交響曲第5番 (ドヴォルザーク)

アントニン・ドヴォルザークが作曲した交響曲

交響曲第5番 ヘ長調 作品76, B. 54 は、アントニン・ドヴォルザーク1875年に作曲した交響曲。かつては出版順により『交響曲第3番』と呼ばれていた。

音楽・音声外部リンク
全曲を試聴する
Antonín Dvořák:Symfonie č.5 - ハイコ・マティアス・フェルスター(Heiko Mathias Förster)指揮プラハ放送交響楽団(Symfonického orchestru Českého rozhlasu)による演奏。チェコ放送(Český rozhlas)公式YouTube。
ドヴォルザーク交響曲5番 Dvorak Symphony 5 - 槙本啓志指揮府中シティオーケストラによる演奏。府中シティオーケストラ公式YouTube。
音楽・音声外部リンク
第4楽章を試聴する
A. Dvorak:Symphony No.5 F Major Op.76:Finale - カスパル・ツェーンダー(Kaspar Zehnder)指揮バーゼル交響楽団による演奏。指揮者自身の公式YouTube。

概要 編集

本作は1875年6月15日オーケストレーションに着手し、同年7月23日に完成した。前作『第4番 ニ短調』(作品13, B. 41)まではリヒャルト・ワーグナーの影響が見られたが、一転してスラヴ風の牧歌的な作風となっており、また終楽章にはヨハネス・ブラームスの作品とワーグナーの楽劇『ワルキューレ』からの和音進行の影響が見られるようになる。本作のこの2つの特徴は、次作『第6番 ニ長調』(作品60, B. 112)など後の作品に引き継がれていくこととなる。

初演は1879年3月25日プラハにて、アドルフ・チェフ指揮、国民劇場管弦楽団により行われ、出版は1888年ジムロック社から出版された。しかし、既に『第6番 ニ長調』(作品60, B. 112)、『第7番 ニ短調』(作品70, B. 141)がそれぞれ「第1番」「第2番」として出版されていたため「第3番」が付けられており、最初に「第5番」として出版されたのは、現在の『第9番《新世界より》』(作品95, B. 178)である。 作品番号も、ドヴォルザーク本人は当初「作品24」とする予定であったにもかかわらず、ジムロック社によって第6番、第7番より後の作品を装って「作品76」とされた。また、出版に際してドヴォルザークはこの交響曲を、指揮者ハンス・フォン・ビューローに捧げた。

楽器編成 編集

フルート 2、オーボエ2、クラリネット2(バスクラリネット持ち替え 1)、ファゴット2、ホルン4、トランペット2、トロンボーン3、ティンパニトライアングル(第3楽章のみ)、弦五部

曲の構成 編集

全4楽章、演奏時間は約40分。

  • 第2楽章 アンダンテコン・モート
    イ短調、8分の3拍子、三部形式
     
    第1楽章とは異なり、不安げで寂しい楽章である。冒頭からチェロによる悲しげな主題が提示され、次にヴァイオリン、フルートに引き継がれる。
    明朗な中間部ののち、再現部は再び暗鬱な主題が繰り返され、大きく盛り上がったのち寂しげに終わる。
  • 第3楽章 アンダンテ・コン・モート、クアジリステッソ・テンポ - アレグロ・スケルツァンド
    変ロ長調 - 変ニ長調(トリオ部)、8分の3拍子。
     
    第2楽章の主題を用いた序奏があるため、ドヴォルザークは第2楽章から「ごく短い小休止の後にすぐ続いて演奏すること」としている。
    主要部のスケルツォの主題は、序奏とは一転し非常に明るい快活なものである。
  • 第4楽章 フィナーレ:アレグロ・モルト
    イ短調 - ヘ長調、4分の4拍子、ソナタ形式
     
    チェロとコントラバスで演奏されるイ短調の序奏から始まる。序奏によく似たヘ長調の第1主題が木管とヴァイオリンで力強く示されたのち、クラリネットとヴァイオリンが第2主題を応答風に提示する。時折ワーグナーの楽劇『ワルキューレ』とよく似た和声進行が見られる。
    型通りの再現部の後、第1楽章第1主題でクライマックスを形成する。

その他 編集

第1楽章が、かつてテレビ東京系列で放送されていたミニ番組未来シティ研究所』のテーマ曲として使用されていた。

外部リンク 編集