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暦注下段(れきちゅうげだん)とは、の最下段に書かれていた日々の吉凶についての暦注である。単に下段ともいう。市販の暦では、下段ではなく行事の欄に記載しているものもある。

迷信的な要素が多く、その弊害も大きいことから、日本では朝廷政府などから3回も禁止され、また識者からの批判も多かった。しかし、なかなか改められず、現在まで庶民の間で根強く生き残っている。

目次

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下段には、以下のようなものがある。

これら下段の暦注は本来、受死日(●)と十死日(十し)は他のものと重複して記載されず、その他のものは1日にいくつも重なることが多く、たまに下段が空欄になることもあるというものである。しかし現在では六曜九星などに押されてマイナーになっていることもあり、現在の市販の暦では、下段自体を記載しなかったり、記載するにしても1日に1つあるいは2つしか記載されなかったり、複数個記載する場合でも、受死日や十死日であっても他のものと重複して記載されたりしている場合も多い。

受死日編集

じゅしにち、じゅしび。の下段に「●」の印で表されることから黒日ともいう。現在の市販の暦では「●日」と書かれることもある。

この日は最悪の大凶日とされ、この日には他の暦注は一切見る必要がないという。この日に病を患えば必ず死ぬとまで言われる。病気見舞い、服薬、針灸、旅行が特に凶とされているが、葬式だけは差し支えないとしている。

受死日の配当は節切りで、以下のようになっている。

1月 戌の日
2月 辰の日
3月 亥の日
4月 巳の日
5月 子の日
6月 午の日
7月 丑の日
8月 未の日
9月 寅の日
10月 申の日
11月 卯の日
12月 酉の日

十死日編集

じゅうしにち。には「十し」と書かれることがある。

受死日(黒日)の次に凶日とされ、全てのことに凶とされる。ただし、受死日と違い、葬式も差し支えありとしている。

十死日の配当は節切りで、以下のように、酉・巳・丑の繰り返しになっている。

1月 酉の日
2月 巳の日
3月 丑の日
4月 酉の日
5月 巳の日
6月 丑の日
7月 酉の日
8月 巳の日
9月 丑の日
10月 酉の日
11月 巳の日
12月 丑の日

五墓日編集

ごむにち。

その日取りは人によって異なり、その人の生まれ年の納音の性によって、次のように決定する。

木性の人 乙丑の日
火性の人 丙戌の日
土性の人 戊辰の日
金性の人 辛未の日
水性の人 壬辰の日

五墓とは五つの墓のことであり、十二支が土性なので、これら5つの干支の日を五墓日としている。

五墓日はいずれも凶日で、家作りは構わないが、動土・地固め・葬式・墓作り・種まき(播種)・旅行・祈祷などは凶とされる。その名前から、この日にこれらのこと(特に葬式)を行うと、墓を5つ並べる(5人が死ぬ)ことになるとも言われている。

帰忌日編集

きこにち、きしにち、きこび、きこじつ、きいみび。暦には「きこ」とも書かれる。現在の暦では「きいみ」と書かれることもある。

帰忌とは、天棓星(てんぼうせい:りゅう座のβ,γ,ζ,ν星)の精である。この帰忌が地上に降りて来て、人家の門の前で家人が帰って来るのを妨害するとされる日が帰忌日である。大変古い暦注で、正倉院に納められている天平勝宝8歳の具注暦にも「帰忌日、其日遠行、帰家、移徙(わたまし)、呼女、娶婦すべからず」と記載されている。市販のでは、金の貸し借りも凶としている。

帰忌日は節切りで、以下のように配当される。

1月・4月・7月・10月 丑の日
2月・5月・8月・11月 寅の日
3月・6月・9月・12月 子の日

血忌日編集

ちいみにち、ちいみび、ちこにち。暦には「ちいみ」とも書かれる。

血忌とは、梗河星(うしかい座のρ,σ,ε星)の精で、中国ではこの3つの星を「殺忌」「日忌」「血忌」と呼んで、殺伐の気を司るとしていた。この日は血を見ることが凶で、特に鍼灸、刑戮(死刑執行)、狩猟などが凶とされる。

