国内専用車
国内専用車(こくないせんようしゃ)または国内専用モデル(こくないせんようモデル)とは、自動車メーカーが「国内専用車」として国内マーケット向けに生産している自動車の種類のことである。
文字通り自生産国外へ輸出および販売がされない車種である。
本稿では自動車メーカーが「国内専用車」として生産している車種について述べる。
概要
法や行政上の区分から来た言葉ではなく、大手自動車メーカーの販売戦略上の位置づけから来た言葉。世界マーケットを対象に輸出・販売されている車種を意味する「世界戦略車・グローバルモデル」という言葉と対置される。
例えば日本市場の国内専用車であれば、日本国内のみで販売される自動車の種類のことを意味する。日本国外へ輸出していない純粋な日本国内専用車は2006年時点で、トヨタで乗用車51車種中17車種、日産自動車で乗用車26車種中5車種ほどである[1]。軽自動車はそのほとんどが日本の国内市場のみでの販売を前提にした国内専用車種だが、660ccエンジンのままパキスタンで生産・販売されているHA36アルトのような例外もある。
市場のグローバル化を受け、メーカー各社は規模の経済の追求から、世界各国で販売可能なモデルの生産へとシフトを行っているが、それと同時に各国の内部市場特有のニーズを掬い上げるためのモデルの生産も維持されている。国内専用車とは、主にこうした各国特有の市場ニーズに応えるかたちで生産・開発されている車種のことを表す。
市場ニーズが各国特有の様相を呈する背景にはさまざまな要因があるが、道路事情、駐車スペース、積雪などの地理的特性の違い、ガソリンや軽油の価格、移動距離や乗車人数などのユースケースの違い、課税システムや交通事故発生時の責任の定めといった関連法規の違いなどがある。右ハンドルと左ハンドルの違いが挙げられる場合もあるが、日本以外で左側通行の国も少なくなく、多くの自動車は設計段階からどちらにも対応できるよう考慮されているため、ハンドルの位置の違いはそれほど大きな問題にはならない。
とはいえ実際には国内専用車もいわゆる並行輸出というかたちでインドネシア・マレーシア・香港・タイ・ニュージーランド・オーストラリアなどの左側通行のアジア太平洋地域で多く走っているのをはじめ、中古軽自動車のニーズが根強いインド・パキスタン、さらにロシアのように右側通行でも右ハンドル車を許可している国に輸出されるもの[2]も多く、また右ハンドルから左ハンドルへ改造した上で使用される場合もある。
なお、英語「ドメスティックカー (Domestic Car)」の対訳は「国産車・自国製の車」であり、「専用の」という意味はない。
現在製造・販売中の各社の国内専用車(順不同)
※2019年10月現在。OEM、および発売が予定されている車種を含む。国内市場専用のネーミングが冠されている車種[3]は純粋な国内専用車ではないため除く。☆印が付与された車種は軽自動車。★印が付与された車種は現在、在庫販売のみ行っている車種。△印が付与された車種は近日、発売が予定されている車種。▲印が付与された車種は既存の市販車をベースにボディ外板・フレーム等のパーツを手作業で製作・改造したパイクカー系車種。
- トヨタ
- マークX(2018年5月以降)、プレミオ、アリオン、カローラアクシオ(2019年9月以降[4]、同型車種のトヨタ教習車を含む)、カローラフィールダー(2019年9月以降[5])、ポルテ、エスクァイア、プロボックス、サクシード、ルーミー/タンク(ダイハツ・トールOEM)、パッソ(ダイハツ・ブーンOEM)、ピクシストラック☆、ピクシスバン☆、ピクシスエポック☆、ピクシスメガ☆、ピクシスジョイ☆、コペンGR SPORT(OEM元のダイハツ・コペンは初代を除き海外生産されている)☆
- 日産
- キューブ、NV150 AD、デイズ☆、デイズルークス☆、NV100クリッパー☆、NV100クリッパーリオ☆、NT100クリッパー☆
- ホンダ
- ステップワゴン、フリード (現行)、シャトル、S660☆、N-BOX/N-BOX SLASH☆、N-ONE☆、N-WGN☆、N-VAN☆、アクティトラック☆
- 三菱自工
- eKワゴン/eKクロス☆、eKスペース/eKスペースカスタム☆、デリカD:2、デリカD:3、ランサーカーゴ(NV150 ADOEM)、ミニキャブ・ミーブ☆、ミニキャブバン/ミニキャブトラック(660ccモデル全般)(スズキ・エブリイ/キャリイOEM)☆、
