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北大西洋条約機構事務総長

北大西洋条約機構事務総長(きたたいせいようじょうやくきこうじむそうちょう Secretary General of the North Atlantic Treaty Organization)は、北大西洋条約機構(NATO,North Atlantic Treaty Organization)における外交官職であり、事務局の最高責任者である[1]欧州連合軍最高司令官と並ぶ重要な職務とされ、司令官がアメリカ人であるのに対し、事務総長はヨーロッパの政治家が就任している[2]。その主な職務は、加盟各国間の調整や職員の統率である。2019年時点の事務総長は、ノルウェーイェンス・ストルテンベルグ [3]

北大西洋条約機構
事務総長
Flag of NATO.svg
現職者
イェンス・ストルテンベルグ

就任日 2014年10月1日
初代 ヘイスティングス・イスメイ
創設 1952年
ウェブサイト NATO

創設まで編集

北大西洋条約の第9条は、加盟各国に対し、各国代表者による理事会の設置を求めており、それに基づき北大西洋理事会が設置された。当初、理事会は加盟各国の外相による年次会合とされていた[2][4]。1950年5月になり、より緊密な協力関係の構築及び国際業務の増大に対応するため、ロンドンに拠点を置き、各国は外相の全権代理となる代表を派遣した[5]。代表の議長には、文民部門を含めて、機構を統率することが求められた[6]

代表による会合は、1950年7月25日に初めて開催され、議長にはアメリカ大使のチャールズ・スポフォードが選出された[7]。機構の具体化のために、幾つかの組織が創設されたが、最も重要な事項としては、欧州連合軍司令官の単一指揮の元に統合した単一の軍事機構が設置されることがあった[8] 。統合化も含めた機構の整備は、NATOの組織を急拡大させた。組織の一部として、代表の会合は、外交分野のみならず国防や財政分野も含めた事項も取り扱うようになり、重要性を増していった[9]

機構の拡大とともに、代表の権限も増大したため、アメリカのW・アヴェレル・ハリマンを議長とする臨時理事会が開催された。この会議では、パリにNATOを統率する公式な事務局を設立するとし[10]、それに対しNATOをより強化かつ協調させる組織となることや、北大西洋理事会議長以外の誰かが幹部となることを求めた[11]。1952年2月のリスボン会合において、北大西洋理事会は、機構の文民部門を統率し、文民職員を指揮し、理事会を支援する職務としての事務総長を設置することとした[12]

経緯編集

リスボン会合の後、各国は事務総長適任者の選定にあたった。駐米イギリス大使であったオリヴァー・フランクスを選出しようとしたが、断られている。1952年3月13日に、イギリス陸軍の大将と内閣における英連邦大臣の経歴を有するヘイスティングス・イスメイが初代事務総長に就任している[2][13]。事務総長は後に、北大西洋理事会の議長となるが、この時点ではスポフォードが議長であり、イスメイは副議長であった。イスメイは第二次世界大戦中における高位軍人の経歴に加え、戦後は外交官としての経験もあり、この職務は適職であったと評されている[2][14]

スポフォードがNATOを退いた後、組織改編によって、北大西洋理事会は年次で一名の儀礼的な代表を選出し、事務総長が理事会副代表として会合の議長を務めるとされた[15]。イスメイは1957年5月まで事務総長を務めている[16]

