二次方程式の解の公式

二次方程式の解の公式

二次方程式は、係数の加減乗除および平方根により解を求めることができる。実際に、二次方程式の解の公式: Quadratic formula; 二次式のの公式)は次の式で与えられる:

二次方程式
の解は

二次方程式の解の公式の導出には平方完成が行われるが、他の方法として、因数分解グラフを描くなどがある。

逆に、因数分解が困難な二次式は、二次方程式の解の公式から因数定理により因数分解することができる。

歴史的には、二次方程式の問題としての提起は紀元前300年ユークリッド古代ギリシア)やそれ以前にさかのぼるが、負の数は17世紀まで認められなかったため、負の数を回避した形式であった。現在我々が知っている形の二次方程式の解の公式が書物に登場するのは、ルネ・デカルト1637年に出版された "La Géométrie英語版" である。

解の公式の導出編集

二次方程式

 

を解くのは、一次の項「 」があるのとないので大きく難易度が変わる。

一次の項「 」が無ければ、

 

  について解くことにより、

 

 c/a平方根であると分かる。

一次の項「 」がある場合、平方完成により一次の項が無い形に帰着できる[1](p. 291, Chapter 13 §4.4)[2]:56[3]:178[4]:81

 

の両辺を a で割る:

 

+c/a を移項する:

 

左辺を平方完成するために、両辺に   を加える。

 

両辺の平方根をとる。ここで a の符号は正の場合と負の場合があるが、どちらでも次の等式が成り立つ:

 

+b/2a を移項して解が得られる:

 [5]:219

このプラスマイナス記号 "±" は次の2つを示している。

 

上以外の導出では、  の操作に多少の違いがある。

一次の係数の表示編集

一部の文献、特に古いものでは  [6] [7]といった異なる係数表示をしていることがある。この場合 b は一般的な表示の 1/2 である。

日本の高校数学の教科書では、一次の係数が偶数の場合の解の公式として、

 

が紹介されている。

発展の歴史編集

二次方程式に解を与える最初期の方法は幾何学的であった。バビロニア楔形文字で書かれた文字板には二次方程式を解くことに単純化可能な問題が含まれていた[8]:34エジプト中王国の時代(紀元前2050年 - 紀元前1650年)にまで遡る、エジプトのベルリンパピルス英語版には二項の二次方程式の解が含まれていた[9]:530

古代ギリシアの数学者ユークリッド(およそ紀元前300年)は原論という自身の著作の中で二次方程式を解くのに幾何学的方法を使った。原論は非常に大きな影響を与えた数学の学術文献である[10]。およそ紀元前200年の中国の九章算術には二次方程式に対する解法が登場する[11][12]:380。古代ギリシアの数学者ディオファントス(およそ紀元前250年)は、自身の著作算術において二次方程式を解いたが、彼の手法はユークリッドの幾何学的手法と比較してより代数学的であったとされる[10]。ディオファントスの解は、たとえ2つの解が共に正であっても1つの解のみを与える[13]

インドの数学者であるブラフマグプタ597年-668年)は自身の学術文献 Brāhmasphuṭasiddhānta英語版 の中で二次方程式の解の公式を明示した。Brāhmasphuṭasiddhāntaは628年に出版されたが[14]:86、記号ではなく言葉を使って書かれていた[15]:61。ブラフマグプタによる二次方程式   の解法は「絶対数に平方[の係数]の四倍を掛け、中間項[の係数]の平方を加え、同平方根をとって中間項[の係数]を引いてから、平方[の係数]の二倍で割ったものが、その値である」[16]:87というもので、これは式で書けば

 