- マツダ
- ボンゴバン/ボンゴトラック、ボンゴブローニィ(トヨタ・ハイエースOEM)、ファミリアバン(トヨタ・プロボックス(1.5L車)/サクシードOEM)、キャロル(OEM元のスズキ・アルトは海外生産されている)☆、フレア☆、フレアワゴン☆、フレアクロスオーバー☆、スクラムワゴン/スクラムバン/スクラムトラック☆、
- SUBARU(スバル)
- ジャスティ(ダイハツ・トールOEM)、プレオプラス☆、ステラ(ダイハツ・ムーヴOEM)☆、シフォン☆、サンバーバン/サンバートラック(ダイハツ・ハイゼットカーゴ/ハイゼットトラック/ハイゼットデッキバンOEM)☆、ディアスワゴン(ダイハツ・アトレーワゴンOEM)☆
- スズキ
- ワゴンR/ワゴンRスティングレー☆、スペーシア/スペーシアカスタム☆、ソリオバンディット、キャリイ☆、ジムニー(660ccモデルのみ)☆、ランディ(日産・セレナOEM)
- ダイハツ
- アルティス、メビウス、トール、ブーン(現行)、ムーヴ/ムーヴカスタム☆、ムーヴキャンバス☆、タント/タントカスタム☆、ミライース☆、ミラトコット☆、アトレーワゴン☆、ハイゼットカーゴ/ハイゼットデッキバン☆、ウェイク☆、キャスト☆、ハイゼットキャディー☆
- 光岡(認定中古車、およびミニカー除く)
- ロックスター▲、リューギ/リューギワゴン▲、ビュート/ビュートなでしこ▲
過去の各社の国内専用車(順不同・一部抜粋)
※2019年9月現在。OEMを含む。国内市場専用のネーミングが冠されている車種[6]は純粋な国内専用車ではないため除く。☆印が付与された車種は軽自動車。
- トヨタ
- トヨペット・SA型、トヨペット・マスター、トヨペット・マスターラインバン、スポーツ800、ミニエース、クラウンバン、コロナバン、コロナクーペ、コロナエクシヴ、カリーナED、カレン、カローラセレス、スプリンターマリノ、プログレ、ブレビス、オリジン、セラ、チェイサー、クレスタ、カムリ(4代目・5代目)、ビスタ(5代目)、ビスタハードトップ、ビスタアルデオ、パブリカバン、スターレットバン、カリーナバン、カローラバン、スプリンターバン、デュエット、キャミ、スパーキー、ヴェロッサ、ガイア、ナディア、ラウム、Opa、WiLL Vi、WiLL VS、WiLLサイファ、パッソセッテ、クルーガーハイブリッド、カルディナ(3代目)、カルディナバン、ブレイド、ラクティス(初代)、ノア(初代)、ヴォクシー(初代)、アイシス、マークXジオ、bB(2代目)[7][8]、ラッシュ、ピクシススペース☆、センチュリー、クラウンセダン[9]、SAI、クラウン マジェスタ[10]
- レクサス
- HS[11]
- 日産
- ローレルスピリット、Be-1、パオ、エスカルゴ、フィガロ、ラシーン[12]、リベルタビラ、サニー(9代目セダン)、パルサーS-RV、ルキノハッチ(S-RV含む)、サニーバン(サニーADバン名義含む)、チェリーバン、パルサーバン(パルサーADバン名義含む)、ダットサンADバン、AD MAXバン、ブルーバードバン、バイオレットバン、アベニールカーゴ、エキスパート、ピノ☆、クリッパーリオ☆、キックス(パジェロミニOEM)☆、ルークス☆、オッティ☆、モコ☆、ウイングロード、ラフェスタ ハイウェイスター (プレマシーOEM)
- ホンダ
- S500、L700/800、P700/800、T360☆、T500、N360☆、TN360☆、ライフステップバン/ピックアップ☆、トゥデイ☆、ストリート☆、ビート☆、シティプロ、S-MX、エリシオン、インテグラSJ、アヴァンシア、キャパ、Z(2代目)☆、オルティア、トルネオ、ザッツ☆、モビリオ(初代)/モビリオスパイク、シビックバン、エアウェイブ、パートナー、ゼスト☆、ライフ☆、フィットシャトル、フリードスパイク、バモス/バモスホビオ☆、アクティバン☆
- 三菱自工(旧・三菱重工名義含む)
- レオ☆、360☆、ミニカ☆、ミニカスキッパー☆、ミニカウォークスルーバン☆、ギャランバン、エテルナSAVA、ミニカトッポ☆、ブラボー☆、ピスタチオ、ディオン、トッポBJ☆、トッポBJワイド、タウンボックス☆、パジェロミニ☆、eKアクティブ☆、eKクラッシィ☆、ekスポーツ☆、トッポ☆、i☆、プラウディア(2代目)、ディグニティ(2代目)
- マツダ(旧・東洋工業名義含む)
