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仔牛肉

未成熟の若いあるいは幼い牛の肉
仔牛肉の写真

仔牛肉(こうしにく、「子牛肉」とも表記 : Veal : veau)は、未成熟の若いあるいは幼いとくという[1][2])(英語: calf, カフ、複数形はcalves, カーヴズ)の肉である。料理書などで英語、フランス語の翻字による外来語で載っていることの方が多い。

目次

概要編集

仔牛肉は、外見は牛肉より明るいピンク色をしており、肉質が緻密で脂肪分が少なく、柔らかで、いわゆる「牛臭さ」がなく、淡泊な味わいである。欧米では普通の牛肉よりも高級な食材とされ、カツレツシュニッツェルなど)やソテーなど、様々な用途に使われている。特にフランス料理イタリア料理では古くから好まれている食材である。

さらに幼い、乳離れしていない仔牛肉をmilk fed veal, 乳飲み仔牛肉 といい、いっそう淡泊な味である。

仔牛肉用には、成牛としての需要が少ない雄の乳牛の仔牛が充てられることが多い。日本ではまだ需要があまりないことから一部北海道などで少量生産にとどまっている。ほとんどは、海外オーストラリアニュージーランドカナダなどで生産されたものが、冷凍肉として輸入供給されている。

生産方法編集

ヌレ子ヴィール(乳飲み仔牛肉)
主にホルスタインの雄を生後数日 - 10日程度、母牛の乳主体で飼養し、体重45 - 70kgで屠殺した仔牛肉。肉質は特別柔らかくはなく、繊維が細かく締まっている。
ホワイトヴィール(ほ育仔牛肉)
最高級の仔牛肉。主に雄を、生後まもなくクレート(ストール:固定された囲い)へ収容し、18 - 20週の間、特別に調整された代用乳で飼養し、体重200kg前後で屠殺したもの。明るく、ピンク色の肉であるほど、高級とされ、高値で取引される。
肉の色は子牛の筋肉の鉄分量と関係があり、子牛には鉄分の給与制限が推奨される[3]。代用乳には鉄分は微量しか含まれていない。鉄分不足を補うために、仔牛が鉄枠や自分の尿をなめたり(尿には少量の鉄分が含まれる)、牧草や土に含まれる鉄分を摂取するなどの行動を防ぐため、一般的に木の枠でできた、振り返って自分の尿をなめることができないサイズの、狭いクレート内で飼養される。鉄分不足により、肉は非常に明るく、淡いピンク色になる。また自由に動くことのできないクレートに収容することにより、筋肉が発達せず柔らかい肉ができる。

子牛肉生産における動物福祉の懸念編集

 
子牛肉生産における拘束下での高速肥育は、動物虐待と見なされつつある。

食肉用の子牛は短期間で出荷(屠殺)されるため、経済的に原価率確保(消費者向けの激安維持)のため、肥育時間と健康管理コストは削減ターゲットとなる。 その結果、出荷まで生き延びることのできない仔牛は多く、アメリカのある調査結果では、10 - 15%に達するく[4]。 食肉用子牛の生産における、いくつかの手法は動物福祉上の問題が指摘されていて、EUでは2007年から、「身動きさせない為の囲い(クレート、ストール)」を用いた肥育期間の短縮」手法は禁止された[5]。 さらにフィンランドでは、体重増加を促進するための「鉄分の栄養制限」(貧血を誘発する)も禁止されている[6] 一方、日本での子牛肉生産はごく限定的[7]であり、流通する子牛肉の大半は輸入品と推察される。

早期離乳編集

古典的な飼育法(自然放牧)では、離乳は5- 6ヶ月齢[8]だが、現代の個体管理では生後3日以内に物理的に隔離[9]される。 仔牛は本能的に母牛の乳首に吸い付く欲求を持ち、これが絶たれることで代償行為(舌遊び行動:舌を口の外に長く出したり、左右に動かしたりする)など、欲求不満状態で認められる葛藤行動[10]を招き、仔牛(赤ん坊牛)の精神・情緒面へのダメージが生じるが、生乳と牛肉の経済的な供給のため欠かせない行為であり、われわれ消費者はその恩恵に浴している。

