南海1000系電車 (2代)

南海電気鉄道が保有する通勤形直流電車

南海1000系電車(なんかい1000けいでんしゃ)は、1992年(平成4年)に登場した南海電気鉄道(南海)の一般車両[3]通勤形電車)の一系列である。形式名として、1987年初代1000系が全車廃車となって以来、空番となっていた1000番台を割り当てられた。本項では、難波方先頭車の車両番号+F(Formation=編成の略)を編成名として表記する。

南海1000系電車(2代)
南海電気鉄道1000系5次車
(2005年11月3日 南海本線 天下茶屋駅
基本情報
製造所 東急車輛製造
主要諸元
編成 6両(10編成)、4両(1編成・50番台)、2両(6編成)
軌間 1,067 mm
電気方式 直流1500V 架空電車線方式
最高運転速度 本線空港線:110 km/h
高野線泉北高速線:100 km/h
設計最高速度 120 km/h
起動加速度 2.5 km/h/s
減速度(常用) 3.7 km/h/s
減速度(非常) 4.0 km/h/s
編成定員 588名
全幅 1次車:2,744 mm
2-6次車:2,850 mm
車体 ステンレス
主電動機 かご形三相誘導電動機
1次車:MB-5046-A
2-5次車:MB-5046-A2[1]
6次車:MB-5091-A[2]
主電動機出力 180 kW
駆動方式 WNドライブ
歯車比 7.07 (99:14)
編成出力 720 kW(2両編成)
1,440 kW(4両編成)
2,160 kW(6両編成)
制御方式 1C4MVVVFインバータ制御
1-5次車:GTOサイリスタ素子
6次車:IGBT素子
制御装置 日立製作所
1-5次車:VFG-HR1420F
6次車:VFI-HR1420G[2]
制動装置 回生制動遅れ込め制御)併用電気指令式ブレーキ
全電気ブレーキ追加(50番台)
保安装置 南海型ATS
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概要

南海線用4扉通勤車である9000系の後継系列として、高野線大運転2000系で導入された新技術を採り入れつつ、1994年関西新空港開業を見据えた南海グループ全体の新CI戦略に従う新しいデザインを盛り込んだ、南海線・高野線の双方で共通運用可能[注 1]なハイグレードな次世代汎用通勤車として設計され、1992年より合計76両が東急車輛製造で製造された。

本系列は新造の度に機会を捉えて様々な改良が加えられており、1次車、2 - 5次車、6次車(50番台)の3グループに大別される。

形式

  • モハ1001形(Mc)
1 - 5次車の難波方先頭に連結される制御電動車下枠交差型パンタグラフとVVVFインバータ制御装置(以下「制御装置」)を搭載する。2両編成では30番台を付番される。
  • モハ1051形(Mc)
6次車に連結される制御電動車。シングルアーム型パンタグラフと制御装置を搭載する。
  • サハ1801形(T2)
1 - 5次車に連結される付随車交流駆動の空気圧縮機と静止形DC-DCコンバータインバータを搭載する。
  • サハ1851形(T2)
6次車に連結される付随車。交流駆動の空気圧縮機と静止形インバータを搭載する。
  • モハ1301形(M2)
1 - 5次車に連結される電動車。下枠交差型パンタグラフと制御装置を搭載する。
  • サハ1601形(T1)
1 - 5次車に連結される付随車。直流駆動の空気圧縮機と静止形DC-DCコンバータ/インバータを搭載する。
  • モハ1101形(M1)
1 - 5次車に連結される電動車。制御装置を搭載する。
  • モハ1151形(M1)
6次車に連結される電動車。制御装置を搭載する。
  • クハ1501形(Tc)
1 - 5次車の6両編成で関西空港和歌山市橋本方先頭に連結される制御車
  • クハ1701形(Tc2)
1 - 5次車の2両編成に連結される制御車。交流駆動の空気圧縮機と静止形DC-DCコンバータ/インバータを搭載する。
  • クハ1751形(Tc)
6次車に連結される制御車。交流駆動の空気圧縮機と静止形インバータを搭載する。

車体

2000系で初採用された有限要素法によって設計された20m級軽量構造ステンレス車体を採用するが、外板はひずみを避けるべく、板厚を増してビードを廃した平滑な仕上げとなっている。

車体断面は1次車は従来どおり2,744mm幅であったが、2次車以降は空港線開業に伴う車両限界の変更で裾絞りが入った2,850mm幅の大断面車体となった[1]

窓配置はdD2D2D2D1(d:乗務員扉、D:客用扉)あるいは1D2D2D2D1で、戸袋窓のない幅1,300mmの両開き扉を備える。

前頭部は工作の容易性などを考慮して2000系と同様、FRP製の縁覆いを使用するが、平面的な構成であった2000系と異なり、上部が曲面を描いて後退し貫通扉部も上方が傾斜する、スピード感を強調したデザインとされている[注 2]

