勤行 (日蓮正宗)

勤行(ごんぎょう)は、精進のこと。また、宗教儀式のひとつで、定期的に仏像などの本尊の前で、読誦したり礼拝したりすること。儀式作法は宗派によって違う。仏教用語。

日蓮正宗やそこから20世紀中頃以降に分派した創価学会正信会顕正会では、朝と夕に、「御本尊(ごほんぞん)」と呼ばれる曼荼羅に向かって法華経(方便品(冒頭の十如是まで)と寿量品)の読誦、唱題(題目を唱える)を行う。

また、総本山や寺院において題目を1時間ひたすら唱える唱題行が行われている。ここでは、日蓮正宗本体(宗門)だけでなくそれら新宗教団体のものについてもあわせて解説する。

目次

宗門の勤行編集

信徒の修行のうち自行としての日常の勤行は、28品からなる妙法蓮華経のうち方便品如来寿量品(長行、自我偈)の読誦、唱題(「南無妙法蓮華経」の題目を唱えること)を基本構成とし、古来からの[要出典]朝五座・夕三座の格式[1]を守って行われている。

方便品と寿量品をセットにして1回読誦することを「一座」といい、途中に観念文などを挟みながら繰り返していく。方便品は五座すべてで全文読誦しなければならないが、寿量品は朝の二座と夕の初座だけが全文読誦する「長行」とされ、他の座では自我偈のみとなる。

勤行の流れ編集

朝の勤行はまず、本尊に向かって題目三唱する。 初座は東天に向かって題目三唱し、方便品、寿量品(自我偈)を読誦した後、引き題目を三遍唱え題目三唱し観念文を念じ題目三唱する。

本尊に向きを変えて第二座に入り、方便品、寿量品(全文)を読誦し引き題目を三遍唱え題目三唱し観念文を念じ題目三唱する。第三座、第四座は方便品、寿量品(自我偈)を読誦した後、引き題目を三遍唱え題目三唱し観念文を念じ(第三座では観念文の途中で二回、第四座では途中で一回題目三唱)題目三唱する。第五座は方便品、寿量品(自我偈)を読誦した後唱題し、唱題が終わって題目三唱、回向して題目三唱し、観念文を念じて最後に題目三唱する。

夕の勤行は朝の初座と第四座をとばした形で、まず、本尊に向かって題目三唱する。初座に入り、方便品、寿量品(全文)を読誦し引き題目を三遍唱え題目三唱し観念文を念じ題目三唱する。 第二座は方便品、寿量品(自我偈)を読誦した後、引き題目を三遍唱え題目三唱し観念文を念じ(観念文の途中で二回題目三唱)題目三唱する。 第三座は方便品、寿量品(自我偈)を読誦した後唱題し、唱題が終わって題目三唱、回向(回向は翌日の分になる)して題目三唱し、観念文を念じて最後に題目三唱する。

勤行の最中に鈴を打つが、方便品に入るところで7回、寿量品に入るところで3回、唱題に入るところで7回、引き題目と唱題の後で5回、最後の題目三唱の前に3回打つ。なお、回向は鈴を打ちながら行う。また、朝の勤行の初座では鈴を打たない。

座と座の間に唱題を挟んだり、すべての座を終えた後に唱題行や後述の「丑寅勤行」のように追加の座が行われる例もあり、長いと2時間近くかかる場合もある。

丑寅勤行編集

総本山大石寺では、毎日午前2時30分より、法主の大導師による「丑寅勤行」が客殿で欠かさず行われている。この勤行では、朝の五座の勤行をした後、本門戒壇の大御本尊への遥拝として一座、唱題が追加されている。

創価学会の勤行編集

日蓮正宗から1991年平成3年)に破門された創価学会では朝と晩に勤行として法華経の抜粋と題目を唱える習慣がある。学会も宗門と同様に御本尊の授与を受け、「学会用」と呼ばれる独自形式の仏壇に安置しそれに正対して勤行を行うとしているが、何らかの理由で仏壇を用意できない学会員は「お守り御本尊」と呼ばれる御本尊をかたどったペンダントの授与を受け、東の方角を向いて座ることによって仏壇の設置に代えることができる。出張や単身赴任、入院などの理由で長期間自宅での勤行ができなくなる場合には、所属する支部や区本部からお守り御本尊の貸与を受けることもできる[2]。なお、御本尊、お守り御本尊のどちらも授与を受けるには学会規定の手数料を納める必要がある[3]