拘束飼育編集

経済的に短期間で高品質(柔らかい仔牛肉)な製品を製造するため、仔牛が身動きできない様、固定された囲いに閉じ込めたり繋ぐなどして、肉質が硬く赤くなってしまう運動を防ぐ飼育スペースを用いる品質管理手法[11]が行われてきた。 さらに、畜舎の照明を制限することで運動と電力コストの両方を削減する手法[12]も、広く行われている。 これにより、幼い動物が本能的に行おうとする運動が制約され、健康リスクとなる。一般的には囲いが狭いほど、肘の腫れなどの身体症状は増加し、出荷時に歩行困難となる例[13]も見られる。 行動を制限されることにより常同行動(歯軋り、仕切りの側面を噛み続ける、尾を振り続ける、舌を動かし続けるといった、同じ行動を繰り返し行う、異常行動)が観察されている[14]

栄養制限編集

正常な仔牛血中のヘモグロビン濃度は7mmol/lだが、商業的には4.6mmol/l程度[5]。血液ヘモグロビン濃度が4.5mmol/l未満になると、子牛の感染症の増加、免疫力低下の兆候があらわれる[13]に制限することが、コストと製品管理面から定番となっている。 反芻動物である牛は四つの部屋からできている胃を持ち、本来は牧草やワラなど粗飼料を主食とするが、これらは鉄分を含むため、敷料として多用されるワラも含め排除される。この結果、ルーメン(第一胃)の発達を阻害し、胃潰瘍などの消化器障害や慢性的な下痢をもたらす[4]ほか、反芻欲求も満たされない。[12]

カツレツ編集

 
仔牛肉のカツレツ

日本へ伝わった「カツレツ」は、この仔牛肉などのソテー料理である。その後、トンカツのように多量の油で揚げられる「カツ」が主流になってからは、仔牛肉を含む牛肉を使用したカツレツもカツも豚肉に主流が移って行った。

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  1. ^ - Yahoo!辞書
  2. ^ とくの使用例と畜検査頭数
  3. ^ 飼料会社プロヴィミ社会報「The Stall Street journal」
  4. ^ a b 米ブリストル大学による研究報告「Improved Husbandry Systems for Veal Calves」
  5. ^ a b "About calves reared for veal". Compassion In World Farming https://www.ciwf.org.uk/farm-animals/cows/veal-calves/
  6. ^ "Finnish Animal Welfare Act of 1996" http://www.finlex.fi/en/laki/kaannokset/1996/en19960247.pdf "The Finnish Animal Welfare Decree of 1996" http://www.finlex.fi/en/laki/kaannokset/1996/en19960396.pdf
  7. ^ エーリック畜産の情報 2014年6月号「フランスの子牛肉の生産実態と市場」 http://lin.alic.go.jp/alic/month/domefore/2014/jun/wrepo01.htm
  8. ^ 日本家畜臨床感染症研究会誌巻3号2009年「哺乳育成期子牛の栄養管理が発育に及ぼす影響」
  9. ^ 米国農務省 Veal from Farm to Table https://www.fsis.usda.gov/wps/portal/fsis/topics/food-safety-education/get-answers/food-safety-fact-sheets/meat-preparation/veal-from-farm-to-table/CT_Index
  10. ^ 「黒い牛乳」2009年中洞正著書
  11. ^ "Europe plan for ban on veal crates". The Independent誌 Butler, C. (1995年12月14日) https://www.independent.co.uk/news/europe-plan-for-ban-on-veal-crates-1525606.html
  12. ^ a b ゲイリー・L・フランシオン. 動物の権利入門. 緑風出版. p. 66. 
  13. ^ a b "The case against the veal crate: An examination of the scientific evidence that led to the banning of the veal crate system in the EU and of the alternative group housed systems that are better for calves, farmers and consumers" (PDF). Compassion in World Farming McKenna, C. (2001年) https://www.ciwf.org.uk/media/3818635/case-against-the-veal-crate.pdf
  14. ^ オランダのG.van Puttenによる研究報告「Some General Remarks Concerning Farm Animal Welfare in Intensive Farming Systems」