五日物語 -3つの王国と3人の女-

五日物語 -3つの王国と3人の女-』(いつかものがたり -3つのおうこくと3人のおんな-、原題:イタリア語: Il racconto dei racconti英語: Tale of Tales)は、2015年に公開されたイタリアフランスイギリス製作のダーク・ファンタジー映画。ルネサンス期ナポリの詩人ジャンバティスタ・バジーレの作品である『ペンタメローネ』を原作としており[4]、監督はマッテオ・ガローネが務め、サルマ・ハエックヴァンサン・カッセルトビー・ジョーンズジョン・C・ライリーが出演している。

五日物語
-3つの王国と3人の女-
Il racconto dei racconti
Tale of Tales
監督 マッテオ・ガローネ
脚本 エドゥアルト・アルビナティイタリア語版
ウーゴ・キーティ
マッテオ・ガローネ
マッシモ・ガウディオソ
原作 ジャンバティスタ・バジーレペンタメローネ
製作 マッテオ・ガローネ
ジェレミー・トーマス
ジャン・ラバティ
出演者 サルマ・ハエック
ヴァンサン・カッセル
ジョン・C・ライリー
トビー・ジョーンズ
音楽 アレクサンドル・デスプラ
撮影 ピーター・サシツキー
編集 マルコ・スポレンティーニイタリア語版
製作会社 Archimede Film
ハンウェイ・フィルム英語版
レコード・ピクチャー・カンパニー英語版
配給 イタリアの旗 イタリア放送協会
フランスの旗 Le Pacte
日本の旗 東北新社STAR CHANNEL MOVIES
公開 イタリアの旗 2015年3月14日
フランスの旗 2015年7月1日
アメリカ合衆国の旗 2016年4月22日
イギリスの旗 2016年7月1日
日本の旗 2016年11月25日
上映時間 134分
製作国 イタリアの旗 イタリア
フランスの旗 フランス
イギリスの旗 イギリス
言語 英語
製作費 $14,500,000[1]
興行収入 $5,497,104[2][3]
テンプレートを表示

フランスイギリス共同製作によるイタリア映画であり、ガローネにとっては初となる英語で製作された映画となった。第68回カンヌ国際映画祭ではパルム・ドールの候補に挙げられた[5][6]

あらすじ 編集

ロングトレリス王の国葬 編集

ロングトレリスの王妃は子供が産まれないことを嘆き、彼女を愛する王も悲観に暮れていた。ある日の夜、王宮に現れたネクロマンサーは「入り江の底に住むドラゴンの心臓を処女に調理させ、それを食べれば子供が産まれる」と告げ、王妃に懇願された王は入り江に向かい心臓を手に入れるが、ドラゴンの反撃を受け死んでしまう。しかし、王妃は王の死を意に介さず心臓を食べ、10日後に息子エリアスを出産する。

数日後に王の国葬が執り行われ、隣国ストロングクリフとハイヒルズの王が参列する。しかし、ストロングクリフの王は国葬の最中にもかかわらず美女を抱き、ハイヒルズの王女ヴァイオレットは父王に夢を語り、ロングトレリスの王妃もエリアスに夢中になっていた。

ロングトレリスの女王 編集

 
ドラゴンの住処(アルカンターラ川英語版

王の国葬から16年後、女王は成長したエリアスを溺愛していたが、エリアスは同じ日に生まれたジョナと親しくなっていた。ジョナはドラゴンの心臓を調理した処女が産んだ子供であり、エリアスと双子のように瓜二つの容姿をしていた。息子が自分の手から離れることを嫌った女王は、ジョナに二度と会わないように言い放つ。しかし、2人は聞き入れず、エリアスが王に即位した後は交互に入れ替わり王をやろうと話し合う。その中で、ジョナはエリアスに成り済まして女王に会ったことを話すが、その話を聞いた女王は激怒してジョナを殺そうとする。命拾いしたジョナは王宮を出ることを決意し、エリアスに別れを告げる。別れを惜しむエリアスに対し、ジョナは庭園の木の根元を切り、湧き出す水を指差して「この水が綺麗な状態である限り、自分は元気だ」と語り、王宮を後にする。

ジョナが王宮を去ってしばらく後、庭園のジョナの泉が血に染まっているのを発見したエリアスは、ジョナの身に危険が迫っていることを知り王宮を飛び出す。エリアスがいなくなったことを知った女王は錯乱するが、そこにネクロマンサーが再び現れる。女王はエリアスを探す力を求め、ネクロマンサーは願いを聞き入れる。一方、エリアスはジョナが暮らしていた町で彼の恋人や家族と出会い、彼が森に入ったまま戻っていないことを聞き出し、森に助けに向かう。崖下に落ちて怪我を負ったジョナを発見したエリアスは彼を助け出すが、そこに怪物が現れ2人は洞穴に逃げ込む。怪物は2人を追って洞穴に入ってくるが、エリアスによって刺殺される。2人が洞穴を抜け出した後、怪物は崩れ去り本来の姿を取り戻す。怪物の正体は、ネクロマンサーによって姿を変えられた女王だった。

