墓地、埋葬等に関する法律
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墓地、埋葬等に関する法律(ぼち、まいそうとうにかんするほうりつ、昭和23年5月31日法律第48号)は、墓地、納骨堂または火葬場の管理および埋葬等が、国民の宗教的感情に適合し、且つ公衆衛生その他公共の福祉の見地から、支障なく行われることを目的として、昭和23年(1948年)に制定された日本の法律である。墓埋法(ぼまいほう)、埋葬法(まいそうほう)などと略される。
墓地、埋葬等に関する法律 | |
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![]() 日本の法令 | |
通称・略称 | 墓埋法、埋葬法 |
法令番号 | 昭和23年5月31日法律第48号 |
種類 | 環境法 |
効力 | 現行法 |
主な内容 | 墓地、納骨堂又は火葬場の管理及び埋葬等について |
関連法令 | 廃棄物処理法 |
条文リンク | e-Gov法令検索 |
概説編集
この法律は、墓地、納骨堂又は火葬場の管理及び埋葬等が、国民の宗教的感情に適合し、且つ公衆衛生その他公共の福祉の見地から、支障なく行われることを目的とする(1条)。
人の屍体の埋葬と墓地に関して規定するものであり、イヌやネコなどの愛玩動物(ペット)の焼却、埋却およびペット霊園に関する事項は含まれていない。また、どのような葬式や宗教で執り行うかという点については、日本国憲法の「信教の自由」「思想・信条の自由」に抵触することから、そもそも法令には明示・規制されていない。
本法の委任に基づく省令として「墓地、埋葬等に関する法律施行規則」(昭和23年7月13日厚生省令第24号)が定められているほか、各都道府県および市町村の地方公共団体では、地域事情に応じて、埋葬方法および許認可条件の細目を規定するために「墓地、埋葬等に関する法律施行細則」を条例で定めている。
大阪府や東京都など大都市では、この細則によって土葬が禁止されているため、古い墳墓を改築したり移設するのに伴って、埋葬(土葬)屍体を移動する場合は、当該屍体を発掘し、火葬して焼骨にしてから墳墓へ改葬埋蔵する義務がある。
内容編集
埋葬等に関する原則、埋葬・火葬等の手続、墓地・火葬場等の許可等について定める。
埋葬等に関する原則編集
- 24時間以内の埋葬等の禁止
- 死体(もしくは妊娠7か月以上の胎児)は、死後(または死産後)24時間以内は、火葬(および土葬)してはならない(3条)。妊娠6ヶ月以下の胎児は対象外であるほか、感染症法30条の規定により、同法で定められている疾病、すなわち一類から三類までの感染症や、新型インフルエンザ・新型コロナウイルス等の感染症による死亡の場合もこの限りではない(該当感染症については、感染症法の項および新型インフルエンザ等対策特別措置法等関連法令条文を参照)。
- 墓地外の埋葬等の禁止
- 埋葬又は焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域に行ってはならない。火葬は、火葬場以外の施設で行ってはならない(4条)。
- 埋葬等の応諾義務
- 墓地・納骨堂・火葬場の管理者は、埋葬、焼骨の埋蔵、収蔵又は火葬の求めを受けたときは、正当の理由がなければこれを拒んではならない(13条)。
埋葬・火葬等の手続編集
- 埋葬・火葬等の許可
- 埋葬・火葬又は改葬を行おうとする者は、市町村長(特別区にあっては区長)の許可を受けなければならない(5条)。許可を受けるには、当該死体に係る死亡診断書(または、死体検案書)と死亡届を提出し、受理した市町村長(特別区にあっては区長)の許可証の交付を受ける。この許可を受けずに火葬・埋葬することは、本法の罰則規定の適用対象となるほか(21条)、刑法第190条の「死体損壊・遺棄罪」にも問われる行為である。
- 許可証のない埋葬、火葬等の禁止
- 墓地・納骨堂・火葬場の管理者は、埋葬許可証、火葬許可証、改葬許可証を受理した後でなければ、埋葬、焼骨の埋蔵をさせてはならない(14条)。
- 墓地等の管理者の報告義務
- 墓地・火葬場の管理者は、毎月5日までにその前月中の埋葬、火葬の状況を、その所在地の市町村長(特別区にあっては区長)に報告しなければならない(17条)。
- 市町村長の埋葬等の義務
- 死体の埋火葬を行う者がないとき又は判明しないときは、死亡地の市町村長(特別区にあっては区長)が行う(9条)。
墓地・火葬場等の許可等編集
構成編集
- 第1章 - 総則(第1条・第2条)
- 第2章 - 埋葬、火葬及び改葬(第3条〜第9条)
- 第3章 - 墓地、納骨堂及び火葬場(第10条〜第19条)
- 第3章の2 - 雑則(第19条の2・第19条の3)
- 第4章 - 罰則(第20条〜第22条)
- 附則
歴史編集
- 1880年(明治13年) - 東京府が、死亡届並埋葬証規則(甲第75号)を設置。
- 1884年(明治17年) - 太政官が、墓地及埋葬取締規則(第25号)を設置。
- 1886年(明治19年) - 陸軍省が、陸軍隊附下士卒埋葬規則(甲第34号)を設置。
- 1887年(明治20年) - 警視庁が、火葬場取締規則(第5号)を設置。
- 1888年(明治21年) - 長崎県が、流行病予防のため土葬を禁止。
- 1891年(明治24年) - 東京府が、元寺院境内共葬墓地使用規則を設置。