ということである。初期のギリシアおよびインドの数学者に影響を受けた9世紀のペルシアの数学者フワーリズミーは、二次方程式を代数的に解いた[17]。全ての場合に対して有効な二次方程式の解の公式は1594年シモン・ステヴィンによって最初に得られた[18]:4701637年にはルネ・デカルトによって "La Géométrie英語版" が出版されたが、この本には今日私たちが知っている形式で二次方程式の解の公式が収録されている。一般解が現代的な数学の学術文献に初めて登場したのは論文 Heaton (1896) の中で言及されたものである[19]

参考文献編集

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  1. ^ Rich, Barnett; Schmidt, Philip (2004), Schaum's Outline of Theory and Problems of Elementary Algebra, The McGraw–Hill Companies, ISBN 0-07-141083-X, https://books.google.com/books?id=8PRU9cTKprsC 
  2. ^ Li, Xuhui (2007), An Investigation of Secondary School Algebra Teachers' Mathematical Knowledge for Teaching Algebraic Equation Solving, ProQuest, "The quadratic formula is the most general method for solving quadratic equations and is derived from another general method: completing the square." 
  3. ^ Rockswold, Gary (2002), College algebra and trigonometry and precalculus, Addison Wesley 
  4. ^ Beckenbach, Edwin F.; Drooyan, Irving; Grady, Michael D. (1986), Modern college algebra and trigonometry, Wadsworth Pub. 
  5. ^ Sterling, Mary Jane (2010), Algebra I For Dummies, Wiley Publishing, ISBN 978-0-470-55964-2, https://books.google.com/books?id=2toggaqJMzEC 
  6. ^ Kahan, Willian (2004-11-20), On the Cost of Floating-Point Computation Without Extra-Precise Arithmetic, https://people.eecs.berkeley.edu/~wkahan/Qdrtcs.pdf 2012年12月25日閲覧。 
  7. ^ Quadratic Equation at ProofWiki
  8. ^ Irving, Ron (2013). Beyond the Quadratic Formula. MAA. ISBN 978-0-88385-783-0. https://books.google.com/books?id=CV_UInCRO38C 
  9. ^ Edwards, I. E. S.; Gadd, C. J.; Hammond, N. G. L. (1971). The Cambridge Ancient History Part 2 Early History of the Middle East. Cambridge University Press. ISBN 978-0-521-07791-0. https://books.google.com/books?id=slR7SFScEnwC 
  10. ^ a b Irving 2013, p. 39.
  11. ^ Aitken, Wayne. “A Chinese Classic: The Nine Chapters”. Mathematics Department, California State University. 2013年4月28日閲覧。
  12. ^ Smith, David Eugene (1958). History of Mathematics. Courier Dover Publications. ISBN 978-0-486-20430-7. https://books.google.com/books?id=uTytJGnTf1kC 
  13. ^ Smith 1958, p. 134.
  14. ^ Bradley, Michael (2006), The Birth of Mathematics: Ancient Times to 1300, Infobase Publishing 
  15. ^ Mackenzie, Dana (2012), The Universe in Zero Words: The Story of Mathematics as Told through Equations, Princeton University Press 
  16. ^ Stillwell, John (2004). Mathematics and Its History (2nd ed.). Springer. ISBN 0-387-95336-1. "To the absolute number multiplied by four times the [coefficient of the] square, add the square of the [coefficient of the] middle term; the square root of the same, less the [coefficient of the] middle term, being divided by twice the [coefficient of the] square is the value." 
  17. ^ Irving 2013, p. 42.
  18. ^ Struik, D. J.; Stevin, Simon (1958), The Principal Works of Simon Stevin, Mathematics, II-B, C. V. Swets & Zeitlinger, https://www.dwc.knaw.nl/pub/bronnen/Simon_Stevin-%5bII_B%5d_The_Principal_Works_of_Simon_Stevin,_Mathematics.pdf 
  19. ^ Heaton, Henry (1896), “A Method of Solving Quadratic Equations”, American Mathematical Monthly 3 (10): 236-237, doi:10.2307/2971099, https://www.jstor.org/stable/2971099?seq=1#references_tab_contents 

外部リンク編集