ストロングクリフの老婆 編集

 
ストロングクリフの王宮(ロッカスカレーニャ城英語版

ストロングクリフの王は王妃を迎えず、大勢の美女を侍らせ放蕩の日々を過ごしていた。ある日の朝、女性の美しい歌声を耳にした王は声の主と会おうとするが、声の主は老婆姉妹の姉ドーラだった。ドーラを美女と思い込んだ王は扉越しに宝石を贈り、彼女を城に招こうとする。最初は断ろうとするドーラだったが、何度も訪れる王と贈り物に魅せられ、妹インマの制止を振り切り王宮に向かい、「一切明かりを点けない」という条件で一夜を共にする。しかし、朝になってドーラの正体を知った王は激怒し、衛兵に命じて彼女を崖下の森に放り出してしまう。森の木々にからまり命拾いしたドーラは通りかかった魔女に助けられ、魔女の魔法で絶世の美女に姿を変える。そこに、狩りのため森に入った王と出くわし、彼女の美貌に魅せられた王はドーラを王妃に迎える。

数日後、インマの元に「未来の王妃」からドレスと王の結婚式の招待状が届く。妹と再会したドーラは彼女の生活を一生保証すると約束するが、インマは結婚式が終わった後も王宮に留まろうとし、さらに若返りの秘密を聞き出そうとしてドーラと口論になる。ドーラも自分が若返った理由は分からなかったが、引き下がろうとしないインマにウンザリして「皮を剥いだ」と嘘を伝えてしまう。その言葉を真に受けたインマは、町の刃物職人に宝石を渡して全身の皮を剥いでもらう。しかし、インマは若返ることはなく、血塗れのまま王宮に向かって歩いていく。

ハイヒルズの王女 編集

 
ハイヒルズの王宮(カステル・デル・モンテ

ハイヒルズの王女ヴァイオレットは大人の世界に憧れ、父王に婚約者を探すように懇願するが、父王はペットのノミの世話に夢中になっていた。ノミはやがて人間並みの大きさに成長するが、肥満が原因で死んでしまう。ノミが死んだ後、父王はようやくヴァイオレットの婚約者を探し始めるが、鞣したノミの皮の正体を言い当てた者を婚約者に選ぼうとする。国中の若者が答えられない中、王宮に現れたオーガが正体を言い当ててしまう。ヴァイオレットはオーガと結婚する悲しみから自殺しようとするが父王に止められ、自分の結婚に関心を持たなかった父王を責めた後、オーガの元に嫁いでいく。

ヴァイオレットは山の崖にあるオーガの住処で暮らし始めるが、過酷な生活に耐えられず、崖の反対側を通りかかった旅芸人の女性に助けを求める。翌日、女性は夫や息子を連れてヴァイオレットを助け出し、崖にかけたロープを切り、追ってきたオーガは崖下に転落する。旅芸人一家はヴァイオレットを連れて渓谷を通り抜けようとするが、追いかけてきたオーガに皆殺しにされる。オーガはヴァイオレットも殺そうとするが、彼女がオーガを抱きしめたため住処に連れ帰ろうとし、その隙を突かれて刺殺される。

ハイヒルズ女王の戴冠式 編集

ヴァイオレットは王宮に戻り病床の父王と再会し、オーガの首を投げつけ「あなたが選んだ夫だ」と言い放つ。父王は自分の行いを詫び、ヴァイオレットに王位を譲り泣き崩れ、それを見たヴァイオレットも涙を見せる。数日後、ヴァイオレットの戴冠式が執り行われ、エリアスやストロングクリフ王夫妻が参列する中、彼女は父王に導かれて玉座に座る。王宮の屋上では芸人たちが火を持ちながら綱渡りを行っており、参列者たちは上空を見上げるが、その時ドーラの魔法が解けて老化が始まる。それに気付いたドーラは周囲に気付かれないように王宮を抜け出し、姿を消した。

キャスト 編集

※括弧内は日本語吹替[7]

製作 編集

 
Los caprichos

マッテオ・ガローネによると、ジャンバティスタ・バジーレの現実と非現実が混ざり合った『ペンタメローネ』の物語群には、現在でも十分通用する要素があることに魅かれたという。彼の映画は『ゴモラ』のような写実主義的内容で知られているが、それ以前の全ての作品ではおとぎ話の側面があったと主張している[1]。映画のインスピレーションの源泉となったのは、フランシスコ・デ・ゴヤの「Los caprichos」だった[8]。ガローネは3つのストーリーにはそれぞれ異なるテーマが存在するが、その全てが執念に繋がっている。脚本は原作の複数の物語を書いていたが、最終的に女性の人生における3つの段階(若さ、母性、老い)をテーマに選んでいる[9]

