分圧回路
分圧回路(ぶんあつかいろ)または分圧器(ぶんあつき、英: Voltage divider)とは、電子工学において、ある電圧 (Vin) に比例した電圧 (Vout) を発生させるよう設計された単純な回路または機器である。また、低周波数の信号減衰器をそのように呼ぶこともある。分圧回路は抵抗分割回路(resistor divider)あるいは電位分割回路(potential divider)とも呼ばれる。
抵抗分割の法則編集
分圧回路は、右図のように2つの抵抗器で構成される。
VinはR1とR2にかかり、VoutはR2にかかる電圧である。 オームの法則により電圧降下は抵抗値に比例するため、
よって、
R1 と R2 は、それぞれに複数の抵抗器を直列接続し微調整が出来る。
単純な例として、R1 = R2 であれば次のようになる。
もう少し実用的な例として、Vout=6V、Vin=9V であった場合、次のようになる。
つまり、R2 の抵抗値は R1 の2倍でなければならないことがわかる。
0 と 1 の間の任意の比率が可能である。すなわち、抵抗器のみを使った場合、電圧を逆転させたり、Vin より Vout を大きくしたりはできない。
電圧源としての分圧回路編集
分圧回路を正確な参照電圧を生成するのに使おうとすると、電圧源としては貧弱である。出力電圧に何らかの負荷が接続されたとき、それは R2 と並列接続されたことになり、結果として Vout が変化してしまう。
RL を Vout に接続された負荷抵抗とすると、Vout は次のようになってしまう。
従って、R1 および R2 に比較して RL が極めて大きい場合のみ、分圧回路を電圧源として使うことができる。しかし、そうすると電力のほとんどを分圧回路で消費してしまうため、このような手法はあまり用いられない。
応用編集
分圧回路は安定な参照電圧を生成するのによく使われる。このような参照電圧は、オペアンプなどの高入力インピーダンスの機器で使われる。また、電圧源で発生すべき電圧を設定するのに、この参照電圧を使うこともある。
RLCによる分圧回路編集
分圧回路は一般に2つの抵抗器で構成されるが、何らかの周波数を持った信号については、コンデンサやコイルなどの任意のインピーダンスを組み合わせて分圧回路を構成可能である。一般に Z1 と Z2 というインピーダンスがあるとき、電圧は次のようになる。
実際、分圧回路を抵抗器とコンデンサで構成できる。
抵抗器のインピーダンスは単にその抵抗値である。
コンデンサのインピーダンスは、周波数が低ければ大きく、周波数が高ければ小さくなる。式で表すと次の通りである。
ここで C はコンデンサの静電容量、j は虚数単位、ω は入力電圧の周波数(秒当たりのラジアン)である。この分圧回路での電圧は次のようになる。
このように、電圧比は周波数に依存し、周波数が高くなるにつれて比率は小さくなる。この回路は単純なローパスフィルタとなっている。またこの式には、虚数が出てきており、振幅だけでなく位相の変化も含まれている。純粋に振幅の比率だけを計算することもできるが、インピーダンスの代わりにコンデンサのリアクタンスを使って計算してもよい。
参考文献編集
- Paul Horowitz and Winfield Hill, The Art of Electronics, Cambridge University Press, 1989.