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函館市交通部500形電車(はこだてしこうつうぶ500がたでんしゃ)は、1948年昭和23年)に登場した函館市交通部(後の函館市交通局、現在の函館市企業局交通部。函館市電)の路面電車車両である。

函館市交通部500形電車
2008年頃に登場時の塗装に復元された530号 (五稜郭公園前/2019年4月)
2008年頃に登場時の塗装に復元された530号
五稜郭公園前/2019年4月)
基本情報
運用者 函館市企業局交通部
製造所 日本車輛製造[1]
製造年 1948年 - 1950年[1]
製造数 30両[2]
運用開始 1949年[3]
主要諸元
軌間 1,372 mm
電気方式 直流600 V架空電車線方式
車両定員 80名(座席28名)[1][4]
自重 15.4 t[4]
最大寸法
(長・幅・高)
13,050×2,336×3,700 mm[4]
車体 半鋼製[3]
台車 日本車輛製造 K-10[4]
車輪径 660 m[1]
主電動機 三菱電機 MB-172LR[4]
主電動機出力 37.3 kW[1]
搭載数 2[4]
駆動方式 吊り掛け駆動[3]
歯車比 62:15[1]
制御方式 直接制御[1]
制御装置 泰平電機 KR-8[4]
制動装置 空気・電気[1]
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目次

概要編集

輸送力増強のため、1948年から1950年(昭和25年)にかけて日本車輛製造で30両(501 - 530)が製造された大型の3扉ボギー車である[2]。函館市電では、1936年(昭和11年)導入の300形以来、かつ戦後初めての新造車である[5]

名古屋市電BLA形の流れを汲む半鋼製低床ボギー車で、札幌市電600形とも同族とされる。設計に関しては、戦前に運行されていた大型ボギー車50形や1934年(昭和9年)の函館大火の復興にあたって大火に強い半鋼製車として設計された300形を手掛けた函館市交通局の白旗譲技師が行ったものである。そのため、500形はBLA形の流れを汲みつつも50形の車体寸法と300形の車体構造を折衷して設計された車両でもあるとも言える[要出典]

本形式は函館市電で最大両数を誇ったが[6]、1980年代後半以降は老朽化や路線の縮小、2000形3000形といった新車の導入により淘汰が進み[7][8]、2018年現在は501号(2代目)と530号の2両が在籍している[9]。毎年のように廃車が噂されるが、2017年、函館市企業局は530号の当面の維持を決めた。[10]

製造編集

30両全車が日本車輌東京支店蕨工場で製造された。

  • 501 - 515 / 1948年11月製造、1949年(昭和24年)9月28日認可
  • 516 - 520 / 1949年12月製造、1950年(昭和25年)9月30日認可
  • 521 - 525 / 1950年5月製造、1951年(昭和26年)3月6日認可
  • 526 - 530 / 1950年11月製造、1951年3月6日認可
    • 参考文献 - 『急電101』 Vol.6、京都鉄道趣味同好会、1960年7月 

日本車輌には、1950年11月に函館市交通局駒場車庫において撮影された530号の落成写真が残されている。また、1948年10月に日本車輌東京支店蕨工場で撮影された501号の落成写真も残されている。501号は10月に完成していたが、501 - 515号のすべてが10月に完成していたかどうかは不明であり、ここでは、同じ製造ロットの15両は、上記の参考文献の記述に従い11月とした[要出典]

鉄道雑誌『鉄道ファン』1971年(昭和46年)7月号 (No. 123) 「函館市電300形単車姿を消す」(千歳篤)のレポートには、1948年秋に新造ボギー車500形10両が函館市交通局に到着した旨が書かれている。

改造編集

集電装置の交換編集

画像提供依頼:現存しない501号~529号と車体更新車501の外観の写真の画像提供をお願いします。2019年2月

本形式は入線時、集電装置としてビューゲルが装備されていたが、1962年(昭和37年)から翌年1月にかけて全車Z型パンタグラフに交換された[11]

中扉の閉鎖 編集

本形式は運用当初より乗務員3名で運行されていたが、人件費節約のため1963年(昭和38年)11月より中扉を締め切って前後2扉のみの使用となった[2]。なお、10両(501 - 510)の中扉部分には座席が設けられ、定員も90名に増加した[2]

ワンマン化改造編集

706形、710形、800形に続いて、1970年から翌年にかけてワンマン化改造が実施された[11]。改造では、正面窓の拡大や乗降扉の自動化、後扉の閉鎖が実施され[6]、閉鎖が解かれた中扉は2枚引戸から1枚引戸に改造されている。後扉については改造により埋め込まれたが[6]、扉の痕跡は確認できる[12]

暖房取付編集

1971年から翌年にかけて、当時在籍していた27両に暖房装置が取り付けられた[11]。この暖房装置は灯油燃焼式で、1969年に706形706号に試験的に取り付けられ好評であったことから、本形式にも採用された[11]

  • 503 - 516 / 1971年10月[11]
  • 517, 519 - 530 / 1972年(昭和47年)11月[11]

