全国高等学校女子硬式野球選手権大会

全国高等学校女子硬式野球選手権大会(ぜんこくこうとうがっこうじょしこうしきやきゅうせんしゅけんたいかい)は、全国高等学校女子硬式野球連盟兵庫県丹波市の主催・朝日新聞社の後援で毎年8月に開かれる高校生の女子野球大会。2011年以降は、準決勝に進出した4チームに「女子野球ジャパンカップ」(プロ・アマ統一の全日本総合選手権)への出場権が与えられる。

全国高等学校女子硬式野球選手権大会
開始年 1997年
主催 全国高等学校女子硬式野球連盟
チーム数 40チーム
加盟国 日本の旗 日本
前回優勝 神戸弘陵(2回目)
最多優勝 埼玉栄高校(7回)
公式サイト
全国高等学校女子硬式野球連盟
2020年は中止。
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会場については、数回にわたる変遷を経て、2016年の第20回大会からスポーツピアいちじま(兵庫県丹波市)を主に使用。2021年の第25回大会は、全国高等学校野球選手権大会(男子硬式高校野球の全国大会)の期間中に、同大会でも使用する阪神甲子園球場で決勝を開催している[1]

歴史編集

社会人野球でのプレー経験がある四津浩平(よつ こうへい)は、首都圏の大学で女子軟式野球部を指導していた時期(1990年代中盤)に本業(古美術商としての仕事)で中華人民共和国(中国)を訪れた際に、現地の女子硬式野球関係者から「野球を通じた女子中高生による日中交流」について相談を受けた。この相談がきっかけで、1995年には、日本(東京都)と中国(北京市)のチームによる「日中対抗中高女子硬式野球大会」が日本国内で初めて開催された。中国側は当初から硬式野球での交流を望んでいたが、当時の日本では女子で野球のプレーを経験している中学・高校生がまだ少なかったため、日本側のチーム編成に当たっては東京都内の高校(2校)のソフトボール部に協力を依頼したという[2]

日中対抗中高女子硬式野球大会は翌1996年に、大韓民国にある高校のチームを加えた3カ国・4チームによる対抗戦へ発展。四津は、以上の経験を踏まえて、女子の硬式野球部がある日本国内の高校を対象に1997年から本大会を開始した。ちなみに、第1回大会には、東京都・兵庫県・埼玉県から5校が参加。四津は、「女子の野球選手にプレーの場を用意してあげたい」との一心で、女子野球を日本に普及させるべく「家(一戸建て家屋)が2軒建つほどの私財を投じた」とされている[2]

もっとも、日本の高校野球を統括している日本高等学校野球連盟(日本高野連)では、女子学生に対する危険を防ぐ観点から、女子学生が連盟主催の硬式野球大会(全国高等学校野球選手権大会選抜高等学校野球大会)や全国高等学校軟式野球選手権大会へ男子学生と一緒に参加することを規定で認めていない。これに対して、四津は1998年に、当大会の主催団体として全国高等学校女子硬式野球連盟を発足。2000年から男子と同様に春の選抜大会(全国高等学校女子硬式野球選抜大会)を主催していることもあって、本大会への参加校は徐々に増加している[2]

本大会の会場については、第1回から第6回(2002年)まで東京都内、第7回(2003年)のみ埼玉県内、第8回(2004年)から兵庫県内の球場を使用(詳細後述)。選抜大会に続いてスポーツピアいちじまの使用を開始した第8回からは、地元の自治体(市島町丹波市)も主催団体に名を連ねている[2]。ただし、2020年には、年頭から新型コロナウイルスへの感染が拡大している影響で、選抜大会・日本高野連主催の上記大会と合わせて中止を余儀なくされた。

参加校が40校にまで増えた第25回(2021年)には、1回戦から準決勝までを丹波市内の球場(春日スタジアムとスポーツピアいちじま)、決勝のみ同じ兵庫県内(西宮市)の阪神甲子園球場で開催[3]。この年には阪神タイガース(甲子園球場を本拠地として使用するNPBセントラル・リーグの加盟球団)が阪神タイガース Women(女子硬式野球のクラブチーム)を創設しているが、同球場が(プロ・クラブ・社会人チームを含めた)女子野球の公式戦に使用された事例は、本大会の第25回決勝が初めてである[4]

