初期雇用契約(しょきこようけいやく)とは、フランスにおいて2006年に立法化された若者を対象とした雇用形態をいう[1]Contrat première embaucheよりCPEと略される[1]。26歳未満の若者の雇用にあたり、試用期間(この期間中は雇用者側は理由を問わず解雇することを認める)を、これまでの3か月から2年間に改定するという法案で、この内容を盛り込んだ機会平等法は、2006年4月2日に公布された[1]

背景として、フランスは1990年代より、長らく若年失業率が20%前後の水準であった[2]。従来、フランスにおける雇用は無期限雇用契約(CDI)と呼ばれる形態[3]であったが、若者失業率の悪化への対応として雇用者側に配慮し、フランス首相ドミニク・ガルゾー・ド・ビルパンらが立案した。

このCPEを巡り、反対する学生、労働組合により大規模なデモストライキ、暴動などがフランス全土で行われ、結局2006年4月10日になり、ド・ビルパンはこの法案を撤回した[1]

日本では新卒一括採用が一般的だが、フランス等では新卒一括採用が日本と比較すると浸透していない。そのためにCPEは労使双方に有効であると云われている。新卒一括採用を行っている日本でもCPEとは違うが、試行雇用契約(いわゆる試用期間)が有効であると厚生労働省等が検討しているため、近年日本でも試行雇用契約の積極的な導入について議論が高まっている。

脚注 編集

  1. ^ a b c d 海外労働事情 特別寄稿 CPE「初回雇用契約」の破綻が意味するもの--フランス社会の苦悩と雇用問題の構造」『Business labor trend』、労働政策研究・研修機構、2006年6月、35-39頁、NAID 40007326015 
  2. ^ OECD Labour Force Statistics 2020, OECD Labour Force Statistics, OECD, (2020), doi:10.1787/23083387, ISBN 9789264313217 
  3. ^ 契約には、報酬額、職種、就業時間、就業場所の他、さまざまな条件が規定されており、被雇用者はいったんCDIを締結してしまえば、雇用者が何か不祥事を引き起したり、会社が極端な経営難に陥るというような場合を除けば、雇用者を解雇することが、ほとんどできなくなる。また、雇用者の解雇を行う場合にも、労働監督官の許可取得、高額の解雇補償手当ての支給、再就職のための職業訓練費用の負担といった多くの規定が法律に定められており、65歳の定年までほとんど解雇されることが無いのが実情である。このため、多くの経営者は、新規雇用(CDIの締結)に極めて慎重になっており、若者の失業率の悪化へとつながっている。

関連項目 編集

文献 編集

  • 山本三春『フランス ジュネスの反乱 主張し行動する若者たち』大月書店、2008年6月、ISBN 4272330543(後半部に詳説あり)

外部リンク 編集