北海道・北東北を中心とした縄文遺跡群

北海道・北東北を中心とした縄文遺跡群(ほっかいどう・きたとうほくをちゅうしんとしたじょうもんいせきぐん)は、ユネスコ世界遺産(文化遺産)暫定リストに掲載されている北海道北東北にある縄文時代の遺跡群の総称。

遺跡は北海道青森県岩手県秋田県の1道3県に点在している。

世界遺産推薦への動向編集

 
亀ヶ岡遺跡で出土された遮光器土偶(重要文化財)
東京国立博物館展示。

2002年8月に4道県でつくる知事サミットにおいて「北の縄文文化回廊づくり構想」が提唱され、2007年8月に4道県で世界遺産登録推進を確認[1]。2009年1月に暫定リストに掲載された。約1万年にわたり発展し、大規模集落や祭祀道具に特異性がある「地域文化圏」であり、同時代の他文化圏にも影響を与えた、縄文時代を代表する遺産群であることを推薦理由としている[2]

早期の世界遺産登録を目指しているが2017年までに5年連続で推薦が見送られ[3]、2018年7月19日に文化審議会により2020年審議の正式候補に選定されたが[4]、2020年からは文化遺産・自然遺産を問わず審議対象は一国一件に限られるようになり、自然遺産候補として「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」も2020年の推薦を目指していたことから、政府は自然遺産の候補案件が優先的に審査対象にされることを踏まえ、「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」を先に推薦することにした。このため、北海道・北東北を中心とした縄文遺跡群は2021年の推薦に回された[5]。2019年7月30日、文化審議会が2021年審議の正式候補に再選定した[6]。2019年12月19日、世界遺産条約関係省庁連絡会議が招集され、次いで20日に閣議了解により正式に推薦することが決定[7]。2020年2月1日までに推薦書を世界遺産センターへ提出することになるが、2020年から全体審議数の上限が35件となり登録数の少ない国が優先されるため推薦物件が多い場合には日本からの推薦が受理されない可能性もある[8]。2020年1月16日、推薦書をユネスコに提出した[9]

今後ユネスコ諮問機関(国際記念物遺跡会議)の審査をうける際、北東北という地域区分が分りにくいのではないかということで、2019年11月28日に専門家会議が開催され、「縄文―北日本の先史遺跡群」・「日本列島北部の縄文遺跡群」など複数案が提示され[10]、ユネスコに届け出た暫定リストでの英語名称では地域名を「Hokkaido and Northern Tohoku」と表記してきたものを、日本の地名の知識がない海外の人にも遺跡群の場所のイメージを分かりやすく伝えるため「Northern Japan(北日本)」とし、日本語の名称は既に定着しているとして当面は変更しないこととした[11]

縄文遺跡群世界遺産登録推進会議は、狩猟・採集・漁労を基盤とした定住生活に顕著な普遍的価値があることを推薦事由に上げているが、縄文文化全体に言えることであり、北海道・北東北に限定されることではないとする指摘も出ていた[1]。文化審議会からも、全国約9万箇所に縄文遺跡が分布するにもかかわらず、「なぜこの4道県なのか」と疑問が呈されている他、資産を17に絞ったことについても、普遍的価値を「17遺跡で過不足なく説明できているのか」「17遺跡ありきで始まり、普遍的価値を後付けしている印象」と指摘され、さらなる見直しを求められた[12]。2017年8月、4道県等はプロジェクトチームを発足させ、推薦書の改定作業に着手、12月に「集落」の変遷に軸を置いて説明することで顕著な普遍的価値や地域の特異性を明らかにする方向性で見直しを行うことで一致した[13]。「シンボル的な存在」であり、知名度の高い三内丸山遺跡と他の構成遺産では、世界遺産登録の審査の基準の一つである観光客の受け入れ態勢やガイダンス設備の充実の度合いに大きな差があるとされ、登録に向けた課題となっている[14]

推薦書提出に際し、上記の疑問や指摘を是正し、17遺跡で構成される普遍的価値の証明として、「津軽海峡を挟んだ二つの地域に同一の文化圏が形成され、そこに草創期から晩期までの各時代の遺跡が揃っており、特に最古級の土器や漆器が出土している遺跡が含まれていることは重要」「集落跡のみならず、貝塚や墓、信仰や精神世界を表現する環状列石、さらに海岸・湖沼・河川など自然地形の古環境も網羅している事例は全国的にも稀有」「縄文文化を支えたブナ林が関東より西では高地性だが、東北では太平洋・日本海・津軽海峡という三つの海の海岸線にまで達していることで、海の幸と山の幸双方の恵みを同時に享受できたことから独自の生活様式が確立され、それを長期間にわたって継承したことは持続可能性生物多様性を堅持していたことを示している」「世界遺産に求められる完全性として構成資産の全てが文化財保護法での史跡・特別史跡に指定されており、真正性の証明として追加の発掘調査の実施と『総括報告書』が刊行されている」「縄文文化は日本独自のものだが、世界遺産としてはより広域な同時代の文化圏との対比が求められ、先史時代北東アジアを俯瞰し同地域に共通してみられる玦状耳飾が東北北部や北海道のものと国外を含めた他地域と比べ独創性があることを証明する研究が成されている」としたことで文化庁や学術団体の了承を得、加えて「不動産有形財構築物が対象の世界遺産にあって、その完全性を補完する動産としての考古資料(出土遺物)の多くが場域留置の郷土資料館(サイトミュージアム)などとして公開されており、これはユネスコ指針の世界遺産と博物館に沿っている」「2012年に採択された京都ビジョン(世界遺産と持続可能な開発:地域社会の役割)で地域コミュニティの関わりの重要性が確認され、他地域に先駆け世界遺産登録運動を展開したことから、ボランティアガイド清掃活動など老若男女を問わない住民参加型の取り組みが普及している」と補足した[15]。また、三内丸山遺跡において出土したDNAが近似したものばかりであったことから栽培されていた可能性(ボトルネック効果)が高く原始農耕が示唆されているが、さらに栗が自生していなかった北海道側の遺跡でも栗が出土しており植栽技術の伝播があった証明もこの地域ならではで評価される。

