営業放送システム

営業放送システム(えいぎょうほうそうしすてむ)とは、民間放送局(民放)に設けられる基幹業務系システムで、民放が放送する番組や、コマーシャルメッセージ(CM)などを一元的に管理するシステムである。略して「営放システム」とよばれる。

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概要編集

日本の放送はいわゆる公共放送であるNHKといわゆる商業放送である民放の2体制である。NHKの場合、受信者からの受信料が主な収入源であるが、民放はその収入のほとんどを、出稿者(スポンサー)と契約して定めた日時に、スポンサーのCMを放送することにより得ている。すなわち民放の商品とは「時間」であり、24時間を細かくスポンサーに「切り売り」することにより収入を得る。

このため民放ではその放送開始当初から、通常の放送内容を編成するグループと、CMを編成するグループが作られ、このふたつのグループが連携して作業し、その結果をひとつとすることによって1日分の番組を完成させ、放送する体制がとられた。この体制が営放システムの原型である。

出稿料金(いわゆるCM料金)はその放送時間帯や曜日、放送形態、すなわち各番組中でCMを放送するのか、番組と番組の間で放送するのか、短期にいくつか放送するのか、長期にわたってひとつの番組中で放送するのかなどによって細かく異なり、また、地上波民放であれば、その営業エリアは基本的に各都道府県単位とされていることから、いわゆる全国CMの場合、各系列局毎の料金分配計算などが随時、細かく発生し、煩雑を極める。

放送開始当初、営放システムはその全てが人によって構成されたシステムであり、随時、莫大な手間と時間を費やすものであったが、コンピュータの発達により、1960年代から急速に機械化(自動化)された。初期にはPCS(Punched Card System)を応用した半自動システムが導入されたが、その後、契約情報などを磁気テープ磁気ディスク装置などに保存し、その処理をコンピュータの中央処理装置によって行わせるようになった。すなわちこれはEDPS(Electronic Data Processing System)であり、このことから民放では今日でも営放システムのことをEDPS、あるいはEDP(Electronic Data Processor)と呼ぶことがある。

今日、スポンサーとの間で出稿契約が成立した後、その詳細な内容を営放システム端末より入力することにより、CMはコンピュータシステム上で自動編成される。また通常の放送内容の編成についてもシステムとして一体化されており、複数の端末からの入力により、コンピュータシステム上で1日分の番組としてまとめられ、管理される。そしてこの番組データは主調整室にある自動番組制御装置などに送られ、実際の放送に用いられる。

なお、NHKにおいても放送進行や管理について同様なシステムにより自動化されているが、システム全体としては当然、大きく異なるものとなっており、営放システムとは呼ばれない。

営放システムによる番組編成と放送編集

今日の営放システムの担務は多岐にわたるが、以下、代表的な番組編成から放送確認までの例をあげる。

基本番組表の作成

日々の番組を日々作るのには大変な労力を要する。そこでまず番組編成グループは各セクションと連携して、大枠となる曜日毎の「基本番組表」をつくる。いわゆる番組改編というのは、この基本番組表の改編を意味する。これをデータとしてコンピュータに入力、管理する。基本番組表を簡略化したものがスポンサーなどに提示される「タイムテーブル」である。

放送進行データの作成

番組とは、各放送内容を時間軸で並べたものをいうが、一般に民放ではCM以外の放送内容をまとめて「番組」と呼称していることから以下、これに従う。
通常、番組とCMは交互に放送される。そこで番組編成グループは、基本番組表より、その日の何時何分何秒から何時何分何秒まで番組を放送し、何時何分何秒から何時何分何秒までCMを放送するかの細かな時間的枠組みをコンピュータ上で構築する。番組を放送する時間枠を番組枠、CMを放送する時間枠をCM枠という。この段階で各番組枠の詳細について決定する。
一方、営業グループはタイムテーブルとそれぞれの番組内容などをスポンサーに提示することによってCM販売を行なう。この結果を受けて、CM編成グループは、詳細な内容をデータとしてコンピュータに入力、CM枠に各スポンサーのCMを割り付ける。この段階で各CM枠の詳細について決定する。
以上の作業によって日々の放送進行データが完成、管理される。併せて「放送進行表」が作成され、これが「原本」となる。また放送進行表を簡略化したものが別に作られ、番組表として新聞などにより、一般公開される。
なお各CMや番組のデータは、それぞれの素材ごとにあらかじめ登録され、コード(それぞれ「CMコード」「番組コード」などと呼ばれる。)により管理されているため、実際の放送進行データの作成はコンピュータにそれぞれのコードを入力、自動計算により行われる。

放送

放送当日もしくはその数日前になると、営放システムにある放送進行データは主調整室にある自動番組制御装置などに送られ、実際の放送に用いられる。主調整室では監視員が、放送進行表と照合しながら、「放送品質」をリアルタイムでチェックする。(今日、なにがしかの代替手段によるチェック体制により、監視員が省かれる場合もある。)放送進行表と実際の放送との間に何らかの不整合が生じると、直ちに対策が講じられる。

放送確認

実際に行われた放送内容はその終了後、再び番組自動制御装置などから営放システムに返され、原本データと照合される。また、主調整室での監視員によるリアルタイムのチェック結果なども併せて照合され、放送記録となる。正常な放送が確認されると、スポンサーに対し「放送確認書」が発行される。

営放システムの進歩とCM間引き編集

1980年代以降、営放システムの信頼性は格段に向上、各端末の操作性などが急速に進歩、自動番組制御装置などと併せ、各番組やCMの放送について完全自動化もできるようになったことから、各民放で省力化が進められた。その一方で、不正対策やチェック体制にまでシステム整備がなされなかった面もあり、下記のような問題を引き起こした。

福岡放送北陸放送はCMを間引き、未放送分のCM料金をスポンサーより受け取っていたことが判明、1997年、両社は日本民間放送連盟(民放連)より1年間の会員活動停止処分を受けた。さらに静岡第一テレビもCMを間引き、未放送分のCM料金をスポンサーより受け取っていたことが判明、1999年、民放連より除名処分を受けるに至った。(なお同社は2000年に民放連に再入会している。)

営放システムは一般企業などで用いられるEDPSとは異なり、いわゆる不正などについては当初より全く想定外の事象であり、放送事故の防止に重点が置かれ、改良されてきた。従ってCM間引きなどに対しては全く無防備なものであり、この3事件はまさにこの弱点を突いたものであった。

以降、営放システムには一般のEDPSと同様に、いわゆる不正防止を目的とした2重、3重のチェック機能が付加されるようになった。この3事件は日本の民放業界全体の信用を失墜させるものであり、日本の民間放送史に残る汚点となった。

参考文献等編集