血忌日は大変古い暦注で、具注暦にも「其日不可針刺出血」と記載されている。

血忌日は節切りで、以下のように配当される。

1月 丑の日
2月 未の日
3月 寅の日
4月 申の日
5月 卯の日
6月 酉の日
7月 辰の日
8月 戌の日
9月 巳の日
10月 亥の日
11月 午の日
12月 子の日

重日編集

じゅうにち。には「ちう日」と書かれることがある。

重日は、が重なるの日と、陰が重なるの日に配当される。

この日に行ったことは重なって起るとされ、吉事には吉で、凶事には凶とされる。但し、婚礼は再婚に繋がるので良くないとされる。

また月と日の数字が同じ日も重日といわれる。

復日編集

ふくにち、ぶくび。には「ぶく日」と書かれることがある。

この日に吉事を行えば吉が重なり、凶事を行えば凶が重なるとされる。但し、婚礼は再婚に繋がるので凶である。

復日は節切りで、以下のように配当される。

1月・7月 甲(きのえ)と庚(かのえ)の日
2月・8月 乙(きのと)と辛(かのと)の日
3月・6月・9月・12月 戊(つちのえ)と己(つちのと)の日
4月・10月 丙(ひのえ)と壬(みずのえ)の日
5月・11月 丁(ひのと)と癸(みずのと)の日

天火日編集

てんかにち、てんかび。地火日に対応するもので、五貧日ともいう。

五行説では、火気を天火・地火・人火の3つに分ける。このうち天火とは、天の火気が酷しいという意味である。

天火日に棟上げ、屋根葺きなどをすると、必ず火災があるとされている。また、家屋の修理や移徙(わたまし:貴人の転居)に凶とされる。

天火日は節切りで、以下のように配当される。これは、三箇の悪日の一つ、狼藉日と全く同じ配当である。

1月・5月・9月 子の日
2月・6月・10月 卯の日
3月・7月・11月 午の日
4月・8月・12月 酉の日

地火日編集

ぢかにち、ちかび。天火日に対応するものである。

五行説では、火気を天火・地火・人火の3つに分ける。このうち地火とは、大地の火気が酷しいという意味である。

地火日には、動土・定礎・柱建て・井戸掘り・種まき・築墓・葬式などが凶とされる。

地火日は節切りで、以下のように配当される。これは、十二直の「平」と全く同じ配当であるが、地火日で凶としているものが「平」では吉となっており、矛盾がある。

1月 巳の日
2月 午の日
3月 未の日
4月 申の日
5月 酉の日
6月 戌の日
7月 亥の日
8月 子の日
9月 丑の日
10月 寅の日
11月 卯の日
12月 辰の日

凶会日編集

くえにち、くえび。には「くゑ日」と記載される。陰陽二気の調和がうまく行かず、万事に忌むべき日で、この日に吉事を行うことは凶とされている。市販の暦では「くしえ・くしゑ」となっていることもある。

古い暦注の一つで、具注暦には24種の名称で記載されている。宣明暦には1年に82回記載され、貞享暦で72回に整理された。

凶会日の撰日には諸説あるが、宣明暦時代は節切りで、貞享暦以降は月切り旧暦)による。凶会日は、月毎に特定の干支を定める。下記のうち、括弧書きのものは貞享暦で廃止されたものである。

1月 辛卯・(庚戌)・甲寅
2月 己卯乙卯辛酉
3月 甲子乙丑丙寅丁卯戊辰壬申戊申庚辰甲申甲辰丙申甲辰庚申・(癸亥
4月 戊辰・(己巳)・辛未癸未乙未己亥丙午丁未・(丁巳)・戊午己未癸亥
5月 丙午・(壬子)・戊午
6月 己巳丙午丁未・(癸丑)・丁巳・(戊午)・己未
7月 乙酉甲辰庚申
8月 己酉乙卯辛酉
9月 丙寅)・甲戌・(戊寅)・(庚寅)・辛卯壬辰癸巳甲午乙未丙申丁酉戊戌・(壬寅)・庚戌甲寅
10月 乙丑己巳丁丑戊子己丑戊戌己亥辛丑壬子癸丑丁巳癸亥
11月 戊子丙午壬子
12月 戊子丁未壬子・(癸丑)・癸亥

