北谷菜切

琉球国王尚家に伝来した短刀

北谷菜切(ちゃたんなきり / ちゃたんなーちりー)は、15世紀に作られたとされる日本刀短刀)である。日本国宝に指定されており、沖縄県那覇市にある那覇市歴史博物館所蔵[注釈 1]。文化財指定名称は、「青貝微塵塗腰刀拵 刀身無銘(号 北谷菜切)」。

北谷菜切
指定情報
種別 国宝
名称 青貝微塵塗腰刀拵 刀身無銘(号 北谷菜切)
基本情報
種類 短刀
時代 15世紀
刃長 23 cm
所蔵 那覇市歴史博物館沖縄県那覇市
所有 那覇市
番号 05000085(資料コード)

概要 編集

首里の北方にある北谷の領主が所持していた腰刀とされている[1]。かつて琉球で農婦が赤子を斬殺するという事件が起きた[2]。役人に捕まった農婦は「包丁で切る真似をしただけなのに赤子の首が切れてしまった」と話して殺意がなく無実であると主張した[2]。しかし、この話を信じない役人は試しにその包丁を山羊に向かって切るそぶりで振ってみたところ、本当に山羊の首が切れてしまった[2]。これにより晴れて農婦は赦されて、その包丁は短刀として鍛え直されたことが由来とされている[2]

作風 編集

刀身 編集

刃長(はちょう、刃部分の長さ)は23センチメートル[2]。造込(つくりこみ)[用語 1]は平造り、三ツ棟、反り(切先から鎺元まで直線を引いて直線から棟が一番離れている長さ)がわずかについている[4]。刀身は使い込まれているため大きく摩滅してカミソリ風に鋭く尖っており、刃は切先(きっさき、刃の先端部分)にしか残っていない[2][4]

外装 編集

拵(こしらえ)の全長は46.5センチメートル、鞘は夜光貝を細かな方形に切った螺鈿になっている[4]。柄(つか、日本刀の握る持ち手のところ)は鮫皮のように打ち出した金板を貼っており、金具周りは唐花風蓮華や火焔の様に表現された葉が彫金されており典型的な琉球の造作が為されている[1]

金を着せた小柄(こづか、刀に付属する小刀)、(こうがい、結髪用具)の裏には「天」の字や分銅形・鼓胴形(鼓の胴の形)の記号が彫られている[4][1]。これらの記号は、琉球王府内にあった工房の製作者(もしくは製作グループ)の記号であった可能性が指摘されている[1]

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ 本作の国宝指定は、歴史文書類も加わった「琉球国王尚家関係資料」の一つとしての指定であり、本作単体での文化財指定ではない。

用語解説 編集

  • 作風節のカッコ内解説及び用語解説については、刀剣春秋編集部『日本刀を嗜む』に準拠する。
  1. ^ 「造込」は、刃の付け方や刀身の断面形状の違いなど形状の区分けのことを指す[3]

出典 編集

参考文献 編集

  • 刀剣春秋編集部『日本刀を嗜む』ナツメ社、2016年3月1日。ISBN 978-4816359934NCID BB20942912 
  • 久保智康(編さん)「琉球の金工」『日本の美術』第533号、ぎょうせい、2010年9月11日、ISBN 978-4324087428NCID BN01280010 

関連項目 編集

外部リンク 編集