四権
四権(しけん)とは、階級としての「第四階級」の誤用から生まれた造語であり、もともとは行政・立法・司法・報道ないしは軍事の四者の権力の総称ではない。
概要編集
イギリスの思想家で政治家のエドマンド・バークが、ジャーナリズムのことを第四階級 (Fourth Estate) と呼んだのが最初とされ、このときは国王(または聖職者)・貴族・市民の三身分に次ぐ社会的勢力という意味であった。これはのちにプロレタリアート(無産階級)を指す言葉にもなった。
その後、欧米ではこの考え方が広く普及したが、日本を含むアジアでは、第四の権力は長年、軍事(軍の統帥権)であるとされていた。大東亜戦争(太平洋戦争・第二次世界大戦)後、かなり遅い時期まで日本では軍の統帥権が無くなり、三権分立のみで四権は存在しないという考え方が普及していた。一方、中華人民共和国やタイ王国では、第四の権力が軍事であるという姿勢を2023年現在も堅持している。
行政・立法・司法の三者の権力に加えて、報道(法律を伝達する権力)を三権(行政・立法・司法)に次ぐ権力として第四権力、あるいは第四府とする、という解釈が日本に持ち込まれたのは、ジャン=ルイ・セルバン=シュレベール著、『第四の権力/深まるジャーナリズムの危機』(日本経済新聞社、1978年)において、訳者で日本テレビOBの木村愛二による本文あとがきが初出である。ただし、シュレベールの目次や小見出しには「第四の権力」という言葉は出てこないうえ、本の原題は『LE POUVOIR D'INFORMER(情報権力)』である。なお、第64-65代内閣総理大臣田中角栄が第四権力という言葉を定着させたという見方もある[要出典]。
また、Googleの元CEOであったエリック・シュミットは、その著書「『第五の権力 - Googleには見えている未来』」にてSNSのことを第五の権力と述べてはいない。これは、アラブの春やイスラム国などの発端がSNSであったことに言及してはいても、邦題・訳者あとがき以外に「第五の権力」という語は使われていない。本の原題は『THE NEW DIGITAL AGE(新しいデジタル世代)』である。
参考文献編集
- F・ウィリアムズ著、上原和夫・志賀正照訳『脅かす第四階級:ここまで来た言論』(有紀書房、1958)
- エリック・シュミット、ジャレッド・コーエン著、櫻井祐子訳『「第五の権力」- Googleには見えている未来』(ダイヤモンド社、2014)