前照灯標識灯は横並びで一体型のケースに収められたものが前面左右の腰板部に組み込まれており、標識灯はLEDを使用する。

南海では長らくライトグリーンとダークグリーンの塗色(南海グリーン)が一般的であったが、前述のとおり南海グループ全体の新CI戦略展開に伴い、1000系においてはブルーオレンジのニューカラーが採用されたのが特徴である。

この新カラースキームは在来の9000系6200系などのステンレス車や7100系21000系などの鋼製車に対して適用され、高野線の特急「こうや」用30000系と廃車時期が迫っていた1521系1201形を除く全車が塗色変更された。

なお1 - 5次車は、ベースカラーとして車体全体をグレーに塗装しているが、これは全面塗装を行ったステンレス車として大手私鉄では初の事例となった[注 3]。6次車では無塗装に変更されている[4]

接客設備

座席は従来どおりロングシートを基本とするが、車端部のみはボックス式クロスシートを設置しており、いずれも新設計のバケットシートを採用して1人分ずつ区切った構造の座席とされ、着席マナー向上を誘導するデザインとなっている。

従来の南海では特急形車両も含め、座席にはワインレッドのモケットを使用していたが、11000系と本系列からはグレーを採用した。4次車以降では、紺色に近似した濃いグレーに変更されている[5][注 4]

2000系に続き、南海線の一般車としては11001系(後の初代1000系)以来久々となるアクリル蛍光灯カバーが復活している。天井中央には整風板を車体全長にわたって連続配置し、冷房効果を高めるためラインデリアを従来より増設の上、内蔵させている。

1 - 5次車の扉上部には当初、マップ式停車駅表示器およびフリーパターン式LED案内表示器がセットで千鳥設置されていたが、6次車ではマップ式停車駅表示器が廃止され、LED案内表示器のみに簡素化された[4]。のちに1 - 5次車についてもマップ式停車駅表示器を紙製の路線図で塞ぎ、使用を停止している。

6次車では座席端部にスタンションポールが追加されるとともに、ドアチャイム開扉誘導鈴・扉開閉警告ランプが搭載された[4][注 5]

冷房装置は1 - 5次車ではインバータ制御方式を採用し、冷凍能力14,000kcal/hの東芝RPU-4014を各車3基ずつ搭載する。

これに対し6次車では、DC-DCコンバータ方式による直流330V出力を廃止したことから、稼働率制御方式のRPU-4011A(冷凍能力13,000kcal/h)を同数搭載している[5]

いずれも連続したクーラーキセをかぶせることで外観上一体化させている。

主要機器

制御装置

1 - 5次車は日立製作所のVVVFインバータ装置VFG-HR1420Fを各電動車に搭載する。当時一般的であった耐圧4500V・2500AGTO素子をスイッチング素子として使用し、1基の制御装置で4基の主電動機を制御する。

これに対し6次車では、2レベルIGBT素子を使用した日立製作所のVFI-HR1420G[2](3300V/1200A)に変更されており、トルク電流を高速・高精度に制御できるベクトル制御を採用している[4]。これにより全電気ブレーキに対応したほか、静粛性も大幅に向上している。

主電動機

各電動車が三菱電機かご形三相交流誘導電動機を4基ずつ装架する。1次車はMB-5046-A[注 6]、2 - 5次車は回転子端板の溶接構造と固定子ワタリ線の固定方法を変更したMB-5046-A2[1]、6次車は軽量フレーム方式固定子構造を採用し冷却効果の向上を図ったMB-5091-A[2][4]をそれぞれ搭載する。いずれも定格出力は180kWである。

駆動システムはWNドライブ方式で、TDカルダンドライブを採用した2000系と異なる。歯数比は99:14(7.07)で、設計上120km/h運転可能な性能を備える。

集電装置

パンタグラフは、1 - 5次車は従来どおり下枠交差式の東洋電機製造PT-4826-A-M、6次車はシングルアーム式の東洋電機製造PT-7144-A[2]をそれぞれ搭載する。

補助電源装置

1 - 5次車は絶縁形GTOコンバータ/トランジスタインバータ装置を採用している。システムはDC-DCコンバータ部とインバータ部で構成され、コンバータ部で直流1500Vから安定した直流330Vを出力、インバータ部で直流330Vを三相交流220Vに変換する。空調装置には直流330Vを給電し、インバータ制御を行っている[注 7]

T2車(サハ1801形)・Tc2車(クハ1701形)に2両分負担の75kVA級、T1車(サハ1601形)に4両分負担の140kVA級をそれぞれ搭載する。

6次車ではIGBT素子を使用した静止形インバータに変更されており、T2車(サハ1851形)とTc車(クハ1751形)に1基ずつ搭載する[4]

