反復唾液嚥下テスト(はんぷくだえきえんげテスト、Repetitive saliva swallowing test:RSST)は嚥下障害に対するスクリーニングテストの一つ。甲状軟骨を触知した状態で30秒間に何回空嚥下ができるかを測定し、3回未満を陽性と判断する[1]

歴史 編集

摂食・燕下障害診断には嚥下造影嚥下内視鏡が用いられるが、これらは患者への負担が大きな検査である。このため、容易に機能的嚥下障害のスクリーニングを行う方法が必要とされてきた。才藤栄一小口和代らは安全かつ簡便に行えるスクリーニングテストの開発を行い、2000年頃より報告した[2][3]。現在では最も一般的なスクリーニングテストの一つとなっている。

疫学 編集

健常な高齢者が3回の空嚥下を行うのにかかる時間が11.4±6.4秒であり、このスクリーニングテストでは平均値+3SDの30秒をカットオフに用いている[1][2]嚥下造影による誤嚥の評価と比較し、感度0.80~0.98、特異度0.54~0.66と報告されている[3]

長所 編集

簡便であること、安全性が高いこと、どこでも検査が可能であることなどが挙げられている[1]

短所 編集

認知機能に問題がある場合(認知症など)には使用できないこと、頸部の手術を行った患者ではその手術内容により甲状軟骨の触知が困難な場合や触知での嚥下回数の測定が不適切な場合がある[1]

脚注 編集

  1. ^ a b c d 戸原玄 著「臨床編II 評価・検査・診断・訓練法の基礎 1章 摂食・嚥下障害の評価・検査・診断 4 各種スクリーニングテスト ①単一の標準化テスト (1)反復唾液嚥下テスト(RSST)」、鎌倉, やよい熊倉, 勇美; 藤島, 一郎 ほか 編『摂食・嚥下リハビリテーション』監修 才藤栄一向井美惠(第2版第1刷)、医歯薬出版、2007年9月10日、137頁。ISBN 978-4-263-44247-0 
  2. ^ a b 小口和代才藤栄一水野雅康馬場尊奥井美枝鈴木美保「機能的嚥下障害スクリーニングテスト「反復唾液嚥下テスト」(the Repetitive Saliva Swallowing Test: RSST)の検討 (1)正常値の検討」『リハビリテーション医学』第37巻第6号、日本リハビリテーション医学会、2000年6月18日、375-382頁、doi:10.2490/jjrm1963.37.375ISSN 0034-351XNAID 110001864932JOI:JST.Journalarchive/jjrm1964/37.375 
  3. ^ a b 小口和代才藤栄一馬場尊楠戸正子田中ともみ小野木啓子「機能的嚥下障害スクリーニングテスト「反復唾液嚥下テスト」(the Repetitive Saliva Swallowing Test: RSST)の検討 (2)妥当性の検討」『リハビリテーション医学』第37巻第6号、日本リハビリテーション医学会、2000年6月18日、383-388頁、doi:10.2490/jjrm1963.37.383ISSN 0034-351XNAID 110001864933JOI:JST.Journalarchive/jjrm1964/37.383