健康保険証
健康保険証(けんこうほけんしょう、Health Insurance card)とは、公的医療保険の被保険者に配布される、カード型の保険証のこと。又貸しやなりすましなどの悪用防止対策をしている健康保険証には顔写真添付がある。顔写真のない健康保険証の国では、なりすまし防止の観点から身分証明書(本人確認書類)としては健康保険証が使えないことが多い[1][2]。日本では2021年10月から悪用されやすい顔写真の無い従来の保険証によるなりすまし問題の防止策として、マイナンバーカードもマイナ保険証として利用出来るようになった[1][3]。2022年6月には顔写真が無い現行の健康保険証の廃止とマイナ保険証への移行の方針が決まり[4]10月13日に正式発表された[5]。
ヨーロッパ編集
ヨーロッパにおいては欧州経済領域(EEA)各国共通で使える欧州健康保険カード(EHIC)も普及している。
- ドイツでは保険者は複数制であり、複数のカードが存在する。2012年には保険証のICカード化が完了した(de:Krankenversicherungskarte)[6]。
- フランスでは、IC化されたヴィタルカード(Carte Vitale)が用いられている。
- イタリアでは、公的医療の受給にSSN(Servizio Sanitario Nazionale)カードが用いられている。
- フィンランドでは、社会保険機構(KELA)が無料で全フィンランド居住者にKela cardを発行している[7]。
- ベルギーでは、SISカードが配布されている。
- イギリス UK Global Health Insurance Card
アメリカ州編集
アジア編集
台湾編集
- 台湾では健康保険証はICカード化されており、オンライン請求率は2006年には99.98%に達する。
日本編集
日本では、公的医療保険の被保険者となった場合、その者に「被保険者証」(一般的には保険証と呼ばれる)が加入している保険者(市町村国民健康保険、全国健康保険協会、健康保険組合等)から交付される。1人1枚で、被保険者が被扶養者を有する場合は被扶養者についても各人ごとの保険証が交付される。多くの保険者ではクレジットカードサイズ(縦54ミリ、横86ミリ)の大きさのものを作成している。保険証は保険者ごとに交付するため、退職・転居等で従前の被保険者資格を失った場合、保険証は失効となり、速やかに保険証を保険者へ返還しなければならない(健康保険法施行規則第51条)。
全国健康保険協会(協会けんぽ)の場合、保険証の即日交付に対応しておらず、被保険者の資格取得から保険証の交付まで通常1~2週間かかる。この間の医療機関の受診等の必要に対応するため、被保険者又は事業主の求めにより、厚生労働大臣(日本年金機構に事務委任)から被保険者資格証明書が交付される(健康保険法施行規則第50条の2)。資格証明書を医療機関の窓口で提示することで、保険証と同様の効力がある。資格証明書の有効期限は、原則として交付日から20日以内である。保険証が交付されれば、あるいは資格証明書の有効期限が到来した場合は、資格証明書は直ちに返還しなければならない。なお協会けんぽの場合、保険証の交付は原則として事業主経由で交付されるが(健康保険法施行規則第47条3項)、被保険者が任意継続被保険者である場合(健康保険法施行規則第47条3項但書)及び保険者が支障がないと認めるとき(テレワーク等。令和3年8月13日保発0813第1号)は、保険者が被保険者に直接送付することができる[注 1]。
国民健康保険や後期高齢者医療制度の場合、有効期限が到来した保険証について、かつては国民健康保険法施行規則第7条の2第2項の規定により、市区町村の窓口に出向いて返還しなければならなかった。しかし、多くの地方自治体で被保険者自身での保険証の破棄を認めていることや医療機関の窓口で有効期限などのチェックを行っているため、不正使用などの恐れが無いことから、総務省と厚生労働省は2021年から国民健康保険被保険者証と高齢受給者証、後期高齢者医療被保険者証の被保険者自身での破棄を容認することになった[8]。なお、特別の事情がないのに1年以上保険料を滞納すると保険証を返還しなければならない。この場合、代わりに被保険者資格証明書がその者に交付される。協会けんぽでの資格証明書と異なり、医療機関の窓口でかかった医療費の全額を支払わなければならない(特別療養費)。その後に保険者に申し出ることで一部負担金(原則3割)を控除した相当額が払い戻される(実務上は、未払いの保険料があれば払戻額と相殺される)。
小学校では学生証が交付されないことも多いため、小学生が学生割引を受けるための手段として保険証が用いられることもある。
なりすまし対策とマイナンバーカード編集
日本では健康保険証に顔写真がないことで他人への又貸しを含む悪用が多発していた[1]。
かつては社会保障カードを健康保険証として利用できることが構想されていたが、実現するには至らなかった。その後、2013年にマイナンバー制度が成立し、個人番号カードを健康保険証として利用できるようにする方針が検討され、決定。日本政府は、2021年3月から個人番号カードも健康保険証として利用できるようにする予定である[9]。
保険資格との照合には個人番号カードに搭載されている利用者電子証明書が使われる予定[9]。
オセアニア編集
アフリカ編集
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脚注編集
注釈編集
- ^ テレワーク等の事情があっても、保険証の返納については、事業主経由を省略することはできない(令和3年8月13日事務連絡)。
出典編集
- ^ a b c “「なりすまし」保険証防止、写真付き証明書提示を検討へ:朝日新聞デジタル”. 朝日新聞デジタル. 2020年11月16日閲覧。
- ^ 社会保険旬報第2337号p35.2007年
- ^ “マイナ保険証で医療費控除 時短効果は7500円以上?”. 日本経済新聞 (2021年11月23日). 2021年11月23日閲覧。
- ^ “政府 「健康保険証の原則廃止」 骨太の方針に明記する方向”. 毎日新聞. 2022年5月23日閲覧。
- ^ https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/177366
- ^ Gesundheitsstrukturgesetz (BGBl. I S. 2266) 21. Dezember 1992, BGBl. I S. 2299
- ^ “Kela card”. フィンランド社会保険機構. 2014年2月1日閲覧。
- ^ “有効期限が切れた国民健康保険及び後期高齢者医療制度の被保険者証等を、自分で破棄することが可能となります。-行政苦情救済推進会議の意見を踏まえたあっせん(行政運営の改善)-”. 総務省行政評価局 (2021年4月28日). 2021年6月10日閲覧。
- ^ a b “マイナンバーカードの保険証利用についてお知らせします(被保険者向け)”. www.mhlw.go.jp. 2020年7月16日閲覧。