車体更新編集

505は1987年(昭和62年)1月、国鉄五稜郭工場で前年に更新された710形711号に準じた車体に更新され、501(2代)に改番された[13]

カラオケ電車への改造編集

 
貸切専用車となった501の車内

509号は1987年3月に自局工場で貸切専用のカラオケ電車に改造された[14]。車内にはカラオケ装置やテーブル、冷蔵庫や流し台などが設けられ、塗装もマルーン基調のものに変更されたが[14]1996年(平成8年)7月に廃車となった[15]。なお、同車の廃車前の1995年7月に[16]、501(2代目)の車内にシンセサイザーカラオケ装置やテーブルなどが設置され、2代目のカラオケ電車として竣工した[17]。現在はアミューズメントトラムと改名して引き続き運行中。料金は後述する。

ツーマン運転再現用電鈴設置編集

2007年(平成19年)6月3日に路面電車の日記念イベントとしてツーマン運転が再現されるのに併せて、530の中扉付近に電鈴及び押しボタンを設置。[要出典]

車体塗装編集

 
2008年ごろ、登場時の塗装に戻された530号

登場時の塗装は上半分がマンチュアサンドライト(ダークベージュ[12])、下半分がマジョルカブルー(濃紺[12])のツートンで、これは300形に倣ったものであった[2]。1975年(昭和50年)頃には510が当時の標準色であったクリームと薄緑のツートンに塗り替えられたほか、この頃から導入されたCMカー(全面広告車)には本形式も起用されている[11][18]

1988年からは一部の車両がアイボリー基調にライトグリーンの帯が入った塗装(新標準色[4])に塗り替えられた[12]

530号は2008年(平成20年)頃に新標準色から登場時の塗装に戻され、窓枠もニス塗りとなっている[19]

運用編集

501号編集

501号は「アミューズメントトラム」として、夏季の「カラオケビール電車」[20]などに使用されている。また、個人やグループでの貸切運行もある。

530号編集

 
530号、貸し切り運行の様子。

530号は運用は函館競馬、はこだて港まつり開催日などの多客期の増車が中心である[17]が、路面凍結が発生するような厳冬期には直接制御で車輪が空転しにくいという特性を生かし、[要出典]始発前や始発の営業列車として線路上や線路と舗装の隙間に入り込んだ雪を取り除くなど、軌道上の安全確認の役割を担っている。なおこの業務は企業局内ではフランジ付けと呼ばれている[21]

また、501号と同様貸し切りも可能。料金は大人19000円。[22]

特別運行編集

  • 2013年6月29日は函館の路面電車が開通してから100年の節目であることから、排4号39号9602号723号とともに『100年間の電車大行進』と題して5両が一列になって全線を行進するというイベントが行われた。なお翌日の始発前にも同様の方法で『モーニング電車大行進』が行われた。さらに530号と723号は臨100系統として函館どっく前谷地頭間を直行した。なおこの時は両者とも車掌が乗車してツーマンによる運行となった[23]
  • 2016年3月26・27日は北海道新幹線開業を記念し、39号「箱館ハイカラ號」、9602号とともに特別運行が行われた[24]

TV・映画などへの出演編集

TVや映画のロケに度々用いられることがあり、最近の例としては2015年(平成27)にNHKで放送されたブラタモリ「函館の夜景」や[25]、2016年(平成28年)に公開された映画「世界から猫が消えたなら[26]また2017年5月1日日本テレビ系列で放送された「笑神様は突然に…」[27]のロケに使用されている。

事故編集

1963年8月、蓬莱町電停付近のカーブで524が脱線、対向の518と正面衝突した。これにより大破した518が廃車となった。

廃車編集

  • 501(初代)・502 / 1973年(昭和48年)10月1日付[11]部品確保・梁川車庫閉鎖に伴う余剰による。[要出典]
  • 503・504・506 / 1985年(昭和60年)5月1日付[15]
  • 507・508 / 1986年(昭和61年)11月1日付[15]
  • 509 / 1996年7月20日付[15]
  • 510 - 512/1991年4月30日付[15]
  • 513 - 515 / 1992年(平成4年)9月30日付[15]東雲線廃止による余剰。[要出典]
  • 516・517・519 - 521 / 1993年(平成5年)4月1日付[15]ガス会社経由区間廃止による余剰。[要出典]
  • 518 / 1964年(昭和39年)1月10日付[2]。1963年8月に蓬莱町附近で発生した524の暴走による正面衝突事故のため大破。[2]台車と主電動機は706に流用された[2]
  • 522・523 / 1993年(平成5年)5月15日付[15]20013001への代替による。[要出典]
  • 524 / 1979年3月(昭和54年)。五稜郭駅前線廃止に伴う余剰による。[要出典]
  • 525 / 1994年3月(平成6年)3月31日付[15]2002・3002への代替による。[要出典]
  • 526・527 / 1995年(平成7年)3月31日付[15]3003への代替、運用の効率化による。[要出典]
  • 528 / 1997年(平成9年)3月26日付[15]
  • 529 / 2007年3月31日付[28]9601号導入に伴う余剰。1007・1008とともに2010年ごろまで放置されたが現在は解体撤去された。