- R360クーペ☆、B360☆、シャンテ☆、ポーター/ポーターキャブ☆、オートザム・AZ-1☆、エチュード、ペルソナ、オートザム・クレフ、ベリーサ、ラピュタ☆、スピアーノ☆、AZ-ワゴン☆、AZ-オフロード☆、キャロルエコ☆
- SUBARU(スバル)
- 360☆、1000バン、ff-1 1300Gバン、レオーネバン、R1☆、DEX[8]、ルクラ☆、エクシーガ クロスオーバー7、プレオ☆
- スズキ
- スズライト☆、フロンテ☆、フロンテ800、フロンテクーペ☆、フロンテハッチ☆、マイティボーイ☆、アルトウォークスルーバン☆、アルトハッスル☆、アルトワークス☆、キャラ☆、アルトエコ☆、MRワゴン☆、ランディ
- ダイハツ
- Bee、ニューライン/ニューラインキャブ、フェロー/フェローMAX☆、フェローバギィ☆、リーザ☆、ミラウォークスルーバン☆、ミラミチート☆、ミラモデルノ☆、ミゼットII☆、オプティ☆、ミラジーノ1000、ネイキッド☆、MAX☆、ソニカ☆、エッセ☆、ムーヴラテ☆、ミラアヴィ☆、テリオスキッド☆、ミラカスタム☆、タントエグゼ/タントエグゼカスタム☆、ムーヴコンテ/ムーヴコンテカスタム☆★、ミラ/ミラバン☆[13]、ミラココア☆
- いすゞ
- ジェミネット、ジェミネットII、アスカ(2代目以降)、ジェミニ(4代目以降)、コモ
- 光岡(認定中古車、およびミニカー除く)
- ラセード▲、ゼロワン、ガリュー(ガリュー2-04含む)▲、リョーガ▲、レイ▲☆[14]、ユーガ▲、ライク▲、ヌエラ(ヌエラ6-02含む)▲
脚注
- ^ 『世界企業 国内に“死角”』 以下抜粋 「最近は国内市場だけの「国内専用車」が減っている。輸出をしていない純粋な国内専用車は現在、トヨタで乗用車51車種中17車種、日産自動車も乗用車26車種中5車種ほどだ。」 読売新聞 2006年12月11日(2009年2月22日 閲覧)
- ^ ロシアへは1990年代後半から2008年秋季まで車種・タイプ問わず比較的経年の浅い車両が年間40万台以上の規模で大量に輸出されていた。現在も少ないながらも輸出は続けられている
- ^ 例:ホンダ・グレイス(教習車を含む)、マツダ・デミオ(2019年8月よりマツダ・2に改称、マツダ教習車を含む)、マツダ・3、マツダ・アテンザ(現:マツダ・6)、トヨタ・ヴィッツ(4代目より海外名と同じヤリスに統一)、トヨタ・カローラスポーツ、トヨタ・カローラツーリング、トヨタ・ジャパンタクシー、日産・スカイライン、日産・フーガ、スバル・インプレッサG4、スバル・レガシィB4、スバル・WRX S4など
- ^ 2013年2月から2019年8月までは一時的に香港・マカオでも輸出販売されていた。
- ^ 2006年12月から2019年8月までは大洋州でも輸出販売されていた。
- ^ 例:トヨタ・スプリンター、トヨタ・コルサ、トヨタ・カローラII、トヨタ・ウィンダム、トヨタ・ファンカーゴ、トヨタ・ベルタ、トヨタ・カムリグラシア、日産・オースター、日産・ラングレー、日産・バイオレットリベルタ、日産・ルキノ、ホンダ・バラード、ホンダ・ビガー、ホンダ・シビックフェリオ、マツダ・レビュー、三菱・ランサーフィオーレ、三菱・アスパイア、三菱・ギャランフォルティス、スズキ・カルタス、スズキ・カルタスエスティーム、スズキ・カルタスクレセント、ダイハツ・クーなど
- ^ ただし、初代はサイオンブランドのxB(初代)としてアメリカに輸出されていた。
- ^ a b 兄弟車のダイハツ・クーは欧州に輸出(現地名・マテリア)されていた。
- ^ ただし、当車種のベースとなったクラウンコンフォートは中華圏特別行政区(香港・マカオ)に輸出されていた。
- ^ 中国向けのクラウンはS200型マジェスタの車体を現地生産というかたちで販売されている。
- ^ 発売当初は北米、およびハワイでも販売されていたが、思いのほか販売が不振だったため、いずれも2012年度中に販売打ち切りとなり、レクサスとしては初の国内専用車となった。
- ^ ただし、派生モデルのラシーン・フォルザは国外にも輸出されていた。
- ^ ただし2013年1月以前は排気量を拡大したモデルがおもに欧州向けとしてクオーレ、シャレードなどの名義で輸出されていた。
- ^ 当車種は基本的に軽自動車だが、オーバーライダーを装着したモデルは小型普通車登録扱いとなっていた。