製作費は1,450万ドル用意された[1]。ガローネの製作会社Archimede Film、フランスの製作会社Le Pactとイギリスのレコード・ピクチャー・カンパニー英語版の共同製作で進められ、イタリア放送協会、MiBACT、ユーリマージュ英語版から追加の資金提供を受けた[10]

2014年5月15日から主要撮影が開始され、4か月間かけて撮影された[10]。撮影はナポリ王宮カポディモンテ宮殿英語版と庭園)、プッリャ州カステル・デル・モンテジョーイア・デル・コッレラテルツァモットラスタッテ)、シチリアドンナフガータ城英語版の迷路と庭園、アルカンターラ川英語版)、アブルッツォ州ロッカスカレーニャ城英語版)、トスカーナ州(ムーア城、ソラーナソヴァーナ英語版)、ラツィオ州ヴィテルボ)などのイタリア各地で行われた[11][12][13][14][15][16][17]

評価 編集

Rotten Tomatoesには94件のレビューが寄せられ支持率82%、平均評価7/10となっており[18]Metacriticでは24件のレビューが寄せられ72/100の評価となっている[19]

出典 編集

  1. ^ a b c Vivarelli, Nick (2014年5月15日). “Cannes: Italo Auteur Matteo Garrone Talks About His 'Tale of Tales' (Exclusive)”. Variety. 2015年3月13日閲覧。
  2. ^ Tale of Tales (2016)”. Box Office Mojo. 2017年6月19日閲覧。
  3. ^ Tale of Tales Foreign Gross (2016)”. Box Office Mojo. 2017年6月19日閲覧。
  4. ^ Cannes: How ‘Game of Thrones’ Influenced ‘Tale of Tales’”. 2015年5月14日閲覧。
  5. ^ 2015 Official Selection”. Cannes. 2015年4月16日閲覧。
  6. ^ Screenings Guide”. Festival de Cannes (2015年5月6日). 2015年5月8日閲覧。
  7. ^ 五日物語-3つの王国と3人の女-”. 映画・海外ドラマのスターチャンネル[BS10]. 2018年12月1日閲覧。
  8. ^ Garrone, Matteo (Director) (2016). "Extras". Tale of Tales (DVD). United Kingdom: Fusion Media Sales (distributor). There are so many sources of inspirations... The first that comes to mind, and possibly the most important of all, were Goya's Los Caprichos. They were absolutely crucial although they date from around two centuries after Basile's. These etchings encapsulate the mood that I saw in Basile's tales, the coexistence of tragedy and comedy, the representation of deformed grotesque figures... and the relationship with human beings, with a body that can transform and take on animal traits... Goya's etchings were a crucial point of reference for us.
  9. ^ Garrone, Matteo (Director) (2016). "Extras". Tale of Tales (DVD). United Kingdom: Fusion Media Sales (distributor). We wrote a screenplay for some other stories too, but in the end we chose to tell the story of a woman in three different stages of her life. We show a female perspective at three different stages. There are three distinct themes but they are all connected to the idea of desire that can lead to obsession.
  10. ^ a b Scarpa, Vittoria (2014年5月16日). “Shooting kicks off for Tale of Tales by Matteo Garrone”. Cineuropa. 2015年3月13日閲覧。
  11. ^ The Tales of Tales 4 things of Garrone's magical movie”. SWIDE. 2018年5月3日閲覧。
  12. ^ The Tale of Tales Official Trailer #1 2015, Cast, Released Date {2015} in France, Italy, UK, India”. whatstheinfo. 2018年5月3日閲覧。
  13. ^ Il Racconto dei Racconti: scelte le location del prossimo film di Matteo Garrone con Vincent Cassel e Salma Hayek protagonisti”. bestmovie.it. 2018年5月3日閲覧。
  14. ^ Garrone gira a Ragusa con un cast internazionale”. La Repubblica. 2018年5月3日閲覧。
  15. ^ Sul set con Garrone: "Il mio kolossal fantasy, a Castel del Monte con Vincent Cassel"”. La Repubblica. 2018年5月3日閲覧。
  16. ^ Il Racconto dei Racconti 2015”. movieplayer.it. 2018年5月3日閲覧。
  17. ^ Shooting kicks off for Tale of Tales by Matteo Garrone”. cineuropa.org. 2018年5月3日閲覧。
  18. ^ Tale of Tales (2016)”. Rotten Tomatoes. 2017年4月22日閲覧。
  19. ^ Tale of Tales Reviews”. Metacritic. 2017年4月22日閲覧。

外部リンク 編集