台車

 
モハ1101が装着するSUミンデン式の住友金属SS127形台車

全車とも軽量化を目的として住友金属工業ボルスタレス台車を装着する。ただし1・2次車、3 - 5次車、6次車で台車枠構造や軸箱支持方式が異なる。

1・2次車は2枚の板ばねで軸箱を支持する平行支持板式(SU式)のSS-127(電動車)・027(付随車)、3 - 5次車は同じくSU式で横梁構造を改良したSS-127A(電動車)・027A(付随車)[7]、6次車は軸箱支持方式をモノリンク式としたSS-159(電動車)・059(付随車)[4]をそれぞれ装備している。

ブレーキ

9000系の三菱電機MBS-Rを基本としつつ、電動車の回生制動能力を有効活用する遅れ込め方式を採用した、MBSA電気指令式電磁直通ブレーキが採用されている。

抑速ブレーキは9000系と同様のバランス速度特性を持たせており、抑速ブレーキ中に回生失効した場合は自動的に空気ブレーキに切り替わる。南海線と高野線では必要とされる抑速ブレーキ性能が異なることから、転属時には制御装置内の切換スイッチを使用し各ノッチに対応する抑速バランス速度の設定を変更する[1][8]

次車別解説

1次車

 
1次車
  • 2023年9月現在、全車(6両編成3本、2両編成3本)が南海本線に在籍する。
  • 編成ごとの移動歴は以下のとおりである。
    • 1001F:1992年7月[9] -(南海本線)- 1995年8月[10] -(高野線)- 2018年5月[11] - 現在まで南海本線
    • 1002F:1992年7月[9] -(南海本線)- 1994年5月[10] -(高野線)- 2022年3月[12] - 現在まで南海本線
    • 1003F:1992年11月[9] -(高野線[注 8])- 2003年6月[15] -(南海本線)- 2006年4月 -(高野線)- 2006年6月 -(南海本線)- 2009年5月[16] -(高野線)- 2009年10月[16] -(南海本線)- 2012年10月[17] -(高野線)- 2015年7月[18] -(南海本線)- 2016年2月 -(高野線)- 2016年3月 - 現在まで南海本線
    • 1031F:1992年7月[9] -(南海本線)- 2012年10月[17] -(高野線)- 2015年6月[18] - 現在まで南海本線
    • 1032F:1992年7月[9] -(南海本線)- 1994年5月[10] -(高野線)- 2003年6月[15] -(南海本線)- 2005年10月[19] -(高野線)- 2021年10月[12] - 現在まで南海本線
    • 1033F:1992年11月[9] -(高野線[注 8])- 2003年6月[15] - (南海本線) - 2009年8月[16] -(高野線)- 2009年11月[16] -(南海本線)- 2012年10月[17] -(高野線)- 2015年6月[18] - 現在まで南海本線
  • 列車種別選別装置は竣工当初、更新準備工事にとどまっていた[20]
  • 2次車以降の車体拡幅車と連結した場合、列車後方から車体幅の狭い1次車2両編成の車側灯が確認しづらいという問題があったことから、2両編成を対象に車側灯の台座が嵩上げされ、拡幅車に位置を揃えられている[1][8][注 9]

2 - 5次車

 
2次車
  • 1994年(平成6年)登場。2000年(平成12年)まで増備された。
  • 2023年9月現在、全車(6両編成7本、2両編成3本)が南海本線に在籍する。
  • 主に南海本線に配置されてきた。1004F・1034Fが2013年4月から2015年5月まで[21][18]、1005Fが2014年7月中に約1週間程、それぞれ高野線に在籍していた。
  • このグループからCI導入に準拠し先頭車のロゴタイプが変更され、さらに使用されなくなった旧社章に代わってCI章が採用された[1][注 10]
  • 列車種別選別装置は最初から、車上子⇔地上子双方向の高速デジタル伝送を可能としたトランスポンダ方式を採用した[1]
  • 2・3次車と4・5次車の相違点は、ATS車上子の取付位置を変更した程度に留まる[8]
  • 5次車の先頭台車には増粘着剤噴射装置を設置している[5]

6次車(50番台)

 
6次車(50番台)
  • 2001年(平成13年)登場。
  • 1051Fの4両編成1本のみ在籍。
  • 新製時より長らく南海本線で運行されていたが、2018年5月に高野線へ転属した[11]
  • バリアフリー法」の施行に伴い、バリアフリー対応としてドアチャイム・開扉誘導鈴・扉開閉警告ランプ・転落防止幌が設置された[22]
  • 車端部に設置されているボックスシートのシートピッチを100mm拡大し565mmとした[4]
  • 運転席のデジタル表示が従来のアナログ表示に戻されている[4]
  • T2車(サハ1851形)とTc車(クハ1751形)には、スキッド時のフラット発生を制御するため、滑走の検知と再粘着制御を行うファインスキッド制御装置を搭載している[4]
  • 1851号車にレールオイラー(軌条塗油器)が設置された[4]。ただし同一路線を走行する他系列が代わりに装備した場合は、必要に応じて撤去を行う[5]

