亀裂のなか』(きれつのなか)は、1962年に発表された梶山季之推理小説[1]密室で自殺した証券マンの事件を経済部記者が追う。

亀裂のなか
著者 梶山季之
発行日 1962年
発行元 河出書房
ジャンル 推理小説
日本の旗 日本
言語 日本語
ウィキポータル 文学
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あらすじ 編集

経済担当の記者は、新聞に同級生がガス自殺した記事を見て驚く。なぜなら、彼は大阪にいるはずで、証券会社に転職したという話もきいていないからだ。

調べると、死んだのは同級生に成りすました別人だった。記者は、警察とともに事件の真相に迫っていく。

登場人物 編集

  • 蓮井純(はすい じゅん) - 主人公。経済畑の雑誌記者。岡山出身。
  • 国米英作(こくまい えいさく)と名乗る男 - 証券マン。自殺と思われる遺体でアパートの自室で死んでいた。
  • 国米英作(本物) - 主人公の同級生。大阪で所帯を持っていた。
  • 桑田宗一郎(くわた そういちろう) - 主人公と国米の同郷で同級生。銀行員。
  • 管理課長 - 証券会社の株式部管理課の課長。株券の紛失に気付く。
  • 和田順之助(わだ じゅんのすけ) - 証券会社の人事部長。国米と名乗る男の上司で、太っている。
  • 殿岡功(とのおか いさお) - 探偵会社の社員。急に退社した。
  • 木下杢吉(きのした もくきち) - 探偵会社の社長。片目が義眼。
  • 南(みなみ)警部 - 所轄の捜査係長。国米の事件の責任者。

提示される謎 編集

密室と人物入れ替わり。

事件現場 編集

  • テープで内張りした密室で、ガスのチューブに切り込みがあり、一酸化炭素中毒と思われる。アパートの住人と管理人がガラスを破り、部屋に入って死体を発見した。
  • 死者は証券の営業マンで、主人公の同級生の名前を騙り働いていた。同級生は大阪で健在だった。
  • 被害者は夜八時に帰宅。黒メガネで視覚障害のマッサージ[2]が午後十時にドアを叩くが応答は無かったという。

特記事項 編集

  • 客に「預かり証」を渡し、有価証券は証券会社が「保護預り」で保管するという、電子化以前のスタイルが描かれている。
  • 題名は、「亀裂の入ったガスチューブ」と「業界内部の背任行為」のダブルミーニング。

発表 編集

1962年10月に『別冊小説新潮』に連載された。単行本および文庫は、河出書房から出版。梶山の推理小説としては最初期のものである。

脚注 編集

  1. ^ 証券マンの謎の死と人物なりすましを描いた推理小説ではあるが、株式が電子化されず、現物が流通している時代の証券界を描く経済小説でもある。
  2. ^ 作中では、昨今はテレビや書籍で使用を控える単語で表記されている。