日蓮正宗傘下時代は言うまでもなく、破門後もかなり最近まで学会は五座三座の勤行を行っており、慣れていないと夕方の三座を行うのにも最低で30分、唱題に時間を掛けすぎると1時間以上かかることすらあった。在外組織では「五座三座の実践」が入会基準として厳格に運用されていた国も多く、新入会員をなかなか増やせないジレンマに陥るケースも見られ、日本国外への布教を担当する創価学会インタナショナルには、破門後の1990年代以降海外の組織から「五座三座の勤行を見直してほしい」という意見が相次いだ。これを受け学会本部教学部は2002年(平成14年)5月、在外の学会員に関しては五座三座ではなく「方便品、自我偈、唱題をもって勤行とする」という短縮形式を統一基準として指示する。そしてこの形式に「SGI方式」という別名が付き、日本国内の学会員にも広まりだした。

2004年(平成16年)9月10日、学会は聖教新聞「創価学会の勤行と御祈念文の制定」[4][5]を掲載。国内でもそれまでの五座三座を一座のみに簡略化した「SGI方式」の勤行を正式のものとしてスタートさせた。これによって、新入会員でも15分程度で1回の勤行を終わらせることができるようになった。ただし唱題には各回5分という目安が設けられたものの時間、回数の厳しい制限は設けられていなかった[6]

学会創立85周年となる2015年(平成27年)にはSGI方式も改定され、さらに簡略化した新しい「創価学会『勤行要典』」を定めた[7]。新勤行要典では、顕正会が原則省略している朝の諸天供養を正宗系3教団中で初めて完全に廃止し、冒頭の本尊に向かっての題目三唱に統合した。また、宗門・顕正会にはある富士門流第三祖日目への報恩感謝が外された。

なお壮年部や多宝会など古くからの学会員で長行に慣れ親しんでいる人については、引き続き五座三座で観念文のみを創価学会『勤行要典』の内容に変えて実施することも可能である。

顕正会の勤行編集

冨士大石寺顕正会でも創価学会と同様に朝夕の勤行を行う。前身の妙信講が1974年(昭和49年)に日蓮正宗から破門[8]される前はもちろん、破門後でも「日蓮正宗顕正会」の時代には五座三座の勤行を行っていたが、現在の「冨士大石寺」顕正会への改名後にスタイルが変更された。

妙信講時代の破門、その後に幹部が信徒除名となったことで創価学会や宗門等に見られるような入会と同時に本尊授与をされることはなくなった。このため一般会員は日々の勤行に於いて、自宅より遠く戒壇の大御本尊を直接拝み参らせる遥拝勤行に徹しているのが大きな特徴であり、学会が御本尊に正対するか用意できない場合は東を向いて座るのが望ましいとしているのに対し、顕正会では大石寺の方向を向いて座る。

1998年(平成10年)6月15日顕正新聞で「御観念文の改正」が発表され、方便品、自我偈を各1回読誦しその後に唱題する現在の勤行形式を創価学会に先駆けて採用。

顕正会では、毎週日曜日の午前に会員が会館に集合して一堂で行う「日曜勤行」も行われている。埼玉県さいたま市大宮区の顕正会本部会館では日曜勤行が午前中3回に分けて行われ、特に1回目は会長・浅井昭衛が自ら導師を務めることもある。

正信会の勤行編集

日蓮正宗から1980年前後に分派した正信会の場合は、寺院により対応が異なる。五座三座の勤行を行っている寺もあるが、一方で「SGI方式」や「顕正会方式」に近い形式を取っている寺も存在する。なお正信会が独自に建立した寺院以外は、居住する会員の僧侶が死亡した時点で宗門へ明け渡す義務が生じる。

脚注編集

  1. ^ 玉野和志『創価学会の研究』(講談社現代新書 ISBN 4062879654)p23
  2. ^ 『新会員の友のために 1.勤行と創価学会の活動について』(聖教新聞社 ISBN 978-4412012950)p38「出張中の勤行は?」
  3. ^ 2017年4月現在、御本尊は2,500円、お守り御本尊は5,000円と規定されている。
  4. ^ 『創価学会の研究』p21
  5. ^ 『新会員の友のために 1.勤行と創価学会の活動について』p25-29「勤行の方式と御祈念文の内容について」
  6. ^ 『新会員の友のために 1.勤行と創価学会の活動について』p47「お題目はどのくらいがいい?」
  7. ^ 創価学会「勤行要典」を新たに制定 三代会長を永遠の師匠と仰ぐ - 聖教新聞 2015年11月17日付1・3面。
  8. ^ 実際は破門よりもさらに重い講中解散処分だった。