改造工事

インバウンド対応工事

 
1004F インバウンド対応施工後

急増する訪日外国人旅行客の利用に対応するため、インバウンド対応工事が2017年より開始された[23]。初の竣工車となった1004Fは同年5月に営業運転に復帰した[24]2020年3月までに1 - 5次車の全編成が工事を終えている[23]

改造内容は以下の通りである。

  • 前面および側面の種別・行先表示器をフルカラーLEDに変更(漢字・ひらがなの他、英語中国語韓国語を表示)
  • 車内案内表示器を8300系と同型の4ヶ国語対応LCDに換装
  • 自動放送装置の設置

前照灯LED化

 
前照灯がLED化された1051F
(2018年8月 岸里玉出駅

2018年3月より順次、前照灯がシールドビームからLED電球に交換された[25][26]。2019年7月までに全車への改造が完了している。

今後の改造計画

2024年度から床下機器のリニューアル工事が実施される[27]

車体ラッピング

当系列の6両編成の一部はラッピング電車として運用されている。

南海グループPR列車

2003年開業の難波駅前大型商業施設「なんばパークス」をイメージしたラッピングが、当時高野線所属の1001F・南海本線の1003Fにそれぞれ施された[15]。1001Fは2010年2月[28]、1003Fは2008年7月に一般塗装へ戻された。

南海が扱うPiTaPaサービス「minapita」のラッピングが、高野線の1002F・南海本線の1010Fにそれぞれ施された[29]。1002Fは2013年3月[30]、1010Fは2010年8月[30]に一般塗装へ戻された。

2009年2月から数年間、みさき公園の新イルカ館をイメージしたラッピングが、南海本線の1009Fに施された[31]

  • 「ハニワ駅長」ラッピング

2019年7月9日に、南海沿線に点在する百舌鳥古墳群ユネスコ世界文化遺産に登録されたことを記念し、大阪府堺市の百舌鳥・古市古墳群PRキャラクターである「ハニワ課長」と、南海電鉄のタイアップキャラクター「南海ハニワ駅長」をモチーフにしたラッピングが南海本線の1003Fに施された。車両側面にはPRメッセージ、堺の伝統産業や伝統文化である茶の湯や和菓子、堺打刃物、注染和ざらし、お香などをハニワ駅長が体験している姿のイラスト等が描かれていた[32]

7月20日には、難波駅で運行開始記念セレモニーが開催され、難波 - 三国ヶ丘間のツアー団体列車としてラッピング列車が高野線を走行した[33]

2021年7月26日から12月末までの予定で、「南海電車」と「すみっコぐらし」がコラボレーションし、車体全体にキャラクターたちが描かれた車両が運行された。ラッピングは高野線の1002Fに行われ、1号車は高野山、2号車は古墳、3・4号車は和歌山、5号車は住吉大社、6号車は南海の海を表現したイラストとなっていた[34][35]

広告列車

2005年頃、高野線の1002Fに施された。

2007年12月から2009年7月中旬まで、南海本線の1005Fに施された[36]

2019年3月から、ヤクルト公式キャラクターがデザインされた側面ラッピングが高野線の1002Fに施された。なお、期間中に1002Fを対象とするインバウンド対応工事が施工されたが、ラッピングは現状維持となった。しかし2020年10月頃の全般検査後はラッピングが剥がされての出場となった。

2020年9月から、りんくうプレミアム・アウトレットのシーサイドエリアがオープンしたことを告知するため、1006Fにラッピングが施された[37]。なお2021年4月16日頃にラッピングは剥がされている。

