メインメニューを開く

物理、とくに統計力学において、低いエネルギー状態よりも励起状態の方が占有率が高いような系が存在するとき、系のエネルギー分布が反転分布(はんてんぶんぷ、: Population inversion)であるという。また反転分布は(便宜上)負温度とも呼ばれる。この様な概念は、レーザー科学において基礎的で重要な役割を演じている。レーザーを動かすうえで、欠かすことのできない過程が反転分布によって、生じているからである。

通常の電子の分布はフェルミ・ディラック分布に従い、より下の準位の方が電子の数が多い状態である。しかし、特殊な条件を満たしてやることによりこの「下のほうが電子が多い」状態とは異なる状態にすることができる。フェルミ・ディラック分布における式での温度項の符号をマイナスにした状態とも考えることもできるので負温度と呼ばれる。ただし、反転分布にある物質は熱平衡状態にはないので、これは熱力学温度とは異る概念である。

このような、高い準位に電子が多い状態に光が入射すると誘導放出により入射光を増幅でき、レーザーが発振される。

2準位系の励起では、下の電子が上に励起されても誘導放出により高い準位に低い準位よりも多くの電子を入れることは不可能である。

3準位系になって初めて、上の準位のほうが多くなれる条件を作り出せる。

4準位系になるとさらに反転分布を作りやすい状態になりうる。

目次

ボルツマン分布と熱的平衡編集

反転分布の概念を理解するためには、熱力学の一部と電磁波の物質との相互作用について理解する必要がある。レーザー媒質となるような非常に単純な原子の組み合わせについて考えてみよう。

N個の原子それぞれが、二つのエネルギー状態のうちのどちらかにいる 系を考える。

  1. エネルギー の基底状態
  2. エネルギー の励起状態

基底状態にいる原子の数を  励起状態にいる原子の数を  、その総和を とする

 

二つの状態のエネルギーの差を

 ,

とし、原子と相互作用する光の固有振動数を   として、次の式で与える。

 ,

ただし、 プランク定数

もし、この原子集団が熱平衡にあるとすれば、 それぞれの状態に対する原子の数の比は、ボルツマン分布で与えられる。

 

ここで、原子集団の は熱力学的温度、 はボルツマン定数である。

エネルギーの差: が室温程度( 300K)、可視光程度の光( ) における二つの状態における状態密度を計算するとしよう。

より厳密に , の場合について考える。 したがって、 を満すことをいみする。このことは 平衡における の指数部が、十分に大きな負の値になっていることを意味する。したがって、 は殆ど0となる。 つまりは、原子は殆ど励起状態にいない事を意味する。

熱平衡状態において、通常は低いエネルギー状態は高いエネルギー状態と比べるとより数が多い。こういった状態は、系にとってはごく普通の事である。

温度 が増えると、高いエネルギー状態になる電子の数 が増える。しかし、熱平衡状態において、  より多くなるということはない。 より正確には、無限に高い温度をとるとき となる。

換言すると、反転分布は普通の系では熱平衡においては起こり得ない現象といえる。 系を反転分布にするためには、したがって、系を非平衡状態にする必要がある。 (但し、スピン系など、例外的に負の温度の平衡分布が許される系は存在するので、必ずしも熱平衡状態において高いエネルギー状態が低いエネルギー状態より数が少なければならない訳ではないことには注意。)

物質と電磁波の相互作用編集

光吸収編集

自然放出編集

誘導放出編集

選択規則編集

反転分布の生成編集

3準位レーザー編集

4準位レーザー編集

その他の生成法編集

関連項目編集