往亡日編集

おうもうにち。

「往(ゆ)きて亡ぶ日」の意味であり、昔はこの日に軍を進めることや遠行が忌まれた。また、拝官・移転・婚礼などが凶となる。

往亡日は節切りで、各月の節気の日からの日数で決められている。

1月 7日目
2月 14日目
3月 21日目
4月 8日目
5月 16日目
6月 24日目
7月 9日目
8月 18日目
9月 27日目
10月 10日目
11月 20日目
12月 30日目

三箇の悪日編集

三箇の悪日(さんがのあくにち)とは、大禍日狼藉日滅門日の3つの凶日の総称である。

三箇の悪日は、その人の生まれ年の十二支によって撰日が異なる。配当を下記に示す。月は節切りである。

生年 忌月 大禍日 狼藉日 滅門日
寅年生まれ 1月
卯年生まれ 2月
辰年生まれ 3月
巳年生まれ 4月
午年生まれ 5月
未年生まれ 6月
申年生まれ 7月
酉年生まれ 8月
戌年生まれ 9月
亥年生まれ 10月
子年生まれ 11月
丑年生まれ 12月

例えば、巳年生まれの人は、節月の4月が忌月となり、その月の申の日・酉の日・寅の日が三箇の悪日となる。1月の悪日は寅年生まれの人のみ、2月は卯年生まれの人のみというように、忌月によって適用される生年の十二支が限られる。しかし、市販のには、この表に書かれた全ての日を、生年に関係なく全ての人にとっての悪日としているものもある。

三箇の悪日は万事に用いるべからず、とされており、特に仏事は大凶としている。

大禍日編集

たいかにち。三箇の悪日の中でも最も悪い日とされている。口舌は慎み、家の修理、門戸の建造、船旅、葬送は厳しく忌むべし、とされている。

狼藉日編集

ろうしゃくにち。万事に凶とされる。この日取りは天火日と全く同じである。この日を犯すと、百事皆失敗すると言われる。

滅門日編集

めつもんにち。万事に凶で、この日を犯すと、「滅門」の字の通り、一家一門を亡ぼすと言われている。

なお、暦注の中に滅日と呼ばれる万事に凶とされる日が存在するが、これは暦法の計算上生じたもの(理想上の暦の1年(=360日)と実際の1年とのずれが1日分に達した日)であり、全く異なる性格のものである。また、滅日そのものが江戸時代貞享暦改暦の時に廃止されているため、現在の旧暦などには反映されていない。一方、滅門日を略して「滅日」と呼ぶケースもあり、両者が混同されることがある。

時下食編集

ときげじき。下食時(げじきどき)とも言う。時下食は、他の暦注と異なり、特定の日の特定の時間だけを忌むものである。

時下食とは、歳下食と同様に、流星の一種である天狗星(てんこうせい)の精が食事のために下界に下りて来る時間である。この時に人間が食事をすると、食物の栄養が全て天狗星の精に吸い取られてしまうとされ、その残りを食べると災いがあるという。また、この時間には食事の他、種まきや俵を開けること、沐浴、草木を植えることも凶とされる。

時下食の日と時間は以下の通りである。月は節切りである。例えば、1月は未の日の亥の刻が時下食となる。

1月 未日亥刻
2月 戌日子刻
3月 辰日丑刻
4月 寅日寅刻
5月 午日卯刻
6月 子日辰刻
7月 申日巳刻
8月 酉日午刻
9月 巳日未刻
10月 亥日申刻
11月 丑日酉刻
12月 卯日戌刻

(但し、貞享暦以降のでは、5~10月のみを記載している。)