主な転属歴

本系列は両線共通仕様車であるため、車両需給に応じて転属・貸出が行われてきた。2023年9月現在までの主な転属歴は以下の通りとなっている。

  • 1994年5月、空港線開業に向け2次車(1004F - 1006F・1034F・1035F)が南海本線へ集中投入されたのに伴い、1002F・1032Fが南海本線から高野線に転属した[8][10]
  • 1995年8月、南海本線への3次車(1007F・1036F)増備により、1001Fが南海本線から高野線に転属した[8][10]。翌月に控えた橋本駅までの複線化開業に伴う高野線ダイヤ改正での運用増に備えたものである。これにより南海本線に所属する1次車は一時的に1031Fのみとなった。
  • 2003年6月、前月末の高野線ダイヤ改正での運用減に伴い、1003F・1032F・1033Fが高野線から南海本線に転属した[15]。これにより7100系1次車が全廃された。
  • 2005年10月、月末の高野線白紙ダイヤ改正で20m車の運用が増加するのに備え、1032Fが南海本線から高野線に転属した[19]
  • 2009年5月以降、1003F・1033Fが南海本線から高野線に転属した。これにより6200系6511F・6100系6107Fの長期入場に伴う車両不足を補った。6107Fが台車置換え工事を終え6300系6314Fとして出場、また6511Fが更新工事(VVVF化)を完了したため、1003F・1033Fは11月までに南海本線へ復帰した[38][16]
  • 2012年10月、8200系の更新工事(VVVF化)や新型ATS(ATS-PN)導入に伴う高野線各車両の車上装置更新による車両不足対策のため、1003F・1031F・1033Fが南海本線から高野線へ転属[30][17]、翌2013年4月には1004F・1034Fも転属し、2次車(拡幅車)が高野線でも運用されるようになった[21][39]。2014年7月、1004Fが不具合を起こした際には1005Fがごく短期間だけ高野線に貸し出されたが、1004Fの運用復帰に合わせて南海本線に戻っている。1003F・1004F・1031F・1033F・1034Fも2015年5月から7月までに南海本線へ復帰し[18]7000系の置き換えに充てられた。
  • 2018年5月、1001Fが高野線から南海本線に、1051Fが南海本線から高野線にそれぞれ転属した[11][40][41]。1001Fが南海本線所属となるのは23年ぶり、1051Fが高野線に所属するのはこれが初となった。
  • 2021年10月、高野線の車両運用上の自由度を向上させるため、高野線所属の1032Fと南海本線所属の8300系8712Fを交換、2022年3月にも同様に、高野線所属の1002Fと南海本線所属の8310F・8711Fがそれぞれ交換配置された[12]。これにより1 - 5次車の全車が南海本線に在籍することになった。

運用

南海本線

 
普通車の運用に入る1001F(二色浜駅)

6両基本編成は単独で普通車から急行まで幅広く用いられる。

2両増結編成は2本繋いだ4両編成で普通車、3本繋いだ6両編成で普通車から急行までの各種別に充当される。 かつては8000系や8300系4両との併結運転を行っていたが、前述のインバウンド対応工事により他系列との併結は実施されなくなった[23][注 11]

基本6両と増結2両を併結した8両編成の運用実績は南海本線では少なく、営業運転開始直後と、近年では2010年2月・同年4月・2018年6月の僅かな回数に留まっている。

  • 2010年2月、1007Fが和歌山市寄りに2両を併結して8両編成となった[38]。これに伴い、難波方から4両目にあたる1607号車の車体側面に女性専用車両ステッカーが貼り付けられた。同編成は4月にも8両編成を組んだ[38]
  • 高野線から転入直後の1001Fが、2018年6月中のみ8両編成となった[42]

これ以降、他の6両編成のサハ1601形にも同ステッカーが貼り付けられたものの、依然として8両編成(女性専用車両)の運用は他系列によって賄われている。

2001年に竣工した1051Fは、登場後暫くは単独の4両編成で普通車の運用のみに充当されていたが、2002年の年末から2両増結編成と併結した6両編成での運行が開始された[22][43][注 12]。長らく南海本線で運用されていたが、2018年5月に高野線へ転属している[11]

なお1次車は1992年7月のデビューから1993年4月のダイヤ改正まで、難波駅 - 多奈川駅間で運行されていた淡路島航路連絡の急行「淡路号」の運用に充当され、多奈川線へ直通運転した実績がある[44]

高野線

 
1051Fに8300系を併結した8両編成

本系列は20m級車両であるため、高野線難波駅 - 橋本駅間の区間運転に使用される。また泉北高速線への直通列車にも運用される。

6両と2両を併結した8両編成、4両(1051F)と8300系4両を併結した8両編成、6両編成単独、または4両と2両を併結した6両編成で、各駅停車[注 13]から快速急行まで、区間運転の各種別に幅広く用いられている。なお6000系列で行われていた10両編成での運転は、当系列では実績がない。4両編成の各駅停車は、1051F単独での運行である。2両編成は原則、基本編成の増結専用となっていた[注 14]

2003年以降、2両編成の配置がなくなり6両編成の単独運用のみとなったため、女性専用車両が導入された当初は設定の対象外となっていたが、2005年のダイヤ改正で1032Fが南海本線から転属し[19]、本系列による8両編成での運転が可能となったため、1001F・1002Fのサハ1601形が女性専用車両に設定された。

2018年5月には1001Fと入れ替わりで、1051Fが高野線所属となった[11]。暫くは1032Fを併結した6両編成で運用されたが、2019年の8300系6次車投入後は主に8300系4両と併結した8両編成で運転されている[46]。このため、1751号車に女性専用車両ステッカーが貼り付けられた。

2022年3月までに1032Fと1002Fが南海本線に転属した[12]ため、2023年9月現在、高野線に所属する本系列は1051Fのみとなっている。

編成表

(2023年9月現在)

