備などの提供も行っている。ただし、実態の訓練や指揮命令系統では、中国人民解放軍海軍の地方組織である軍区警備区が直接の指揮命令権を有すると考えられる[3]

運用上の役割・能力として、情報収集や建築資材の運搬、中国海軍艦艇への燃料や弾薬等の補給などの幅広い任務を果たしているほか、機雷対空ミサイルを使ったゲリラ戦の訓練も実施されている[4]。海上民兵は中国の海洋権益擁護のための尖兵的役割を果たすため、退役軍人から採用され、漁業活動とは別に給料が支払われているとの指摘がある。中国による領域侵害・不法占拠の特徴は、軍でもあり民でもあるという曖昧な位置づけの海上民兵を活用することで、相手国に負荷をかけ迅速な対応を遅らせることを目的とする[3]

海上民兵は、企業や個人の漁師から漁船を頻繁に借用する一方で、南シナ海において海上民兵のために国有の漁船団を設立しているとの指摘もある[3]。海上民兵の漁船は、通信システムレーダーなどを含む高度な電子機器を装備しているので、中国海軍を補完するとともに、中国海警等の他の機関との相互運用性を高めている。また、漁船の多くが航法衛星システムを備えているため、船舶の位置を追尾して中継することで海洋情報を収集・伝達する[5]

武装した漁船団は中国のパワープロジェクション[1]の一環であり、領土を掌握し、南シナ海全体の中国の主張に異議を唱える者を標的にするために配備されている。2016年には230隻の漁船が同じ島に群がった[1]。2020年8月には、日本尖閣諸島に100隻以上の漁船が嫌がらせを行った[1]

参考文献 編集

  1. ^ a b c d Thomas, Jason (2020年9月2日). “China’s ‘fishermen’ mercenaries”. The Weekend Australian. https://www.theaustralian.com.au/commentary/chinas-military-funds-and-trains-hundreds-of-fishermen-to-challenge-us/news-story/4f2309bc95c3fa9dffd072c95adc4ccc 
  2. ^ Jakhar, Pratik (2019年4月15日). “Analysis: What's so fishy about China's 'maritime militia'?”. monitoring.bbc.co.uk. BBC Monitoring. 2020年7月25日閲覧。
  3. ^ a b c 陸上における領域警備に関する考察 -準軍事組織の創設-”. 防衛省. 2023年2月2日閲覧。
  4. ^ 中国第3の海上兵力:海上民兵”. 防衛省. 2023年2月2日閲覧。
  5. ^ 中国の海上民兵と国際法”. 島嶼研究ジャーナル 第7巻1号 (2017年10月). 2023年2月2日閲覧。