国立近現代建築資料館

日本の文化庁が運営する資料館

国立近現代建築資料館(こくりつきんげんだいけんちくしりょうかん、英語:National Archives of Modern Architecture)は、日本近現代建築に関する資料(図面模型等)の劣化・散逸や海外流出を防ぐための収集保管建築物の調査研究と啓蒙活動や資料の展示を目的に設立された文化庁所管の資料館である。

国立近現代建築資料館
国立近現代建築資料館の位置(東京都区部内)
国立近現代建築資料館
情報
用途 資料館
旧用途 最高裁判所司法修習施設庁舎
設計者 国土交通省関東地方整備局
施工 東洋建設
事業主体 文化庁
管理運営 文化庁
構造形式 資料室棟RC造、事務室棟S造
追加外装/床:熱処理木材スギ)、外壁:ステンレス鋼ポリカーボネート板
敷地面積 12,498 m²
建築面積 1,570 m²
延床面積
※資料室棟2,753(内展示面積292)、事務室棟366
階数 地上2階
着工 2012年平成24年)1月
竣工 2012年(平成24年)10月
開館開所 2013年(平成25年)5月8日
所在地 113-0034
東京都文京区湯島四丁目6番15号
座標 北緯35度42分35.41秒 東経139度45分59.9秒 / 北緯35.7098361度 東経139.766639度 / 35.7098361; 139.766639 (国立近現代建築資料館)座標: 北緯35度42分35.41秒 東経139度45分59.9秒 / 北緯35.7098361度 東経139.766639度 / 35.7098361; 139.766639 (国立近現代建築資料館)
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概要 編集

国際的にも高い評価を得ている丹下健三による国立代々木競技場設計図ハーバード大学が所有しており、戦前の資料は戦火焼失しているものも多く、建物そのものも老朽化経済性から解体されている現状がある。こうしたことをうけ、2011年平成23年)2月8日に閣議決定した「文化芸術の振興に関する基本的な方針(第3次基本方針)」における重点戦略の一つとして「文化芸術の次世代への確実な継承 ― 文化芸術分野のアーカイブ構築に向け、可能な分野から作品、資料等の所在情報の収集や所蔵作品の目録(資料台帳)の整備を進めるとともに、その積極的な活用を図る」べきと示され、「近代以前の伝統的建造物に係る保存政策に比し十分とは言えない近現代建築について、その学術的・歴史的・芸術的価値を次世代に確実に継承して行く体制を構築する」ことを目的とし、文化芸術振興基本法に基づき国土交通省官庁営繕部の大規模リニューアル事業の一環として開設された[1]

建物は旧岩崎邸庭園に隣接し財務省関東財務局東京財務事務所農林水産省関東農政局東京地域センター・経済産業省関東経済産業局東京事務所が入所する湯島地方合同庁舎[2]敷地の一角にあった別館(1971年竣工)と新館(1984年竣工)を改修(どちらも旧司法研修所)。二棟の間をウッドデッキの通路で繋ぎ一体化、別館を資料室棟、新館を事務室棟とし、別館二階の階段状講堂をフラットにして展示スペースに充てている[3]。新館は東日本大震災外壁の一部が剥落したため、格子戸風の外装に一新した(外装仕様は左記のテンプレートを参照)。資料室棟は旧別館の時からピロティ構造となっている。資料室棟と事務室棟の二階間を結ぶ吹き抜けの渡り廊下は旧新館建築時に増設されたもの。岩崎邸への景観配慮から建物周囲に植樹を行い庭園との連続性も持たせている[4][5]

収集品目は当面、明治時代から図面のデジタル化が進んだ1990年代頃までに作成されたもので、文化勲章文化功労者プリッカー賞王立英国建築家協会(RIBA)ゴールドメダル・アメリカ建築家協会(AIA)ゴールドメダル・国際建築家連合(UIA)ゴールドメダル・高松宮殿下記念世界文化賞ヴェネツィア・ビエンナーレ国際建築展金獅子賞を受賞した日本人建築家の作品、DOCOMOMO JAPAN選定 日本におけるモダン・ムーブメントの建築#日本におけるDOCOMOMO選の一覧メタボリズムに参加した建築家の作品を対象とする。開館から三年で緊急に保護が必要な資料約60000点を収集・保管した[6]

調査事業として「我が国の近現代建築資料の所在情報の概要把握と情報管理方法の提案」を募集するなども行っている。

明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」に次いで国立西洋美術館が「ル・コルビュジエの建築作品-近代建築運動への顕著な貢献-」の構成資産として世界遺産に登録されたこともあり、近現代建築資料を収集することは遺産の価値を補完し、ユネスコ世界遺産と博物館指針に沿うものとなる[7]

名誉館長に建築家の安藤忠雄が就任している。

利用情報 編集

     
事務室棟(左)と展示室棟(奥)
展示室棟エントランス
展示室棟2Fロビー
  • 開館・休館日は企画展示により異なる(常設展示は行っていない)
  • 開館時間は10:00~16:30で、開館当初は入館予約制であったが現在は予約不要になった
  • 入場料は無料だが、土日祝は岩崎邸庭園からのみの入館となり要庭園観覧料400円。
  • 展示スペースは撮影禁止
  • 最寄り駅は東京メトロ千代田線湯島駅

脚注 編集

  1. ^ 文化芸術の振興に関する基本的な方針「文化芸術の次世代への確実な継承」 文化庁
  2. ^ 湯島本庁舎は構造形式 = RC造、敷地面積 = 33,954m2、建築面積 = 3,318m2、延床面積 = 8,695m2、階数 = 地上5階
  3. ^ 展示スペース出入り口に勾配があり、室内に中二階構造もあるなど階段状講堂の名残がある.
  4. ^ 旧司法研修所(別館)は1972年昭和47年)に一般社団法人日本建設業連合会BCS賞を受賞しており、屋根軒先の半円形(半丸)が連続する波模様が特徴(上掲画像参照). 外装のタイル貼塗装は建築当初のまま.
  5. ^ 国立近現代建築資料館 大規模リニューアル事業 (PDF) 国土交通省
  6. ^ 「平成26年行政事業レビューシート」(事業番号0412)文部科学省
  7. ^ 「ル・コルビュジエ×日本 国立西洋美術館を建てた3人の弟子を中心に」展 2015年7月21日~11月8日

関連項目 編集

外部リンク 編集

  • 国立近現代建築資料館 文化庁
  • 野村正晴「日本における近現代建築資料保存の現状」『理工学と技術 : 関西大学理工学会誌』第21巻、関西大学理工学会、2014年11月、17-20頁、ISSN 1883-0021