外骨格

動物の体表の骨格

外骨格(がいこっかく、英語: exoskeleton)は皮膚骨格とも呼ばれる骨格構造のこと[1]内骨格対義語として使われ、皮膚に付属するように形成される骨格を指す。体を支える同時に身を守る機能も果たしている[1]昆虫甲殻類などの節足動物の硬いクチクラ貝類などの軟体動物貝殻、および腕足動物が含まれる[1]。また、カメ甲羅のような内骨格が露出したものや、魚類爬虫類のような骨格ではないものも、内骨格と対比して広義に外骨格と呼ばれることもある[1]

節足動物の外骨格編集

関節肢の構造と機構
 
節足動物の外骨格との断面
 
エビ背甲(赤色ハイライト)

節足動物はほぼすべてがクチクラでできた外骨格を有し、キチン質で、原則として関節で複数のユニットに分かれている。例えば体節は上下に背板(tergite)や腹板(sternite)などという板状の外骨格に、などの付属肢関節肢)は肢節(podomere)という円筒状の外骨格に分かれ、運動性に優れたものが多い[2][1]。体を支えて外敵から内部構造を守る以外にも、水棲種の場合は水圧の変化にも対応し、陸棲種の場合は表面にを分泌して体内の水分を保持する役割も果たしている[3]。なお、この外骨格は成長と共に大きくならず、他の脱皮動物と同様、代わりに既存の外骨格の内側から新しい外骨格を形成し、脱皮で古い外骨格を抜き捨てて成長する[4]

隣接した外骨格の関節部分は蛇腹様の構造をとり、可塑性をもつクチクラ(節間膜 arthrodial membrane)に覆われ、特に関節肢はピボット状の支点(関節丘 pivot joint, condyle)で連結される場合が多い[5][6]。外骨格の内部には、に相当するクチクラ質の内骨格(internal tendon, apodeme)が内側に突出しており、それを筋肉で引っ張ることによって各部を動かすことができる[7][2]。また、隣接した外骨格は関節周辺から潤滑物質を分泌することで、関節の摩擦を抑えることも知られている[8]

体の複数体節をまとまった部分(合体節)は節融合が進み、単体の外骨格に覆われる場合が多いが、その融合の程度は分類群により異なる[9]。例えば昆虫などは頭部の体節のみ外骨格が一体化しているが、一部の甲殻類、例えばカニエビなどの十脚類では頭部と胸部がまとめて頭胸部を形成し、背面が大きな甲羅状の外骨格(背甲)に覆われている[10]

軟体動物の外骨格編集

 
多板類(1-3)、二枚貝(4-15)と巻貝(16-23)の貝殻

軟体動物の外骨格は貝殻(shell, または単に「[11])といい、特にそれをもつ種類は一般に貝類と呼ぶ[12]。貝殻は単板類掘足類ツノガイ)・多板類ヒザラガイ)の構成種全般、ほとんどの二枚貝類、多くの腹足類巻貝)、およびごく一部の頭足類アンモナイトオウムガイなど)に見られる[12]石灰質で、炭酸カルシウムを主成分とする[13]

腕足動物の外骨格編集

 
様々な腕足動物

腕足動物の体は2枚の状の外骨格を上下に覆われ、種類によりリン酸カルシウム炭酸カルシウムキチンのいずれかを主成分とする[13]。一見して軟体動物二枚貝に似て、シャミセンガイチョウチンガイなど「貝」の名が付く種類もあるが、軟体動物の貝類とは別の分類群である[11]

人間とのかかわり編集

食用甲殻類貝類など、外骨格をもつ動物の中で食用種はあるが、外骨格自体は往々にして硬いため、料理とされても可食部は原則として内部の肉のみで、外骨格は食べられない。しかし、外骨格が生来脆いかあるいは脱皮したてで柔らかい場合には、外骨格に覆われるまま丸ごと食べられる場合もある(脱皮したてのカニ唐揚げなどにしたソフトシェルクラブなど)[14]

外骨格に類する人工物として、外部に骨格に相当する枠組みを持ち、体の外部に着用して筋力を補助する装置がある。これは単に「外骨格」ともいい[15]、特に動力を入っているパワードスーツ(powered suit)は「強化外骨格」(powered exoskeleton)とも呼ばれている。これはサイエンス・フィクションなどで幾つかのアイデアが示されているが、現実世界においても医療工業軍用などの分野での実用性に向けて開発が進められる[16][17]

一部の甲殻類、例えばシャコの一部の外骨格は頑丈かつ軽量のため、それを構成する特殊な構造からインスピレーションを受けて、丈夫さと軽さを兼ね備えた新素材の開発に繋がることが期待される[18][19]

