地上げ屋
地上げ屋(じあげや)とは、建築用地を確保するため、地主や借地・借家人と交渉して土地を買収する人・企業のこと。
以下では特に断り書きがない限り、日本での事例について述べる。
「地上げ」とは編集
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都市における土地は、細切れの状態よりも街区単位でまとまっている方が、大規模な建築物が建てられ、面積当たりの利用価値が高くなる。そのため細切れの土地を買い取り区画を大きくして、都市再開発用地に提供する手法である。
土地の整理分合によって公共用地を生み出し、なおかつ地区全体の土地の価値を高めるという点では、土地区画整理事業や市街地再開発事業などの都市計画事業(面整備)は、公的な地上げ行為と言える。
日本ではバブル景気時に、地主や住民を恫喝して強引に土地を買い漁り、街区単位でまとまった段階で転売して、膨大な利益を上げる地上げ屋が台頭していた為、ネガティブなイメージがつくきっかけになった。
しかし本来の地上げは、権利関係の複雑な土地・建物を買収する都市開発の専門業者として存在していたものである。
景気動向と地上げ編集
1980年代後半のバブル景気の時には、地価が右肩上がりで上昇を続けた。こうした中で、暴力団が関わり暴力的手段によって立ち退きを迫ったり[注釈 1]、金銭に糸目を付けない買い取りを行うなど、強引な手法で土地の売買を行う業者が目立つようになり、地上げ屋はネガティブな表現として用いられることが多かった。当時のテレビドラマやアニメ・漫画作品でも暴力団まがいの地上げ屋が描写されることが多く、鳥山明の漫画『ドラゴンボール』に登場するフリーザも当時の地上げ屋を基に考案されたキャラクターである[注釈 2]。また、高橋陽一の漫画『翔の伝説』で、テニスクラブ同士による乗っ取りをめぐる攻防が出てくるが、これも当時の地上げ屋の暗躍がモチーフとなっている。
1991年(平成3年)にバブル崩壊が起き、東京都区部の地価が暴落。それに伴い、地上げ屋は目立たなくなっていった。地上げ途中だった街区は、買収済みの更地がまだら状に残り、旧来の町並みは破壊されたまま、再開発も進まないという「中途半端な状態」で放置され問題となった。その空き地は、固定資産税対策として「駐車場運営」で細々と運営されている。
その後、1990年代後半に諸外国からの資金により不動産ファンドが活性化、市場に勢いが出てくると、それに釣られて地上げ屋は再び姿を現すようになった[1]。
2000年代に入り、景気回復に伴って、オフィスなど不動産市場は活況を呈した。だが、サブプライム問題などもあり、不動産市況に水を差され、活動が沈静化した[1]。しかし、令和の時代となっても悪質な地上げ行為は各所で散見されているのが現状である[2]。
2015年には、1980年代に地上げで宅地が虫食い状態になった、東京都新宿区富久町の一角にあった土地を都市再開発した富久クロスが完成し、話題となった。
中国の地上げ屋編集
民間業者が主体の日本とは対照的に中華人民共和国では土地が全て国有と公有であることから土地使用権の売買を財源にしている地方政府が暴力団や警察も動員して死傷者も出す地上げ行為を行って人権問題となっており[3][4][5][6]、強引に立ち退きを迫る政府に抵抗する住民が孤立化させられる釘子戸が世界的に注目された[7]。
脚注編集
注釈編集
出典編集
- ^ a b 篠原匡 (2008年3月6日). “ファンドバブルの裏に暴力団あり “スルガ流”ビジネスモデルが崩壊”. 日経ビジネスオンライン (日経BP). オリジナルの2016年11月11日時点におけるアーカイブ。 2016年11月10日閲覧。
- ^ “生魚の異臭が…東京屈指の“高級住宅街”で地上げトラブル「バブル期並みの悪質さ」 | ページ 4 | bizSPA!フレッシュ”. bizspa.jp. 2022年11月5日閲覧。
- ^ “中国:横行する強制立ち退き。拡大し続ける不満”. アムネスティ. (2012年10月12日) 2019年9月20日閲覧。
- ^ “中国農民「地上げ戦争」とバブルの行方”. ニューズウィーク. (2010年7月7日) 2019年9月20日閲覧。
- ^ “焦点:中国で「暴力辞さぬ」地上げ横行、地方債務の重圧で”. ロイター. (2013年9月4日) 2019年9月20日閲覧。
- ^ “中国の地上げ屋は地方政府 死傷者出した酷い役人31人を起訴”. NEWSポストセブン. (2011年10月19日) 2019年9月20日閲覧。
- ^ “陸の孤島、土地開発に抵抗し1軒だけ取り残された中国のネイルハウス「「釘子戸」”. カラパイア. (2014年5月1日) 2019年9月20日閲覧。