声帯ポリープ
声帯ポリープ(せいたいポリープ、英: Vocal cord polyp)はのど仏の裏側、喉頭にある声帯と呼ばれる器官の粘膜が一部腫脹または突出したもので、40~50歳代、やや女性に多いとされている。
概要
編集人間は声帯という器官を振動させて声を出している。だが、声帯に与える激しい刺激や炎症によって粘膜上皮下に出血が起きてしまう。このとき粘膜上皮下の血管が破れてしまうことで、血腫が作られてしまう。これが声帯ポリープと呼ばれるものである。発声を禁じれば自然に治癒する場合もあるが、手術によって切除しなければ治らないという例も多い。
他に声枯れをきたすものには、声帯結節、声帯溝症、喉頭の神経麻痺その他の疾患があるが、特に注意を要するのは喉頭癌などの悪性腫瘍である。声枯れが続くようであれば、早めに専門医を受診すべきである。
声帯ポリープや声帯結節を発症した場合、声枯れや音域の変化が発生するため、歌手・声優・タレント・ラジオパーソナリティの様に、場合によってはその職業生命をも左右されかねない者も存在する。特に歌手では手術をして切除しても歌声が完全には元に戻らない事も多く、声帯ポリープをきっかけに歌唱法や楽曲の方向性の変化を余儀なくされる者、場合によっては事実上の引退状態に追い込まれる者も見られる。
原因
編集声帯ポリープの主たる原因は無理な発声であり、歌手などの声の専門的な職業の他、教師のように声をよく使う職業の人が多く罹患する[1]。喫煙、局所の急性炎症(例えば風邪によるのどの炎症)などは無理な発声に伴い疾患を誘発する[1]。胃食道逆流症や慢性的な刺激物の吸入(工場からの煙霧やタバコの煙)なども原因となり、成人でよく見られ、ポリープは結節よりも大きくなり突出する傾向がある[2]。
声帯結節
編集声帯結節(せいたいけっせつ、英: Vocal cord nodule)は主に慢性的な声の使いすぎ(よく叫ぶ、歌唱、大声を出す、不自然に低い声を使うなど)が原因で起こる、小児にも発症する疾患[2]。声帯ポリープが一般的には片側の声帯にのみ生じるのに対し、声帯結節は両側の声帯に生じる[2]。声帯ポリープ、喉頭肉芽腫とともに、がんではない(良性の)増殖性病変で、声がれと息が漏れるようなかすれ声を引き起こす[2]。
治療
編集できて間もない声帯ポリープであれば、声を使わずに声帯を休めたり、消炎剤の吸入や内服で消えることもるが、保存的治療で改善しない場合や高度の病変の場合には、外科的切除が望まれる[1]。喉頭顕微鏡下手術(ラリンゴマイクロサージェリー)は、顕微鏡による拡大視のもとに行われる[1]。