6両基本編成10本と2両増結編成6本、4両固定編成1本が在籍する。そのうち、南海本線には6両編成10本と2両編成6本の計72両、高野線には4両編成1本4両が所属する。

6両編成

 
← 難波
関西空港・和歌山市・橋本・和泉中央 →
       
形式 ◆  ◆
モハ1001
(Mc)

サハ1801
(T2)
◆  ◆
モハ1301
(M2)

サハ1601
(T1)

モハ1101
(M1)

クハ1501
(Tc)
所属線区 竣工[47] 仕様 改造
機器類 CONT DC, CP CONT DC, CP CONT
車両番号 1001 1801 1301 1601 1101 1501 南海本線 1992年2月24日 1次車 インバウンド対応
前照灯LED化
1002 1802 1302 1602 1102 1502 1992年3月9日
1003 1803 1303 1603 1103 1503 1992年3月30日
1004 1804 1304 1604 1104 1504 1994年2月1日 2次車
1005 1805 1305 1605 1105 1505 1994年4月2日
1006 1806 1306 1606 1106 1506 1994年4月2日
1007 1807 1307 1607 1107 1507 1995年8月23日 3次車
1008 1808 1308 1608 1108 1508 1998年8月14日 4次車
1009 1809 1309 1609 1109 1509 1999年10月26日 5次車
1010 1810 1310 1610 1110 1510 2000年4月11日
備考 弱冷車 女性専用車両
ステッカー

4両編成

 
← 難波
橋本・和泉中央 →
       
形式 <  >
モハ1051
(Mc)

サハ1851
(T2)

モハ1151
(M1)

クハ1751
(Tc)
所属線区 竣工[47] 仕様 改造
機器類 CONT SIV, CP CONT SIV, CP
車両番号 1051 1851 1151 1751 高野線 2001年11月30日 6次車 前照灯LED化
備考 弱冷車 女性専用車両
ステッカー

2両編成

 
← 難波/
関西空港・和歌山市・橋本・和泉中央 →
       
形式 ◆  ◆
モハ1001
(Mc)

クハ1701
(Tc2)
所属線区 竣工[47] 仕様 改造
機器類 CONT DC, CP
車両番号 1031 1701 南海本線 1992年2月24日 1次車 インバウンド対応
前照灯LED化
1032 1702 1992年3月9日
1033 1703 1992年3月30日
1034 1704 1994年2月1日 2次車
1035 1705 1994年4月2日
1036 1706 1995年7月1日 3次車
凡例
  • CONT:VVVFインバータ制御器
  • DC:静止形DC-DCコンバータ/インバータ
  • SIV:静止形インバータ
  • CP:空気圧縮機

参考文献

  • 南海電鉄車両部車両課「新車ガイド3 南海電鉄1000系通勤形電車」『鉄道ファン』1992年8月号(通巻376号)、交友社、1992年、123-127頁。
  • 南海電気鉄道(株)鉄道営業本部車両部車両課 萬吉人「南海電気鉄道1000系6次車」『鉄道ピクトリアル』2002年10月臨時増刊号(通巻723号 鉄道車両年鑑2002年版)、電気車研究会、2002年、150-151頁。

脚注

注釈

  1. ^ 7100系の初期車が一時的に(6100系の落成が遅れたため)高野線で用いられたことはあったが、当初から南海本線・高野線の双方で運用することを念頭に置いた車両は本系列が初となる。後に、2007年からは2000系、2019年からは8300系も南海本線・高野線双方で運用するようになった。
  2. ^ この傾斜した貫通扉の開戸装置について、南海電鉄と東急車輛製造は実用新案として特許庁に出願しており、実開平05-084559として公開されている。
  3. ^ 2017年に京急1000形17次車が採用するまで唯一だった。
  4. ^ 近年、グレーのモケットは8300系と同じ茶色のチェック柄(優先座席は青色)に張り替えられている[6]
  5. ^ 先に増備された5次車ではドアチャイム・開扉誘導鈴を準備工事としているが、現在まで使用されていない[5]
  6. ^ 端子電圧 1100 V・同期周波数 73 Hz 時、定格出力 180 kW、回転数 2,130 (A) / 2140 (A2) rpm
  7. ^ 各車両の床下に搭載する冷暖房制御箱に、空調専用のVVVFインバータ装置を内蔵する。前述の冷房装置のほか、暖房設備を含めて制御するもので、11000系と同等の装備である。
  8. ^ a b 登場時は南海本線仕様であった[13]が、同時期の高野線ダイヤ改正にて急行が金剛駅への停車を開始し混雑緩和が必要となったため、高野線に配備された[14]
  9. ^ 当初は南海本線に取り残された1031Fのみに施工されたが、のちに1032F・1033Fにも波及した。
  10. ^ これは1993年10月以降に定期検査などを出場した既存車両にも引き継がれた。
  11. ^ 同工事が施工される前は12000系との併結も設計上可能だったが、特急「サザン」の自由席車として使用された実績はない。また9000系は本系列登場後に併結対応改造を行ったが、こちらとも併結しての営業運転は現在まで行われていない。
  12. ^ 2005年頃より6両編成での運用が日常化した。同年時点の南海本線配置の2両編成が5本体制となり、これらが4両編成を組むと1本余るためである。しかし8000系全ての製造分が出揃った2014年頃からは、2両増結編成の大半が8000系との併結運用に充当されるようになったため、その後は4両編成での単独運転がほとんどであった。
  13. ^ 8両編成の各駅停車は河内長野駅 - 橋本駅間運転の一部列車、泉北高速線内で運転される。
  14. ^ 1031Fが南海本線へ転属するまでの期間、稀に2両編成を2本併結した4両編成でも運行された[45]