脚注編集

  1. ^ a b c d e 第2版,世界大百科事典内言及, 百科事典マイペディア,ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典,精選版 日本国語大辞典,デジタル大辞泉,世界大百科事典. “外骨格とは” (日本語). コトバンク. 2022年4月6日閲覧。
  2. ^ a b Appendage - an overview | ScienceDirect Topics”. www.sciencedirect.com. 2022年4月6日閲覧。
  3. ^ exoskeleton | anatomy | Britannica” (英語). www.britannica.com. 2022年4月6日閲覧。
  4. ^ Ewer, John (2005-10). “How the Ecdysozoan Changed Its Coat”. PLoS Biology 3 (10): e349. doi:10.1371/journal.pbio.0030349. ISSN 1544-9173. PMC 1250302. PMID 16207077. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1250302/. 
  5. ^ Foelix, Rainer F. (2011). Biology of spiders (3rd ed ed.). New York: Oxford University Press. ISBN 978-0-19-981324-7. OCLC 693776865. https://www.academia.edu/13113405/Biology_of_Spiders 
  6. ^ Cattaert, Daniel (2019年4月10日). “Control of Locomotion in Crustaceans” (英語). The Oxford Handbook of Invertebrate Neurobiology. doi:10.1093/oxfordhb/9780190456757.001.0001/oxfordhb-9780190456757-e-23. 2022年4月6日閲覧。
  7. ^ Bitsch, Colette; Bitsch, Jacques (2002-02-01). “The endoskeletal structures in arthropods: cytology, morphology and evolution” (英語). Arthropod Structure & Development 30 (3): 159–177. doi:10.1016/S1467-8039(01)00032-9. ISSN 1467-8039. https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1467803901000329. 
  8. ^ Nadein, K.; Gorb, S. (2021-08-07). “Lubrication in the joints of insects (Arthropoda: Insecta)”. Journal of Zoology 316 (1): 24–39. doi:10.1111/jzo.12922. ISSN 0952-8369. https://zslpublications.onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/jzo.12922. 
  9. ^ Fusco, Giuseppe; Minelli, Alessandro (2013), Minelli, Alessandro; Boxshall, Geoffrey, eds. (英語), Arthropod Segmentation and Tagmosis, Springer Berlin Heidelberg, pp. 197–221, doi:10.1007/978-3-642-36160-9_9, ISBN 978-3-642-36159-3, http://link.springer.com/10.1007/978-3-662-45798-6_9 2022年4月6日閲覧。 
  10. ^ 富川光, 鳥越兼治「食卓で学ぶ甲殻類のからだのつくり : エビ・カニ・シャコ類の教材化に関する研究」『広島大学大学院教育学研究科紀要. 第二部文化教育開発関連領域』第56号、広島大学大学院教育学研究科、2007年、 17-22頁、 doi:10.15027/22762ISSN 1346-5554NAID 800180129162022年2月11日閲覧。
  11. ^ a b 第2版,日本大百科全書(ニッポニカ), 百科事典マイペディア,デジタル大辞泉,世界大百科事典. “貝とは” (日本語). コトバンク. 2022年4月8日閲覧。
  12. ^ a b 日本国語大辞典,栄養・生化学辞典, 日本大百科全書(ニッポニカ),ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典,精選版. “貝類とは” (日本語). コトバンク. 2022年4月8日閲覧。
  13. ^ a b Ruppert, Edward E.; Fox, Richard S.; Barnes, Robert D. (2004). Invertebrate zoology : a functional evolutionary approach. Internet Archive. Belmont, CA : Thomson-Brooks/Cole. ISBN 978-0-03-025982-1. https://archive.org/details/isbn_9780030259821 
  14. ^ Mouritsen, Ole G. (2009-10-13) (英語). Sushi: Food for the Eye, the Body and the Soul. Springer Science & Business Media. ISBN 978-1-4419-0618-2. https://books.google.com.tw/books?id=RJxuV-0eT4UC&pg=PA226&redir_esc=y#v=onepage&q&f=false 
  15. ^ McGowan, By Blake. “Industrial Exoskeletons: What You're Not Hearing -” (英語). Occupational Health & Safety. 2022年4月16日閲覧。
  16. ^ Li, Rita Yi Man; Ng, Daniel Ping Lung (2018). Chen, Jessie. ed. “Wearable Robotics, Industrial Robots and Construction Worker’s Safety and Health” (英語). Advances in Human Factors in Robots and Unmanned Systems (Cham: Springer International Publishing): 31–36. doi:10.1007/978-3-319-60384-1_4. ISBN 978-3-319-60384-1. https://www.researchgate.net/publication/318170755. 
  17. ^ Robotic exoskeletons are changing lives in surprising ways” (英語). NBC News. 2022年4月16日閲覧。
  18. ^ The mantis shrimp’s perfect shield” (英語). News. 2022年4月16日閲覧。
  19. ^ Tadayon, Maryam; Amini, Shahrouz; Wang, Zhongke; Miserez, Ali (2018-10-26). “Biomechanical Design of the Mantis Shrimp Saddle: A Biomineralized Spring Used for Rapid Raptorial Strikes” (English). iScience 8: 271–282. doi:10.1016/j.isci.2018.08.022. ISSN 2589-0042. PMC PMC6204534. PMID 30344051. https://www.cell.com/iscience/abstract/S2589-0042(18)30134-2. 

関連項目編集