我輩はカモである』(わがはいはカモである、Duck Soup[注 1])は、1933年アメリカ合衆国コメディ映画レオ・マッケリー監督、マルクス兄弟主演。パラマウント映画によって公開された最後のマルクス兄弟主演作であり、また、末弟ゼッポ・マルクス最後の出演映画である[3]

我輩はカモである
Duck Soup
ポスター(1933)
監督 レオ・マッケリー
脚本 台詞
アーサー・シークマン英語版
ナット・ペリン英語版
原案 バート・カルマー英語版
ハリー・ルビー英語版
製作 ハーマン・J・マンキーウィッツ(クレジット無し)[1]
出演者 グルーチョ・マルクス
チコ・マルクス
ハーポ・マルクス
ゼッポ・マルクス
マーガレット・デュモント英語版
ルイス・カルハーン
ラクウェル・トレス英語版
エドガー・ケネディ英語版
音楽 ジョン・レイポルド(クレジット無し)[1]
撮影 ヘンリー・シャープ
編集 ルロイ・ストーン(クレジット無し)[1]
配給 パラマウント映画
公開 アメリカ合衆国の旗 1933年11月17日
日本の旗 1934年1月
上映時間 68分
製作国 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
言語 英語
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予告編
「祖国は戦争に入れり」のシーン
「祖国は戦争に入れり」で踊るマルクス兄弟

1990年にアメリカ議会図書館によりアメリカ国立フィルム登録簿に登録された。

1998年にAFIが選出した「アメリカ映画ベスト100」において、本作が85位にランクインしている。

ストーリー 編集

フリードニア共和国は財政難にあえぐ中、実力者のティーズデール夫人に援助を求めた。彼女はルーファスを宰相にするという条件を出したうえで承諾し、かくしてルーファスは首相になる。だが、強引な手法でかえって国内に混乱を招く。

フリードニア共和国の乗っ取りを企てていた隣国シルヴェニアの大使トレンティーノは、夫人に色仕掛けで接近する一方、スパイのチコリーニとピンキーの二人組を送り込む。ルーファスは二人を側近にしたので、混乱に拍車がかかってしまい、ついにシルヴェニアと開戦、議会で首相と国民は「いざ開戦」と歌い狂う。

キャスト 編集

ルーファス・T・ファイアフライ
演 - グルーチョ・マルクス
フリードニア共和国の新首相。
チコリーニ
演 - チコ・マルクス
シルヴェニアのスパイ。
ピンキー
演 - ハーポ・マルクス
シルヴェニアのスパイ。チコリーニの相棒。しゃべらない。
ボブ・ローランド
演 - ゼッポ・マルクス
ルーファスの秘書官。
グロリア・ティーズデール
演 - マーガレット・デュモント英語版
大富豪の未亡人。
トレンティーノ
演 - ルイス・カルハーン
シルヴェニアの大使。フリードニアの乗っ取りを画策。
ヴェラ・マーケル
演 - ラクウェル・トレス英語版
有名な踊り子。トレンティーノと内通。
レモネード売り
演 - エドガー・ケネディ英語版
ザンダー前首相
演 - エドモンド・ブリーズ英語版
前陸軍大臣
演 - エドウィン・マクスウェル英語版
初代財務大臣
演 - ウィリアム・ウォーシントン
検察官
演 - チャールズ・ミドルトン英語版

作品の評価 編集

ファシズムを痛烈に風刺した内容で、数年後のチャールズ・チャップリンの『独裁者』やルネ・クレールの『最後の億萬長者英語版』の先駆的な位置にある[注 2]。ハーポは撮影中にヒトラーの演説がラジオから流れて不快感を抱きながら演じたと証言している。また、イタリアではムッソリーニにより上映が禁止され「彼らの映画を見て笑ってはならぬ」との命令が下された[5]

全体的に政治的な色彩が強いが、マルクス兄弟のナンセンスなギャグが満載で、評価が高い。日本ではクレージーキャッツドリフターズなど後世のコメディアンに大きな影響を与えた。また、議会での群舞「祖国は戦争に入れり」は、戦争による国家の狂乱ぶりを表した名場面とされている。

ひたすらナンセンスな笑いとアナーキーな風刺に徹したために、観客と批評家の理解を得られず封切り時は不評であった。それまで破竹の勢いであったマルクス兄弟のキャリアには大きな痛手となり、パラマウントからMGMに移籍する原因となった。グルーチョは「狂気が過ぎている」と述べ、失敗作とみなしている。

ランキング 編集

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ 「骨を折らずに利を得る」という意味がある[2]
  2. ^ 小林信彦は、「この映画はヒットラーの抬頭する時代につくられたが、べつに特定の国や個人を諷刺したものではない。ヒットラーだけはいくらか念頭にあったろうし、その意味では、これは、ルネ・クレールの『最後の億萬長者英語版』や『チャップリンの独裁者』の先駆的作品ともいえる」と評価している[4]

出典 編集

  1. ^ a b c Duck Soup (1933) - Full Cast & Crew” (英語). IMDb. 2022年10月14日閲覧。
  2. ^ 和田誠『ぼくが映画ファンだった頃』七つ森書館、2015年2月15日、92頁。ISBN 978-4-8228-1523-3 
  3. ^ Zeppo Marx - IMDb(英語)
  4. ^ a b 小林 1983, 第四部 幼年期の終り;第二章 フリドニア讃歌;『我輩はカモである』作品分析.
  5. ^ ポール・ジンマーマン『マルクス兄弟のおかしな世界』中原弓彦 永井淳 訳、晶文社、1973年、[要ページ番号]頁。ISBN 978-4-7949-5822-8 
  6. ^ BBC 100 greatest American films (2015-07-20)”. IMDb. 2023年11月4日閲覧。
  7. ^ The 100 greatest comedies of all time” (英語). www.bbc.com. 2022年12月19日閲覧。
  8. ^ Burgin, Michael; Paste Movies Staff (2018年5月22日). “The 100 Best Comedies of All Time” (英語). pastemagazine.com. 2022年12月24日閲覧。
  9. ^ The 50 Best Comedy Movies” (英語). Empire (2021年10月7日). 2022年12月27日閲覧。
  10. ^ de Semlyen, Phil; Rothkopf, Joshua (2022年12月6日). “100 Best Movies of All Time That You Should Watch Immediately” (英語). Time Out Worldwide. https://www.timeout.com/film/best-movies-of-all-time 2022年12月24日閲覧。 
  11. ^ Kryza, Andy; Huddleston, Tom; de Semlyen, Phil; Singer, Matthew (2022年9月13日). “The 100 funniest comedies of all time” (英語). Time Out Worldwide. https://www.timeout.com/film/100-best-comedy-movies 2022年12月24日閲覧。 

参考文献 編集

  • 小林信彦「第四部 幼年期の終り;第二章 フリドニア讃歌;『我輩はカモである』作品分析」『世界の喜劇人』新潮社〈新潮文庫〉、1983年11月(原著1973年)。ISBN 978-4-1011-5806-8 

外部リンク 編集