主な大会規定・開催要項編集

男女とも高校硬式野球選手権大会の決勝が甲子園球場で組まれていた2021年時点での規定・要項から、男子の全国高等学校野球選手権大会(男子大会)との相違点を中心に記載[3]

  • 本大会に出場できる高校は全国高等学校女子硬式野球連盟への加盟校で、出場できる選手を女子に限定。男子大会と同じく、女子硬式野球部員の少ない加盟校同士が「連合チーム」として出場することも認めている。ただし、男子大会と違って、「予選」に相当する地区大会までは開催しない[3]。その一方で、在籍中の高校に女子の硬式野球部が設けられていない女子選手も、「全国高等学校連合丹波」という連合チームの一員として大会に参加できる。
  • 男子大会と同じく、試合では硬式球と金属バットを使用する。試合で使用するグラウンドの広さや、塁間・バッテリー間の距離も男子大会と共通しているが、男子大会と違って指名打者制度を採用。試合中に指名打者を解除することも認めている[3]
  • 出場校に対しては、1チームにつき25人まで、試合中のベンチ入りを認めている(男子大会では最大で18人)[3]。また、ベンチ入りが可能な登録選手のユニフォームには、1~99の間から1つの数字を背番号として着用できる(男子大会では背番号に使用できる数字を1~18に限定)[3]
  • 試合は男子大会(9イニング制)より短い7イニング制で進められるが、5回裏を終了していれば、その時点で男子大会と同じく「試合成立」とみなす。1・2回戦では、5回裏の終了時点で7点以上の差が付いていれば、コールドゲーム扱いで試合自体を終了。
  • 4回裏を終了してから5回表を開始するまでの時間帯には、出場選手による給水と休憩を目的に、選手も審判団も全員グランドからいったん撤収。男子大会では基本として5回裏の終了後に入るグラウンド整備を、撤収中に実施する[5]
  • 準決勝までの試合で7回裏までに決着が付かない場合には、延長戦を実施。ただし、8回表の攻撃からタイブレークを導入する。決勝のみ、延長戦に入っても、9回裏まではタイブレーク抜きで進行。9回裏を終えても決着が付かない場合にのみ、10回表の攻撃からタイブレークを導入する[3]

この他にも、試合中の場内アナウンスでスターティングメンバー・次の打順の選手・交代選手の名前を紹介する場合には、「選手の苗字(同姓の選手が同じチームにいる場合には氏名)+さん」という呼称を使用[6](男子大会では「選手名+君」)。試合によっては、女子の国際大会や男子の地方大会に参加した経験を持つ女性審判が、球審や塁審を務めることがある[7]

使用球場編集

現在
  • 兵庫・阪神甲子園球場(第25回決勝)
  • 兵庫・スポーツピアいちじま(第8回 - 第18回、第20回 - )
    • 第24回までは全試合を開催していたが、第25回では1回戦から準決勝まで使用。
  • 兵庫・春日スタジアム(第19回、第25回 - )
    • 第19回では全試合を開催。第25回では、1・2回戦でスポーツピアいちじまと併用している。
過去
  • 東京・福生市営球場(第1回 - 第6回)
  • 東京・昭島市営球場(第2回 - 第6回)
  • 埼玉・県営大宮球場(第7回)
  • 埼玉・上尾市民球場(第7回)

