フユイチゴ(冬苺、学名: Rubus buergeri)は、バラ科キイチゴ属常緑匍匐性の小低木である[3]。キイチゴの仲間としては珍しく、冬に実が熟すため、「クリスマスチェリー」の名で苗が流通している[4]

フユイチゴ
フユイチゴ (本宮山・1月)
分類
: 植物界 Plantae
: 被子植物門 Magnoliophyta
: 双子葉植物綱 Magnoliopsida
: バラ目 Rosales
: バラ科 Rosaceae
亜科 : バラ亜科 Rosoideae
: キイチゴ属 Rubus
: フユイチゴ Rubus buergeri
学名
Rubus buergeri Miq. (1867)[1][2]
和名
フユイチゴ(冬苺)

分布 編集

中国中南部・台湾朝鮮半島南部[5]と日本の九州四国関東以西の本州に分布。暖地の森林の下生えに出る。林縁の道路ぞいなどに出現することも多い。山形県危急種(絶滅危惧種Ⅱ類・VU)に指定されている[6]

特徴 編集

常緑性つる性木本[4]つる植物のように匍匐して地表を這い[4]、高さはせいぜい30センチメートル。全体に毛があるがトゲは少なく、茎の節から発根して殖えていく[7]

葉は互生して[8]、葉身は円形で、浅く3 - 5裂する[4]。葉表は緑色かやや褐色がかった緑でツヤがあり、縁には細かい鋸歯がある。表面は毛が少なく、裏面には細かい毛が密生する[4]

花期は9月から10月で、葉腋から花茎を出し、穂状に花弁が5弁の白い花を数個つける[4]。晩秋から一か月かけて赤い果実がなり、11月から1月のころに熟す[3]。いわゆるキイチゴの形で、食用となる[4]。木苺としては酸味が強く、イチゴ同様にビタミンCが豊富である[4]。多くの木苺類は夏に熟すが、フユイチゴは冬に熟することが和名の由来である[3]。別名は「カンイチゴ」[8]

近縁種 編集

  • アイノコフユイチゴ (R. x pseudohakonensis)
  • アマミフユイチゴ (R. amamianus)
  • コバノアマミフユイチゴ (R. amamianus var. minor) - 奄美固有の変種で、環境省レッドリスト絶滅寸前の種に指定されている[9]

絶滅危惧IA類 (CR)環境省レッドリスト

  • オオフユイチゴ (R. pseudosieboldii) - フユイチゴとホウロクイチゴとの雑種という説もある。
  • コバノフユイチゴ (R. pectinellus) - 完全に地表を這う匍匐性の植物で、茎は地表から地中を這い、所々から短い地上茎を出す。花が初夏に咲き、かなり大きいので目立つ。本州から九州のやや標高の高いところにでる。種としては台湾とフィリピンにもある。
  • ミヤマフユイチゴ (R. hakonensis) - 全体にフユイチゴに似るが葉はやや三角形で先端が尖る。関東以西のやや高地、温帯域近くに分布する。
  • ホウロクイチゴ (R. sieboldii) - 全体はフユイチゴに似るがはるかに巨大で、葉も厚く毛深い。本州南岸から四国、九州、琉球列島および中国に分布する。日向に大群落を作る。

脚注 編集

  1. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Rubus buergeri Miq. フユイチゴ”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年5月20日閲覧。
  2. ^ フユイチゴ 花ごよみ”. 東山動植物園. 2016年3月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2011年9月14日閲覧。
  3. ^ a b c 高橋勝雄『野草の名前秋・冬―和名の由来と見分け方』山と溪谷社〈山溪名前図鑑〉、2003年10月、275頁。ISBN 4-635-07016-6 
  4. ^ a b c d e f g h 金田初代 2010, p. 150.
  5. ^ フユイチゴの仲間”. 森林総合研究所 (2010年6月1日). 2011年9月14日閲覧。
  6. ^ 日本のレッドデータ検索システム(フユイチゴ)”. エンビジョン環境保全事務局. 2011年9月14日閲覧。
  7. ^ 金田初代 2010, p. 151.
  8. ^ a b フユイチゴ”. 石川県. 2011年9月14日閲覧。
  9. ^ 植物絶滅危惧種情報検索(コバノアマミフユイチゴ)”. 生物多様性情報システム. 2011年9月14日閲覧。

参考文献 編集

  • 金田初代、金田洋一郎(写真)『ひと目でわかる! おいしい「山菜・野草」の見分け方・食べ方』PHP研究所、2010年9月24日、150頁。ISBN 978-4-569-79145-6 

外部リンク 編集