分部 嘉治(わけべ よしはる)は、江戸時代前期の大名近江国大溝藩2代藩主。分部家3代。官位従五位下伊賀守

 
分部嘉治
時代 江戸時代前期
生誕 寛永4年9月11日1627年10月19日
死没 明暦4年7月10日1658年8月8日
改名 光郷[1]→嘉治
別名 徳千代[1]、与三兵衛[1]
戒名 永泰院殿龍谷慈雲大居士[1]
墓所 滋賀県高島市大溝の円光寺
官位 従五位下伊賀守
幕府 江戸幕府
主君 徳川家光家綱
近江大溝藩
氏族 分部氏
父母 分部光信酒井重忠
兄弟 嘉治大関高増正室ら
池田長常次女
嘉高、女子(一柳直治正室)
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生涯 編集

寛永4年(1627年)9月11日[2]、初代藩主・分部光信の三男として誕生[1][2]。兄二人が早世した[1]ために世嗣となり、寛永20年(1643年)に父が死去したことにより、3月26日に遺領を継いだ[1]。4月18日、徳川家光に御目見し[1]、12月29日に従五位下伊賀守に叙任[1]。正保元年(1645年)4月26日に初めて領国入りのための暇を得る[1]

正保3年(1647年)には、大溝藩領小川村(現在の高島市安曇川町上小川)出身の陽明学者中江藤樹を招いている[3][4]。藤樹は大溝藩士別所友武の娘・布里と再婚し[注釈 1][4][5]、慶安元年(1648年)春には小川村に藤樹書院を落成させた[4]。同年8月25日に藤樹が没したのち[4]、門弟の中川謙叔らは祠堂に集まって3年の喪に服そうとしたが、大溝藩は彼らに立ち退きを命じ、弟子たちは離散した(藤樹書院の解散)[6]:6[注釈 2]。謙叔は大溝藩主(嘉治)を強い表現で批判する文章を残している[6]:6-7。藤樹の「心学」(陽明学)を忌避した[7]江戸幕府が大溝藩を通して藤樹書院の解散を命じたとする説[注釈 3]があるが[8]、実際に幕府の命令があったかは明確ではない[6]:7

明暦4年(1658年)7月9日、大溝において妻の叔父である池田長重と対談中に刃傷沙汰となった[1][9][2]。長重は、もとは兄である池田長常備中松山藩主)の家臣であったが[9]、当時は浪人となって京都で暮らしていた[1][9]。長重が大溝に赴いて嘉治と面会したのであるが[1][9]、夜に入って互いに刀を抜いての斬り合いになった[1](『寛政譜』では、長重が「故なく」斬りかかり、嘉治も応戦したと記している[1][9])。長重は斬殺され、嘉治も翌10日に傷が元で命を落とした[1]。享年32[1]

家臣の和田主殿・原田左近・別所七郎左衛門らの働きにより、長男・嘉高(11歳)の家督相続が認められた[10]。和田・原田・別所の3名は嘉治に殉死し、その墓は嘉治の墓の近くに設けられた[11]

系譜 編集

特記事項のない限り、『寛政重修諸家譜』による[1]。子の続柄の後に記した ( ) 内の数字は、『寛政譜』の記載順。

補足 編集

  • 分部家を継いだ嘉高は実子がないまま死去しており、末期養子として嘉治正室のいとこにあたる信政(池田長重の兄にあたる旗本池田長信の三男)を迎えている。

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ 布里との間に一子(中江常省)を儲けている。
  2. ^ このときに離散した弟子たちの多くは、熊沢蕃山が仕えていた岡山藩に集まることとなる[6]:7
  3. ^ 藤樹の研究者であった柴田甚五郎が明治時代に唱えた説[6]

出典 編集

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r 『寛政重修諸家譜』巻第三百九十二、国民図書版『寛政重修諸家譜 第三輯』p.6
  2. ^ a b c 分部嘉治”. デジタル版 日本人名大辞典+Plus. 2022年1月4日閲覧。
  3. ^ 高島市歴史散歩 No.43 中江藤樹先生と大溝」『広報たかしま』第70号、2008年7月1日、2022年1月4日閲覧 
  4. ^ a b c d 中江藤樹について”. 中江藤樹生誕400年祭. 高島市. 2022年1月4日閲覧。
  5. ^ 中江藤樹略年譜”. 喜多方市. 2022年1月4日閲覧。
  6. ^ a b c d e 高橋文博. “近世学問都市京都 中江藤樹学派と京都”. 2022年1月4日閲覧。
  7. ^ 常省祭”. 公益財団法人藤樹書院. 2022年1月4日閲覧。
  8. ^ 【140408記者提供資料】第25回記念館小企画展「~近江聖人中江藤樹の高弟~ 双璧 熊沢蕃山・淵岡山」開催”. 高島市. 2022年1月4日閲覧。
  9. ^ a b c d e 『寛政重修諸家譜』巻第二百六十七、国民図書版『寛政重修諸家譜 第二輯』p.429
  10. ^ 中井均 2021, p. 73.
  11. ^ 中井均 2021, p. 93.

参考文献 編集

外部リンク 編集