脚注編集

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  1. ^ a b c d e f g h 路電ガイド, p. 374-375.
  2. ^ a b c d e f g h 奥野 1969, p. 23.
  3. ^ a b c 世界の鉄道83, p. 156-157.
  4. ^ a b c d e f g h 早川 2011, p. 162.
  5. ^ 世界の鉄道64, p. 39.
  6. ^ a b c 路電ガイド, p. 39.
  7. ^ 寺田 2003, p. 20.
  8. ^ 早川 1994, p. 150-151.
  9. ^ 函館市役所 (2018年5月22日). “車両のご紹介(函館市電)”. 函館市役所. 2018年9月26日閲覧。
  10. ^ “函館市電:「動く博物館」でPR 最古の車両継続使用へ - 毎日新聞” (日本語). 毎日新聞. https://mainichi.jp/articles/20170113/k00/00m/040/156000c 2018年11月23日閲覧。 
  11. ^ a b c d e f g h 沼尻 1976, p. 57.
  12. ^ a b c d 横山 1989, p. 172.
  13. ^ 鉄道ジャーナル』第21巻第5号、鉄道ジャーナル社、1987年4月、 108頁。
  14. ^ a b 横山 1989, p. 173.
  15. ^ a b c d e f g h i j k 寺田 2003, p. 142-143.
  16. ^ 寺田 2003, p. 143.
  17. ^ a b 早川 2000, p. 171.
  18. ^ 早川 1994, p. 151.
  19. ^ 早川 2011, p. 163.
  20. ^ “函館市電、501号車によるカラオケビール電車 7/6~ 運行開始”. 鉄道チャンネル. (2017年6月13日). https://tetsudo-ch.com/15571.html 2018年10月8日閲覧。 
  21. ^ 今井正一 (2017年1月12日). “冬期間の安全運行支える市電530号車 軌道と路面のすき間除雪”. 函館新聞電子版. https://digital.hakoshin.jp/news/national/15934 2018年10月8日閲覧。 
  22. ^ 貸切電車(函館市電) | 函館市”. www.city.hakodate.hokkaido.jp. 2019年6月15日閲覧。
  23. ^ 函館市電の顔が勢揃い、100周年記念イベントレポート- あなたのテーマでディープな函館”. 函館市公式観光情報サイトはこぶら. 2018年9月16日閲覧。
  24. ^ 開業記念で市電一部無料 / 函館新聞電子版」『』。2018年11月23日閲覧。
  25. ^ ブラタモリ#8 函館の夜景”. TVでた蔵. 2018年10月8日閲覧。
  26. ^ ミナト座にカモメ時計店-映画『世界から猫が消えたなら』函館ロケ地まとめ”. 2018年9月17日閲覧。
  27. ^ [笑神様は突然に… 【鉄道BIG4本日運行開始「四季島」と奇跡の遭遇!GW2時間SP】 の番組概要ページ - gooテレビ番組(関東版)]” (日本語). gooテレビ番組. 2018年11月10日閲覧。
  28. ^ 車両年鑑2007, p. 222.

参考文献編集

書籍編集

  • 『世界の鉄道 1964年版』朝日新聞社・木村庸太郎編集発行、朝日新聞社、1963年9月。
  • 『世界の鉄道 1983年版』朝日新聞社・楠山定編集発行、朝日新聞社、1982年12月。
  • 寺田裕一『ローカル私鉄車輛20年 路面電車・中私鉄編』JTB〈JTBキャンブックス〉、2003年。ISBN 4-533-04718-1
  • 東京工業大学鉄道研究部『路面電車ガイドブック』誠文堂新光社、1976年6月。
  • 『函館の路面電車100年』北海道新聞社、2013年6月。
  • 『路面電車年鑑』イカロス出版、2018年1月18日刊。ISBN 978-4-8022-0465-1

雑誌記事編集

  • 奥野和弘「函館市交通局」『鉄道ピクトリアル 1969年4月号臨時増刊』第19巻、鉄道図書刊行会、1969年4月。
  • 沼尻利之「函館市交通局」『鉄道ピクトリアル 1976年4月臨時増刊号』第26巻第4号、鉄道図書刊行会、1976年4月。
  • 横山真吾「函館市交通局」『鉄道ピクトリアル 1989年3月臨時増刊号』第39巻第3号、鉄道図書刊行会、1989年3月。
  • 早川淳一「函館市交通局」『鉄道ピクトリアル 1994年7月号臨時増刊』第44巻第7号、鉄道図書刊行会、1994年7月。
  • 早川淳一「函館市交通局」『鉄道ピクトリアル 2000年7月号臨時増刊』第50巻第7号、鉄道図書刊行会、2000年7月。
  • 「車両データ〜2006年度」、『鉄道ピクトリアル』2007年10月号臨時増刊』57巻10号 pp. 202-248
  • 早川淳一「函館市企業局交通部」『鉄道ピクトリアル 2011年8月号臨時増刊』第61巻第8号、鉄道図書刊行会、2011年8月。

関連リンク編集