出典

  1. ^ a b c d e f g 「私鉄車両めぐり〔153〕南海電気鉄道」『鉄道ピクトリアル』1995年12月臨時増刊号(通巻615号)、電気車研究会、1995年、240-242頁。
  2. ^ a b c d e 「南海電気鉄道 現有車両主要諸元表」『鉄道ピクトリアル』2008年8月臨時増刊号(通巻807号)、電気車研究会、2008年、272-273頁。
  3. ^ 現在の車両 - 鉄道博物館 - 南海電気鉄道
  4. ^ a b c d e f g h i j k 南海電気鉄道(株)鉄道営業本部車両部車両課 萬吉人「南海電気鉄道1000系6次車」『鉄道ピクトリアル』2002年10月臨時増刊号(通巻723号 鉄道車両年鑑2002年版)、電気車研究会、2002年、150-151頁。
  5. ^ a b c d e 「南海電気鉄道 現有車両プロフィール2008」『鉄道ピクトリアル』2008年8月臨時増刊号(通巻807号)、電気車研究会、2008年、259-261頁。
  6. ^ 柴田東吾『大手私鉄サイドビュー図鑑12 南海電鉄』イカロス出版、2023年、10頁。
  7. ^ 藤井信夫『車両発達史シリーズ 6 南海電気鉄道 下巻』関西鉄道研究会、1998年12月、174頁。
  8. ^ a b c d e 藤井信夫『車両発達史シリーズ 6 南海電気鉄道 下巻』関西鉄道研究会、1998年12月、124-125頁。
  9. ^ a b c d e f 南海電気鉄道株式会社『南海二世紀に入って十年の歩み』1995年、109頁。
  10. ^ a b c d e 「南海電気鉄道車両履歴表」『鉄道ピクトリアル』1995年12月臨時増刊号(通巻615号)、電気車研究会、1995年、264頁。
  11. ^ a b c d e 「大手私鉄車両ファイル2019 車両データバンク」『鉄道ファン』2019年8月号(通巻700号)特別付録、交友社、2019年。
  12. ^ a b c d 「大手私鉄車両ファイル2022 車両データバンク」『鉄道ファン』2022年8月号(通巻736号)特別付録、交友社、2022年。
  13. ^ 「南海電気鉄道ダイヤ改正」『鉄道ファン』1992年10月号(通巻378号)、交友社、1992年、105頁。
  14. ^ 南海電気鉄道(編)「1000系 解説」『南海電鉄車両大全第1巻(チョッパー&VVVF制御車)』2017年、3-4頁。
  15. ^ a b c d e 「NEWS 南海だより」『関西の鉄道』2004年新春号(通巻46号)、関西鉄道研究会、2004年、90頁。
  16. ^ a b c d e 「大手私鉄車両ファイル2010 車両データバンク」『鉄道ファン』2010年9月号(通巻593号)特別付録、交友社、2010年。
  17. ^ a b c d 「大手私鉄車両ファイル2013 車両データバンク」『鉄道ファン』2013年8月号(通巻628号)特別付録、交友社、2013年。
  18. ^ a b c d e 「大手私鉄車両ファイル2016 車両データバンク」『鉄道ファン』2016年8月号(通巻664号)特別付録、交友社、2016年。
  19. ^ a b c 「大手私鉄車両ファイル2006 車両データバンク」『鉄道ファン』2006年10月号(通巻546号)特別付録、交友社、2006年。
  20. ^ 「私鉄車両めぐり〔153〕南海電気鉄道」『鉄道ピクトリアル』1995年12月臨時増刊号(通巻615号)、電気車研究会、1995年、215頁。
  21. ^ a b 「大手私鉄車両ファイル2014 車両データバンク」『鉄道ファン』2014年8月号(通巻640号)特別付録、交友社、2014年。
  22. ^ a b 「車両総説」『鉄道ピクトリアル』2008年8月臨時増刊号(通巻807号)、電気車研究会、2008年、46頁。 
  23. ^ a b c 「車両総説」『鉄道ピクトリアル』2023年10月臨時増刊号(通巻1017号)、電気車研究会、2023年、56頁。
  24. ^ “【南海】1000系1004編成 営業運転に復帰”. 鉄道ホビダス (ネコ・パブリッシング). (2017年6月1日). https://rail.hobidas.com/rmnews/254316/ 
  25. ^ 「車両総説」『鉄道ピクトリアル』2023年10月臨時増刊号(通巻1017号)、電気車研究会、2023年、51頁。