歳下食編集

さいげじき、さいかじき。

歳下食とは、時下食と同様に、流星の一種である天狗星(てんこうせい)の精が食事のために下界に下りて来る日であるが、時下食とは異り、歳下食は時間に関係がない。

歳下食は軽い凶日とされ、他の暦注に吉日があれば、歳下食は忌む必要がない。ただし、他の凶日と重なると、より重くなる。この日は、大食・大酒を慎む日とされる。また、時下食と同じく、種まきや俵を開けること、草木を植えることも凶とされる。

歳下食は特定の干支の日に配当され、その干支は年の十二支により異なる。数字は甲子からの日数である。

子年 14 丁丑
丑年 27 庚寅
寅年 4 丁卯
卯年 29 壬辰
辰年 54 丁巳
巳年 43 丙午
午年 44 丁未
未年 57 庚申
申年 34 丁酉
酉年 23 丙戌
戌年 48 辛亥
亥年 5 庚子

七箇の善日編集

天赦日編集

てんしゃにち、てんしゃび。には「天しや」と書かれ、選日にも書かれる。

この日は、百神が天に昇り、天が万物の罪を赦(ゆる)す日とされ、最上の大吉日である。そのため、天赦日にのみ「万(よろづ)よし」とも注記される。

天赦日は季節と日の干支で決まり、年に5回または6回ある。

立春から立夏の前日まで 戊寅の日
立夏から立秋の前日まで 甲午の日
立秋から立冬の前日まで 戊申の日
立冬から立春の前日まで 甲子の日

神吉日編集

かみよしにち、かみよしび。には「神よし」と書かれる。

神事に関すること、すなわち神社に詣でること、祭礼、祖先を祀ることに吉とされる。この暦注は、日本独自のものである。

神吉日は日の干支だけで決まり(不断)、以下の33種の干支に配当される。数字は甲子からの日数である。

大明日編集

だいみょうにち。には「大みやう」と書かれる。

「大明」は天地が開通して、隅々まで太陽の日が照る日という意味であり、全ての吉事・善事に用いて大吉である。特に建築・移転・旅行に良いとされる。

大明日は、代の大明暦で初めて登場した暦注である。

大明日は日の干支だけで決まり(不断)、以下の25種の干支に配当される。数字は甲子からの日数である。

(6己巳・7庚午・44丁未・55戊午を除く21種とする説もある)

鬼宿日編集

きしゅくび。選日および吉凶は二十八宿の「鬼宿」と同じである。

天恩日編集

てんおんにち。には「天おん」と書かれる。

名前の通り、天の恩恵を受ける日で、吉事に用いて大吉であるが、凶事に用いてはならないとされる。

天恩日は、母倉日月徳日と共に宝暦暦で初めて登場した暦注である。

天恩日は日の干支だけで決まる(不断)。配当には諸説あるが、『暦林問答集』では以下の15種の干支の日としている。数字は甲子からの日数である。

母倉日編集

ぼそうにち。には単に母倉と書かれる。

母が子を育てるように天が人間を慈しむ日という意味で、「七箇の善日」の一つである。何事にも吉で、特に婚姻は大吉とされる。また、普請・造作も吉である。

母倉日は節切りで、次の日に配当される。

1月・2月 子と亥の日
4月・5月 寅と卯の日
7月・8月 丑・辰・未・戌の日
10月・11月 申と酉の日
3月・6月・9月・12月 巳と午の日

月徳日編集

つきとくにち、がっとくにち。

家の増改築など土に関わる行いに吉とされる。

月徳日は節切りで、次の日に配当される。

1月・5月・9月 丙(ひのえ)の日
2月・6月・10月 甲(きのえ)の日
3月・7月・11月 壬(みずのえ)の日
4月・8月・12月 庚(かのえ)の日

関連項目編集

参考文献編集

  • 岡田芳朗・阿久根末忠『現代こよみ読み解き事典』柏書房、1993年。ISBN 4-7601-0951-X