イスメイの後任には、ベルギーの首相と外相の経験を持つポール=アンリ・スパークが就任している。

歴代事務総長編集

NATO事務総長 Secretary General of NATO[17]
氏名 出身国 任期
1 ヘイスティングス・イスメイ   イギリス 1952年4月4日 - 1957年5月16日
2 ポール=アンリ・スパーク   ベルギー 1957年5月16日 - 1961年4月21日
3 ディルク・スティッケル   オランダ 1961年4月21日 - 1964年8月1日
4 マンリオ・ブロジオ   イタリア 1964年8月1日 - 1971年10月1日
5 ヨゼフ・ルンス   オランダ 1971年10月1日 - 1984年6月25日
6 ピーター・キャリントン   イギリス 1984年6月25日 - 1988年7月1日
7 マンフレート・ヴェルナー   ドイツ 1988年7月1日 - 1994年8月13日
セルジョ・バランチーノ(代行)   イタリア 1994年8月13日 - 1994年10月17日
8 ウィリー・クラース   ベルギー 1994年10月17日 - 1995年10月20日
セルジョ・バランチーノ(代行)   イタリア 1995年10月20日 - 1995年12月5日
9 ハビエル・ソラナ   スペイン 1995年12月5日 - 1999年10月6日
10 ジョージ・ロバートソン   イギリス 1999年10月14日 - 2003年12月17日
アレッサンドロ・ミヌート・リッゾ(代行)   イタリア 2003年12月17日 - 2004年1月1日
11 ヤープ・デ・ホープ・スヘッフェル   オランダ 2004年1月1日 - 2009年8月1日
12 アナス・フォー・ラスムセン   デンマーク 2009年8月1日 - 2014年10月1日
13 イェンス・ストルテンベルグ   ノルウェー 2014年10月1日 -
NATO事務次長 Deputy Secretaries General of NATO[18]
氏名 出身国 任期
1 Jonkheer van Vredenburch   オランダ 1952年1956年
2 Baron Adolph Bentinck   オランダ 1956年1958年
3 Alberico Casardi   イタリア 1958年1962年
4 Guido Colonna di Paliano   イタリア 1962年1964年
5 James A. Roberts   カナダ 1964年1968年
6 Osman Olcay   トルコ 1969年1971年
7 Paolo Pansa Cedronio   イタリア 1971年1978年
8 Rinaldo Petrignani   イタリア 1978年1981年
9 Eric da Rin   イタリア 1981年1985年
10 Marcello Guidi   イタリア 1985年1989年
11 Amedeo de Franchis   イタリア 1989年1994年
12 セルジョ・バランチーノ   イタリア 1994年2001年
13 アレッサンドロ・ミヌート・リッゾ   イタリア 2001年2007年
14 クラウディオ・ビソニェーロ   イタリア 2007年2012年
15 アレキサンダー・バーシュボウ英語版   アメリカ合衆国 2012年

関連項目編集

注記編集

  1. ^ NATO,日本外務省資料
  2. ^ a b c d NATO―21世紀からの世界戦略,佐瀬昌盛,文藝春秋,1999年,ISBN 9784166600564
  3. ^ “Nato names Stoltenberg next chief”. BBC. (2014年3月28日). http://www.bbc.com/news/world-europe-26791044 2014年3月28日閲覧。 
  4. ^ Ismay, p. 24
  5. ^ Ismay, p. 28
  6. ^ “15th - 18th May: London”. NATO Final Communiques 1949-1974. NATO Information Service. p. 56. 
  7. ^ Ismay, p. 31
  8. ^ Ismay, p. 37
  9. ^ Ismay, p. 41
  10. ^ Ismay, p.44
  11. ^ Ismay, p.46
  12. ^ Ismay, p. 48
  13. ^ RESOLUTION ON THE APPOINTEMENT OF LORD ISMAY”. 2015年11月25日閲覧。
  14. ^ Daniel, Clifton (1952年3月13日). “Ismay Named Civilian Chief of Atlantic Pact Organization”. The New York Times 
  15. ^ Fedder, p. 10
  16. ^ Brosio, p. 39
  17. ^ NATO Who's who? – Secretaries General of NATO”. NATO. 2010年8月22日閲覧。
  18. ^ NATO Who's who? – Deputy Secretaries General of NATO”. NATO. 2012年7月20日閲覧。

参照編集

  • Brosio, Manlio (1969). NATO: Facts and Figures. NATO Information Service. https://archives.nato.int/nato-facts-and-figures;isad. 
  • Ismay, Hastings (1954). NATO: The First Five Years. NATO. 
  • Fedder, Edwin (1973). NATO:The Dynamics of the Alliance in the Postwar World. Dodd, Mead & Company. ISBN 0-396-06621-6.