歴代優勝校編集

開催年 優勝校 結果 準優勝校 備考
1 1997年 夙川学院(兵庫) 駒沢学園女子(東京) 順位は得失点差による[8]
2 1998年 習志野(千葉) 9 - 7 神村学園(鹿児島)
3 1999年 神村学園(鹿児島) 13 - 6 浜名(静岡)
4 2000年 神村学園(鹿児島) 7 - 4 蒲田女子(東京)
5 2001年 神村学園(鹿児島) 18 - 1 蒲田女子(東京) 大会3連覇
6 2002年 埼玉栄(埼玉) 11 - 7 駒沢学園女子(東京)
7 2003年 神村学園(鹿児島) 7 - 2 埼玉栄(埼玉)
8 2004年 神村学園(鹿児島) 3 - 1 埼玉栄(埼玉)
9 2005年 神村学園(鹿児島) 3 - 2 埼玉栄(埼玉) 大会3連覇
10 2006年 埼玉栄(埼玉) 2 - 0 花咲徳栄(埼玉)
11 2007年 埼玉栄(埼玉) 3 - 2 花咲徳栄(埼玉) 大会2連覇
12 2008年 駒沢学園女子(東京) 2 - 1 花咲徳栄(埼玉)
13 2009年 花咲徳栄(埼玉) 5 - 2 埼玉栄(埼玉)
14 2010年 駒沢学園女子(東京) 3 - 1 花咲徳栄(埼玉)
15 2011年 埼玉栄(埼玉) 5 - 4 花咲徳栄(埼玉)
16 2012年 花咲徳栄(埼玉) 5 - 2 埼玉栄(埼玉)
17 2013年 埼玉栄(埼玉) 8 - 3 蒲田女子(東京)
18 2014年 福知山成美(京都) 3 - 0 花咲徳栄(埼玉)
19 2015年 埼玉栄(埼玉) 1 - 0 駒沢学園女子(東京)
20 2016年 神戸弘陵(兵庫) 12 - 1 神村学園(鹿児島)
21 2017年 埼玉栄(埼玉) 1 - 0 履正社(大阪)
22 2018年 京都両洋(京都) 5 - 0 横浜隼人(神奈川)
23 2019年 作新学院(栃木) 4 - 3 履正社(大阪)
24 2020年 新型コロナウイルス感染拡大の影響で中止
25 2021年 神戸弘陵(兵庫) 4 - 0 高知中央(高知) 高知中央は創部3年目で本大会に初出場
決勝を阪神甲子園球場で初めて開催

出場校編集

出場校 都道府県 優勝回数 準優勝回数 備考
石巻女子 宮城県 0回 0回
仙台女子商 宮城県 0回 0回
水戸商 茨城県 0回 0回
常磐大高 茨城県 0回 0回
宇都宮文星女子 栃木県 0回 0回
作新学院 栃木県 1回 0回
花咲徳栄 埼玉県 2回 6回 第1回から連続出場21回
埼玉栄 埼玉県 7回 5回 第1回から連続出場21回
最多優勝7回
松伏 埼玉県 0回 0回
習志野 千葉県 1回 0回
千葉商 千葉県 0回 0回
駒沢学園女子 東京都 2回 3回 第1回から連続出場21回
蒲田女子 東京都 0回 3回 第1回から連続出場21回
昭和 東京都 0回 0回
科学技術 東京都 0回 0回
桐ケ丘 東京都 0回 0回
村田女子 東京都 0回 0回
横浜隼人 神奈川県 0回 1回
長岡商 新潟県 0回 0回
開志学園 新潟県 0回 0回
高岡一 富山県 0回 0回
福井工大福井 福井県 0回 0回
至学館 愛知県 0回 0回
福知山女子 京都府 0回 0回
福知山成美 京都府 1回 0回
京都両洋 京都府 1回 0回
京都外大西 京都府 0回 0回
八尾南 大阪府 0回 0回
履正社 大阪府 0回 2回
夙川学院 兵庫県 1回 0回
篠山鳳鳴 兵庫県 0回 0回
篠山産 兵庫県 0回 0回
神戸弘陵 兵庫県 2回 0回
国際開洋二 和歌山県 0回 0回
室戸 高知県 0回 0回
高知中央 高知県 0回 1回
折尾愛真 福岡県 0回 0回
佐賀東 佐賀県 0回 0回
日南学園 宮崎県 0回 0回
神村学園 鹿児島県 6回 2回

