共食い整備
共食い整備(ともぐいせいび、英語: cannibalism maintenance)とは、機械・器具の修理に際し、複数の個体の部品ないし部位を組み合わせ、一つの正常な個体にすること。修理に必要な部品の入手が困難な場合において、複数の個体がそれぞれ別な個所で故障あるいは破損していて、ある個体の故障個所に他方の個体から取り出した良品を組みこむことで修理を行う。
事例編集
- 東日本大震災による津波で水没したF-2戦闘機に対してニコイチ修理が行われる予定である[1]。
- 日本の自衛隊において、73式小型トラック(旧型)に対して共食い整備が行われている[2]。
- 韓国高速鉄道では部品不足による他の編成からの部品流用[3]の多発。
- 韓国空軍のKF-16戦闘機等で共食い整備が常態化している[4]。
- アメリカ合衆国の宇宙往還機スペースシャトルが本格運用を開始した際、補修部品の生産が追いつかず、共食い整備が行われていた。これが重大インシデントにつながり、チャレンジャー号爆発事故の一因にもなったと考えられている。
- シリアなど旧東側の影響を受けた空軍においては、対外戦争勃発における経済制裁など有事の共食い整備に備えて、「スペアパーツ用」として実際に運用する機数より多い数の航空機を保有していた。また、平時においてもこれらを部品の供給源として使用していた。
- 1969年に月面着陸を目指していたアポロ12号は、発射前日に機械船の燃料タンクが不調となったため、別途として打ち上げに向けて準備が行われていたアポロ13号のタンクと交換が行われた[5]。
戦争時において編集
戦争における前線でも、戦場から破損された兵器を複数回収し、残存兵器の稼働率の向上と部隊の戦力の維持が行われる。例えば自軍の戦車のうち、車体が無事なものと砲塔が無事なものを組み合わせて稼動する1両の戦車とすることもある。あるいは敵軍の兵器を鹵獲した場合には、修理用の部品を入手することは望めないので、複数の個体から稼動するものを仕立てて活用することもできる。
その他、補給が滞った場合にも前線における整備で特定の個体を部品取りにして他の個体の整備に必要な部品を確保することもある。平時においても、経済状況が思わしくなく十分な兵器を賄えない場合や、輸入した兵器について何らかの理由で整備用の部品の供給が止められた場合には、やはり共食い整備で稼動する兵器を確保することが行われる。
事例編集
- 大日本帝国陸軍はラバウル空襲で破壊された一〇〇式司令部偵察機の残骸を集めて1機を再製した[6]。
- ベトナム戦争当時、部品不足に悩まされていたアメリカ空軍はロッキードC-5ギャラクシーに対して共食い整備を行っており、これが原因でオペレーション・ベビーリフトでは部品を取られていた機体による墜落事故が発生した。
脚注編集
- ^ 水没F2戦闘機「復活は3分の1」修理費は1機あたり50億~60億円(msn産経ニュース、2011年5月19日。閲覧:同9月4日) Archived 2011年5月19日, at the Wayback Machine.
- ^ 『世界の軍用4WDカタログ』日本兵器研究会、アリアドネ企画、2001年。ISBN 9784384025491。
- ^ "고장난 KTX 부품 멀쩡한 차량에서 떼내 교체"(「故障したKTX部品 正常な車両からはずして交換」)2006年10月13日、ノーカットニュース
- ^ 【軍事ワールド】韓国「主力戦闘機」の改良巡り米韓が“泥沼金銭トラブル”…米側の追加負担要求に韓国がキレた2016年1月6日、産経ニュース
- ^ アポロ12号 今夜半に打つ上げ『朝日新聞』昭和44年(1969年)11月14日夕刊、3版、1面
- ^ 白根雄三 『ラバウル最後の一機』 日本文華社、1967年、[要ページ番号]頁。ASIN B000JA918S。