多発外傷(たはつがいしょう)とは、身体の複数部位において外傷を負った場合を言う。一般的には頭部胸部腹部骨盤四肢など身体の2か所以上の部位に生命を脅かすような損傷がある場合を言う。重症外傷ではこの多発外傷を占める割合が非常に高い[1]。多発外傷患者の死亡率は28%である。死因は頭部外傷が68%、出血性ショックが28%、多臓器不全が4%である。多発外傷患者のうち79%が24時間以内に死亡している[2]

都市部では重症外傷は救命救急センターに集約される傾向が強まっているが、地方では一般外科整形外科当直医などが救急診療を行っている現状がある[3]。救急外来では、第一にバイタルサインを安定させるための処置を優先し、頭部・頚部・胸部・腹部・骨盤・四肢などの評価も並行する。多発外傷に対する治療には、複数の診療科が連携することが不可欠となる[4]

多発外傷では胸部外傷の合併率が高く、大量出血や合併症、凝固異常により致死的な外傷となる。胸部外傷における緊急手術は主に開胸術で行われ、胸腔鏡下手術による治療も行われているが、胸腔内出血が多量である場合は術野の確保が難しく止血に時間がかかってしまうため適さない[5]。胸部外傷は呼吸器外科医が救急診療を行う疾患の一つであり、肋骨骨折のみでは保存的加療となることが少なくないが、気胸や血胸を伴う場合は胸腔ドレナージを要することが多い。また、大量血胸などを認める場合には手術適応となる[6]

脚注 編集

註釈 編集

出典 編集

  1. ^ 『救急医療ハンドブック』日本情報出版株式会社、2004年、p.108
  2. ^ 多発外傷”. 船橋市立医療センター脳神経外科 (2002年7月29日). 2024年2月10日閲覧。
  3. ^ 外傷診療について”. 高松赤十字病院救急科. 2024年2月10日閲覧。
  4. ^ 多発外傷について”. メディカルノート (2020年8月31日). 2024年2月10日閲覧。
  5. ^ 凝固異常を呈した多発外傷例を胸腔鏡下で止血した一例”. 日本呼吸器外科学会 (2021年1月). 2024年2月10日閲覧。
  6. ^ 胸部外傷に対して入院加療を行った60症例の検討”. 日本呼吸器外科学会 (2022年7月). 2024年2月10日閲覧。

参考文献 編集