テレビ放送編集

2021年編集

第103回全国高等学校野球選手権大会期間中に開催された第25回大会決勝で、朝日放送テレビが当大会の中継映像を初めて制作。当初は地上波での生中継を予定していたが、男子の選手権大会で雨天順延が相次いだことに伴って当大会決勝の日程が8月22日(日曜日)の午後(14:00開始)から翌23日(月曜日)の夕方(17:00開始)に変更されたため、「バーチャル高校野球」(選手権大会のポータルサイト)による中継動画のライブ配信と地上波での録画ダイジェスト放送で対応した[9][10]

この他にも、朝日放送テレビがテレビ朝日と共同で制作している『熱闘甲子園』(本来は男子選手権本大会のダイジェスト番組)では、8月23日に決勝のダイジェストを放送。朝日放送グループが運営するCS放送ケーブルテレビ局向けのスポーツ専門チャンネルスカイA」でも、8月26日の19:00 - 22:00に中継録画を放送した[11][12]

また、日本放送協会(NHK)でもBS1にて放送している単発特別番組枠の『BS1スペシャル』において、本大会のダイジェストを9月12日に放送した[13]

関連項目編集

脚注編集

  1. ^ 第25回全国高等学校女子硬式野球選手権大会 決勝戦を阪神甲子園球場で開催!(一般社団法人全国高等学校女子硬式野球連盟)
  2. ^ a b c d 投じた私財は家2軒分 「女子硬式野球の父」の夢が実現”. 朝日新聞デジタル (2021年8月24日). 2021年8月24日閲覧。
  3. ^ a b c d e f g 女子野球、男子との違いは?背番号は1から99まで、指名打者制を採用”. 日刊スポーツ (2021年8月23日). 2021年8月24日閲覧。
  4. ^ 阪神タイガース Womenはこの時点で公式戦(関西女子硬式野球選手権大会と全日本女子硬式野球選手権大会の関西予選・本選)に臨んでいたが、いずれも甲子園以外の球場で催されていた。また、2021年から事実上活動を休止している日本女子プロ野球機構でも、リーグ戦を甲子園球場で開催した実績はない。
  5. ^ 【結果速報】女子野球 神戸弘陵学園、高知中央を降して全国制覇! 史上初の聖地決戦、2年生左腕・日高結衣が快投【全国高校野球2021】”. FullCount (2021年8月23日). 2021年8月24日閲覧。
  6. ^ 歴史的一戦のアナウンスは「さん」付けで 女子の高校野球決勝が甲子園でスタート”. FullCount (2021年8月23日). 2021年8月24日閲覧。
  7. ^ 女子野球決勝、審判は「ダブル・カナ」 初の甲子園開催”. 朝日新聞デジタル (2021年8月23日). 2021年8月24日閲覧。
  8. ^ 第1回全国高等学校女子硬式野球選手権大会|全国高等学校女子硬式野球連盟
  9. ^ 甲子園で初開催「高校女子硬式野球」決勝をABCテレビが生中継”. 日刊スポーツ (2021年7月12日). 2021年8月24日閲覧。
  10. ^ ABC高校野球( ねったまくん )@koshienasahiのツイート”. Twitter (2021年8月23日). 2021年8月24日閲覧。
  11. ^ 熱闘甲子園@nettoh_koshienのツイート”. Twitter (2021年8月23日). 2021年8月27日閲覧。
  12. ^ 8/26「第103回全国高等学校野球選手権大会」内容変更のお知らせ”. スカイA (2021年8月23日). 2021年8月27日閲覧。
  13. ^ NHK広報局@NHK_PRのツイート”. Twitter (2021年9月11日). 2021年9月14日閲覧。
  14. ^ 甲子園でも女子野球を 日本女子プロ野球機構スーパーバイザー 太田幸司さん”. 日本経済新聞 (2018年2月20日). 2021年8月24日閲覧。
  15. ^ 女子高校野球の決勝が甲子園で実現! 実は、あの太田幸司さんも提言していた”. Yahoo!ニュース (2021年5月1日). 2021年8月24日閲覧。

外部リンク編集