喉頭隆起
喉頭隆起(こうとうりゅうき)は、俗に喉仏(のどぼとけ)とも言い、喉の中間にある甲状軟骨の隆起したところ[1]。英語Adam's Apple、フランス語Pomme d'Adamなど。キリスト教圏では「アダムの林檎」という。ただし、スペイン本国のスペイン語ではnuez(de Adán)(アダムの木の実)と表現するなど一部例外もある。
男子は思春期を過ぎると喉仏が顕著に目立つようになる。
解説編集
人間の喉頭は、靱帯と筋肉によって結合された軟骨の枠内に固定されている。正面にあるのが甲状軟骨で、首の前方にかたまりをつくって、喉頭隆起、あるいは、西洋ではより一般的に「アダムの林檎」として知られている。
喉頭は思春期の間に、女性よりも男性においてより顕著に成長し、そのため典型的な喉仏は、女性や思春期前の少年少女より成人男性の方がさらに隆起している。この喉頭の成長はまた、十代の少年らの声変わりの原因でもある。
また、時としてトランスジェンダー女性が喉頭隆起が顕著に目立つ場合に奇異の目で見られ、いじめや差別に発展する場合もある。
甲状軟骨は、喉頭の骨格(喉頭を含む気管の内外の軟骨構造)を作る9本の軟骨のうち最大のものである。これは2枚の板状の薄片から成り、軟骨の前方で合体し喉頭隆起と呼ばれる隆起を形作る。喉頭隆起は男女ともに明瞭だが、成人男性においていくぶん顕著な傾向がある。喉頭隆起のすぐ上方の甲状軟骨の縁は、甲状軟骨切痕または上甲状切痕と呼ばれている。
甲状軟骨の外側面を構成する2枚の薄片は、気管の左右それぞれの側を覆って斜めに広がる。各々の薄片の後縁はその下方で、輪状軟骨とともに、輪状甲状関節と呼ばれる関節を形成する。この関節での軟骨の動きは声帯ヒダの緊張の変化をもたらす。そして、それはさらに声の変化を生じる。甲状軟骨の上縁全体は、甲状舌骨膜によって舌骨とつながっている。
甲状軟骨は、そのすぐ後方に位置する喉頭を保護するのに役立つばかりでなく、喉頭の筋肉の付着する場所としても役立っている。
俗称編集
喉仏(のどぼとけ)編集
形状が座禅をしている仏様の姿に見えるためとする説がある[要出典]が、皮膚の上から仏の姿を確認する事はできない。また、火葬後の遺骨では「喉仏の骨が残っている」と言われることがあるが、軟骨である甲状軟骨は火葬の温度には耐えられずに消失する。座禅をする仏に見える骨は、喉頭隆起のあった位置とは無関係の、椎骨(いわゆる背骨 -脊椎- を形成する骨)のひとつである第二頸椎(軸椎)である。
アダムの林檎編集
1913年版のウェブスターの辞書の説は、その語句についてこう述べている。
「 | …我々の最初の祖先が、禁断の木の実(林檎)を食べて、喉に詰まらせたという事に起因したという概念からそう呼ばれている。 | 」 |
しかし、ユダヤ教・キリスト教、あるいはイスラム教の聖書にはそうした記述はないだけでなく、「禁断の樹の実」がリンゴであったとも一切書いてない。
もう一つの説は、純粋に翻訳の問題であったとするもの。アダムのリンゴ(Adam's apple)のヘブライ語の「tappuach ha adam」(人のリンゴ)がラテン語の「pomum Adami」(アダムのリンゴ)に翻訳されてしまい、ヘブライ語のリンゴという言葉は「突き出ている」という言葉に近いので、こうした翻訳の誤解が生じたとするもの。[2]
「喉頭隆起」の元になったラテン語「prominentia laryngea」はバーゼル・ノミナ・アナトミカ(Basle Nomina Anatomica、1895年)に初めて使われた。
備考編集
脚注編集
- ^ “喉頭隆起(こうとうりゅうき)とは”. コトバンク. 2019年11月23日閲覧。
- ^ Adam's apple (Medical dictionary)
外部リンク編集
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