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中華民族の象徴
中華民国、初期の国旗(五色旗)
中華民国、初期の国旗(五色旗)
漢族と55の少数民族を描写した北京の壁画
漢族と55の少数民族を描写した北京の壁画

中華民族(ちゅうかみんぞく)という用語は、中華人民共和国国籍を持つ全ての文化的集団(エスニック・グループ)を統合した政治的共同体(ネーション)を表す概念である[1][2][3][4]中国共産党漢族だけでなく、蒙古族満州族チベット族ウイグル族などの少数民族も含むとしている[5]。例えば、中国への遠征中に亡くなった蒙古族のチンギス・ハーンは「中華民族の英雄」と中国共産党では扱われている[6][7][8]

中華民族
繁体字 中華民族
簡体字 中华民族

中国共産党によって中華民族に属すると定められた人々が居住する地域を中国の一部であると解釈することにより、そのような人々や地域を武力で併合していく帝国主義であるとして問題視する見方もある[5]

概念の形成編集

中国共産党政権は、「中華民族」を「漢族と55少数民族の総称」と規定している[9][1][3]

満州人が成立した清国末期(20世紀)に君主制が廃止すべき革命派が「駆除韃虜、回復中華、創立合眾政府」をスローガンに掲げて辛亥革命と呼ばれる共和制国家の樹立運動を行い、辛亥革命が成功すると漢民族の革命派は立憲派や保皇派が革命派の排満論に対抗して提唱した五族不可分論である「五族共和」を採用し[10][11][12][13]、1912年1月1日に孫文が臨時大総統就任宣言で「漢満蒙回蔵ノ諸他ヲ合シテ一国トナシ、漢満蒙回蔵ノ諸族ヲ合シテ一人ノ如カラントス」[14]として清王朝の支配下にあった地域を統合しようとし、1921年に孫文は三民主義の具体的方策の中で「漢族ヲ以テ中心トナシ、満蒙回蔵四族ヲ全部我等ニ同化セシム」[14]として満州人・モンゴル人ウイグル人チベット人を同化することを提唱した[5]1925年には孫文は、外来民族は一千万しかいないとして、4億人のほとんどが漢民族であるので中国人は完全な単一民族であるとした演説を行っている[5]このような経緯から漢民族によって中華民族という概念が形成された[5]

「中華民族」という単語が初めて公式に出てくるのは、1900年11月、の政治家伍廷芳の講演とされる。その後、時代のジャーナリストの梁啓超などが使用するようになる。梁啓超の著作では、1905年に書かれた歴史上中国民族之観察では、満州族モンゴル族チベット族は中華民族に含まれないとしているが、1922年の「中国歴史上民族之研究」では満州族を中華民族に含むとしている。1988年、費孝通が発表した「中華民族多元一体構造」論では、中国に住む諸民族は、数千年の歴史を経て形成された一体性を有するとしている[15]。この「中華民族多元一体構造」は現在の中国の民族政策の基本路線を成すとされる[16]

習近平は、2012年11月の中国共産党中央委員会総書記就任から「中華民族の偉大なる復興」をスローガンに掲げている。民族の始祖とされる黄帝への崇拝は強まっており、ウイグルチベットなどからは、自分たちが「中華民族」という概念に含まれることへの反発も出ているとされる[9]。また、中華民族主義への反発は台湾独立派と香港本土派においても存在する。 [17][18]。これに反発してできたのが香港民族主義であり、香港人は一つの民族であるとする香港民族論も影響を受けている[19]劉仲敬は中華民族は政治的捏造であるとして諸夏主義を提唱した。

脚注編集

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  1. ^ a b Dan Landis; Rosita D. Albert (14 February 2012). Handbook of Ethnic Conflict: International Perspectives. Springer. pp. 182–. ISBN 978-1461404477.
  2. ^ Zhao, Suisheng (2000). "Chinese Nationalism and Its International Orientations". Political Science Quarterly. 115 (1): 1–33. doi:10.2307/2658031. JSTOR 2658031.
  3. ^ a b Alan Lawrance (2004). China Since 1919: Revolution and Reform: a Sourcebook. Psychology Press. pp. 252–. ISBN 978-0-415-25141-9.
  4. ^ Donald Bloxham; A. Dirk Moses (15 April 2010). The Oxford Handbook of Genocide Studies. Oxford University Press. pp. 150–. ISBN 978-0-19-161361-6.
  5. ^ a b c d e 酒井信彦 (2004年2月24日). “中国・中華は侵略用語である ― シナ侵略主義の論理構造 ―”. 財団法人・日本学協会『日本』 平成16年(2004)2月号. 日本ナショナリズム研究所. 2010年11月21日閲覧。
  6. ^ チンギス・ハンは誰の英雄”. 朝日新聞 (2002年11月29日). 2019年9月24日閲覧。
  7. ^ The Chinese Cult of Chinggis Khan: Genealogical Nationalism and Problems of National and Cultural Integrity, City University of New York.
  8. ^ チンギス・ハンは中華的英雄?奪われた陵墓の数奇な運命”. ニューズウィーク日本語版 (2015年7月30日). 2019年9月24日閲覧。
  9. ^ a b “中国で勢い増す「黄帝」崇拝 愛国心鼓舞、少数民族抑圧と紙一重”. 北海道新聞. (2014年5月18日). http://dd.hokkaido-np.co.jp/news/international/international/1-0124959.html 2014年5月18日閲覧。 
  10. ^ Fitzgerald, John (January 1995). "The Nationaless State: The Search for a Nation in Modern Chinese Nationalism". The Australian Journal of Chinese Affairs. 33 (33): 75–104. doi:10.2307/2950089. ISSN 0156-7365. JSTOR 2950089.
  11. ^ 片岡一忠「辛亥革命期の五族共和論をめぐって」『中国近代史の諸問題』、国書刊行会、1984年
  12. ^ 村田雄二郎「中華民族論の系譜」、飯島渉、村田雄二郎、久保亨編『シリーズ20世紀中国史1中華世界と近代』、東京大学出版会、2009年
  13. ^ Susan Debra Blum; Lionel M. Jensen (2002). China Off Center: Mapping the Margins of the Middle Kingdom. University of Hawaii Press. pp. 170–. ISBN 978-0-8248-2577-5.
  14. ^ a b 孫文全集
  15. ^ 西見由章 (2014年5月6日). “【キーワードで読む沸騰中国】ウイグルも「中華民族」?”. 産経新聞. http://sankei.jp.msn.com/world/news/140506/chn14050612270003-n1.htm 2014年5月6日閲覧。 
  16. ^ 中国の民族理論とその政策的実践の文化人類学的検証”. 東北大学東北アジア研究センター. 2014年5月6日閲覧。
  17. ^ 大中華主義
  18. ^ 大中華膠的懺悔
  19. ^ 雨傘運動とその後の香港政治 - J-Stage

関連項目編集