一方で、多くの遺跡で行われている竪穴式住居の復元に関して、ユネスコの諮問機関で文化遺産の評価を判断する国際記念物遺跡会議(イコモス)の日本組織が、「考古学遺産管理運営に関する憲章(ローザンヌ憲章)に基づき必ずしも適切とはいえない」と報告していることから[16]、2020年夏頃に行われるイコモスによる現地調査で厳しい指摘をうける可能性が危惧される。

なお、世界遺産登録を視野に入れている特別史跡の尖石遺跡長野県茅野市)などとの連携を模索する動きや[17]、2007年に行われた世界遺産候補地公募に名乗り出た松島の貝塚群(宮城県東松島市)の取り込みなども検討されてきたが、上掲の普遍的価値の証明が確立したことから、北東北以南の縄文遺跡を含めることは整合性が取れなくなることから可能性は排除された。一方で、埋蔵文化財としての考古遺跡はまだ未発見(未発掘)のものが全国にあるとも想定され、定説を覆す発見があれば将来的に普遍的価値の見直しも行わなければならない側面もある。

広報活動編集

2020年東京パラリンピック聖火リレーに用いる聖火の採火を、東京オリ・パラ文化プログラムの一環として全都道府県各地ならではの催事と結びつけることとし、青森県や秋田県では世界遺産登録を目指す縄文遺跡において縄文時代の火熾し法で採火して送り出す[18]

構成資産一覧編集

北海道編集

青森県編集

岩手県編集

秋田県編集

推薦前に候補から外れた資産編集

遺跡の保存状況に問題があるとして以下の2件は2016年に推薦候補から除外された[19]

北海道編集

青森県編集

脚註編集

  1. ^ a b 北海道・北東北縄文遺跡群は世界遺産登録でなぜ2回も予選落ちしたのか財界さっぽろ 2014年9月
  2. ^ 縄文遺跡群見送り 世界遺産推薦へ「全力」尽くせ 陸奥新報 2017年8月2日
  3. ^ 縄文遺跡群 世界遺産に再挑戦 4道県PT発足 /岩手 毎日新聞 2017年8月24日
  4. ^ 縄文遺跡群を推薦=20年の世界遺産候補―文化審 時事通信社Yahoo!ニュース)2018年7月19日
  5. ^ 「奄美・沖縄」を世界自然遺産に推薦へ 菅義偉官房長官表明 産経新聞 2018年11月2日(Yahoo!ニュース)
  6. ^ 令和元年度における世界文化遺産の推薦候補の選定について文化庁、2019年7月30日
  7. ^ 「縄文遺跡群」推薦へ=世界遺産登録目指す―政府 時事通信 2019年12月19日(@niftyニュース
  8. ^ 東京文化財研究所
  9. ^ 縄文遺跡群の推薦書を提出 21年の世界遺産登録目指す共同通信(Yahoo!ニュース)2020年1月16日
  10. ^ 縄文遺跡群の名称変更を議論 共同通信 2019年11月28日
  11. ^ 遺跡群、英語表記「北日本」に 文化庁と地元、世界遺産に推薦で 共同通信 2019年12月19日(Yahoo!ニュース)
  12. ^ 社説:縄文遺跡群 「価値」の説得力強めて 秋田魁新報 2016年8月12日
  13. ^ 世界遺産推薦書案「集落」軸に 北海道・北東北の縄文遺跡群 岩手日報 2017年12月19日
  14. ^ 世界遺産候補、ただの空き地?遺跡にはプレハブ小屋だけ朝日新聞 2019年9月1日
  15. ^ 『「北海道・北東北の縄文遺跡群」世界遺産登録推進フォーラム』(2020年1月25日開催、於:有楽町朝日ホール)レジュメ
  16. ^ 『古建築を復元する 過去と現在の懸け橋』海野聡、吉川弘文館(2017)
  17. ^ <縄文遺跡群>世界遺産へ険しい道のり 河北新報 2016年10月24日
  18. ^ パラ聖火は縄文の火起こしなどで NHK 青森 NEWS WEB 2020年2月6日
    縄文火起こし、伝統行事の火から… パラ聖火の採火に地域色 秋田魁新報 2020年2月7日
  19. ^ 4道県、鷲ノ木など2遺跡除外 保全環境に問題 /北海道毎日新聞 2015年12月29日

関連項目編集

外部リンク編集