  26. ^ “南海1000系1051編成の前照灯がLEDに”. 鉄道ファン. railf.jp 鉄道ニュース (交友社). (2018年8月13日). https://railf.jp/news/2018/08/13/180000.html 
  27. ^ 南海電気鉄道株式会社における運賃改定申請について”. 国土交通省. 2023年2月4日閲覧。
  28. ^ 「カラーニュース 南海の話題」『関西の鉄道』2010年新緑号(通巻58号)、関西鉄道研究会、2010年、90頁。
  29. ^ 「NEWS 南海だより」『関西の鉄道』2007年新春号(通巻52号)、関西鉄道研究会、2007年、94頁。
  30. ^ a b c 「NEWS 南海だより」『関西の鉄道』2013年爽秋号(通巻62号)、関西鉄道研究会、2013年、95-96頁。
  31. ^ 「カラーニュース 南海の話題」『関西の鉄道』2009年爽秋号(通巻57号)、関西鉄道研究会、2009年、91頁。
  32. ^ ラッピング列車運行開始記念セレモニーを開催” (PDF). 南海電鉄 (2019年7月9日). 2019年7月22日閲覧。
  33. ^ 南海1000系古墳ラッピング車による団臨運転”. 鉄道ファン. 交友社 (2019年7月21日). 2019年7月22日閲覧。
  34. ^ 「南海沿線なんかいいね すみっコぐらしめぐりたいキャンペーン」7月22日(木・祝)から実施』(PDF)(プレスリリース)南海電気鉄道、2021年7月7日https://www.nankai.co.jp/library/company/news/pdf/210707.pdf2021年11月15日閲覧 
  35. ^ 南海、 すみっコぐらしラッピング電車運転開始”. 鉄道ホビダス. ネコ・パブリッシング (2021年7月30日). 2023年12月25日閲覧。
  36. ^ 「カラーニュース 南海の話題」『関西の鉄道』2008年陽春号(通巻54号)、関西鉄道研究会、2008年、87頁。
  37. ^ 南海で「りんくうプレミアム・アウトレット SEA SIDE AREA OPEN」PRラッピング電車の運転開始”. 鉄道ファン. 交友社 (2020年9月5日). 2023年12月25日閲覧。
  38. ^ a b c 「NEWS 南海だより」『関西の鉄道』2010年新緑号(通巻58号)、関西鉄道研究会、2010年、99頁。
  39. ^ “南海1000系1004編成が高野線で運用される”. 鉄道ファン. railf.jp 鉄道ニュース (交友社). (2013年4月9日). https://railf.jp/news/2013/04/09/150000.html 
  40. ^ “南海1001編成が南海本線を走行”. 鉄道ファン. railf.jp 鉄道ニュース (交友社). (2018年5月27日). https://railf.jp/news/2018/05/27/202500.html 
  41. ^ “南海1000系1051編成が高野線へ転属”. 鉄道ファン. railf.jp 鉄道ニュース (交友社). (2018年5月27日). https://railf.jp/news/2018/06/11/120000.html 
  42. ^ “南海1000系が南海本線にて8両編成で運転される”. 鉄道ファン. railf.jp 鉄道ニュース (交友社). (2018年6月15日). https://railf.jp/news/2018/06/15/140000.html 
  43. ^ 「NEWS 南海だより」『関西の鉄道』2003年初夏号(通巻45号)、関西鉄道研究会、2003年、96頁。
  44. ^ 寺本光照『南海電鉄沿線アルバム 昭和〜平成』アルファベータブックス、2021年、24頁。
  45. ^ 「カラーニュース 南海の話題」『関西の鉄道』2015年陽春号(通巻63号)、関西鉄道研究会、2015年、91頁。
  46. ^ “南海1000系1051編成と8300系8315編成が併結して運転される”. 鉄道ファン. railf.jp 鉄道ニュース (交友社). (2020年1月18日). https://railf.jp/news/2020/01/18/194500.html 
  47. ^ a b c 「南海電気鉄道 車両履歴表」『鉄道ピクトリアル』2008年8月臨時増刊号(通巻807号)、電気車研究会、2008年、278頁。