女性労働基準規則(じょせいろうどうきじゅんきそく、昭和61年1月27日労働省令第3号)は、女性労働基準を定めた厚生労働省令である。労働基準法第6章の2等に基づき定められたものである。

女性労働基準規則
日本国政府国章(準)
日本の法令
通称・略称 女性則
法令番号 昭和61年1月27日労働省令第3号
種類 労働法
効力 現行法令
公布 1986年1月27日
施行 1986年4月1日
主な内容 女性の労働基準を規定
関連法令 労働基準法
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1986年(昭和61年)に女子年少者労働基準規則のうち女子に係る規定を独立させ「女子労働基準規則」として施行、1997年(平成9年)の改正で現題名に変更された。施行当初は当時の労働基準法に多く定められていた女子の保護規定に対応したものとなっていたが、法改正により女性全般を保護する規定のほとんどは廃止され、現行規則は妊産婦の保護を主目的に女性の妊娠出産哺育等に有害である業務を規制する趣旨の内容となっている[1][2]

構成 編集

現行規則は全4条及び附則からなる。

第1条 編集

労働基準法第64条の2第2号の厚生労働省令で定める業務は、次のとおりとする。

  1. 人力により行われる土石、岩石若しくは鉱物(以下「鉱物等」という。)の掘削又は掘採の業務[3]
  2. 動力により行われる鉱物等の掘削又は掘採の業務(遠隔操作により行うものを除く。)[4]
  3. 発破による鉱物等の掘削又は掘採の業務[5]
  4. ずり、資材等の運搬若しくは覆工のコンクリートの打設等鉱物等の掘削又は掘採の業務に付随して行われる業務(鉱物等の掘削又は掘採に係る計画の作成、工程管理、品質管理、安全管理、保安管理その他の技術上の管理の業務並びに鉱物等の掘削又は掘採の業務に従事する者及び鉱物等の掘削又は掘採の業務に付随して行われる業務に従事する者の技術上の指導監督の業務を除く。)[6]

労働基準法第64条の2第2号により、満18歳以上の女性をこれらの業務に就かせてはならないこととなる。なお、満18歳に満たない者(性別を問わず)の坑内労働は労働基準法第63条により、業務内容にかかわらず禁止されている。

第2条 編集

労働基準法第64条の3第1項の規定により妊娠中の女性を就かせてはならない業務は、次のとおりとする(1項)。

重量物の就業制限
年齢 断続作業の場合
(kg)
継続作業の場合
(kg)
満16歳未満 12 8
満16歳以上
満18歳未満
25 15
満18歳以上 30 20
女性の就労制限一覧
妊婦 産後1年 一般
(満18歳以上)[7]
1 × × ×
2 ×
3 ×
4 ×
5 ×
6 ×
7 ×
8 ×
9 ×
10 ×
11 ×
12 ×
13 ×
14 ×
15 ×
16 ×
17 ×
18 × × ×
19 ×
20 ×
21 ×
22 ×
23 ×
24 × ×
  1. 表の左欄に掲げる年齢の区分に応じ、それぞれ同表の右欄に掲げる重量以上の重量物を取り扱う業務[8]
  2. ボイラー(労働安全衛生法施行令第1条第3号に規定するボイラーをいう。次号において同じ。)の取扱いの業務
  3. ボイラーの溶接の業務
  4. つり上げ荷重が5トン以上のクレーン若しくはデリック又は制限荷重が5トン以上の揚貨装置の運転の業務
  5. 運転中の原動機又は原動機から中間軸までの動力伝導装置の掃除、給油、検査、修理又はベルトの掛換えの業務
  6. クレーン、デリック又は揚貨装置の玉掛けの業務(二人以上の者によって行う玉掛けの業務における補助作業の業務を除く。)
  7. 動力により駆動される土木建築用機械又は船舶荷扱用機械の運転の業務
  8. 直径が25センチメートル以上の丸のこ盤(横切用丸のこ盤及び自動送り装置を有する丸のこ盤を除く。)又はのこ車の直径が75センチメートル以上の帯のこ盤(自動送り装置を有する帯のこ盤を除く。)に木材を送給する業務
  9. 操車場の構内における軌道車両の入換え、連結又は解放の業務
  10. 蒸気又は圧縮空気により駆動されるプレス機械又は鍛造機械を用いて行う金属加工の業務
  11. 動力により駆動されるプレス機械、シヤー等を用いて行う厚さが8ミリメートル以上の鋼板加工の業務
  12. 岩石又は鉱物の破砕機又は粉砕機に材料を送給する業務
  13. 土砂が崩壊するおそれのある場所又は深さが5メートル以上の地穴における業務
  14. 高さが5メートル以上の場所で、墜落により労働者が危害を受けるおそれのあるところにおける業務
  15. 足場の組立て、解体又は変更の業務(地上又は床上における補助作業の業務を除く。)
  16. 胸高直径が35センチメートル以上の立木の伐採の業務
  17. 機械集材装置、運材索道等を用いて行う木材の搬出の業務
  18. 次の各号に掲げる有害物を発散する場所の区分に応じ、それぞれ当該場所において行われる当該各号に定める業務
  19. 多量の高熱物体を取り扱う業務
  20. 著しく暑熱な場所における業務
  21. 多量の低温物体を取り扱う業務
  22. 著しく寒冷な場所における業務
  23. 異常気圧下における業務
  24. さく岩機、打機等身体に著しい振動を与える機械器具を用いて行う業務

労働基準法第64条の3第1項の規定により産後1年を経過しない女性を就かせてはならない業務は、前項第1号から第12号まで及び第15号から第24号までに掲げる業務とする。ただし、同項第2号から第12号まで、第15号から第17号まで及び第19号から第23号までに掲げる業務については、産後1年を経過しない女性が当該業務に従事しない旨を使用者に申し出た場合に限る(2項)。

第3条 編集

労働基準法第64条の3第2項の規定により同条第1項の規定を準用する者は、妊娠中の女性及び産後1年を経過しない女性以外の女性とし、これらの者を就かせてはならない業務は、前条第1項第1号及び第18号に掲げる業務とする。

第4条 編集

  1. 労働基準法第100条第3項に規定する女性主管局長及びその指定する所属の職員を雇用環境・均等局調査員という。
  2. 雇用環境・均等局調査員の携帯すべき証票は、別記様式による。
    労働基準法第100条3項が労働基準監督官の権限等について定めた労働基準法第101条・105条を準用していることから、調査員には監督官と同様に臨検尋問、帳簿・書類の提出要求の権限が認められ、同時に守秘義務、証票携帯義務が課せられる。

脚注 編集

  1. ^ 18歳未満の女性については女性労働基準規則と年少者労働基準規則の両方の適用を受ける。
  2. ^ 「哺育等」の「等」には、産褥、出産後の母体の回復等が含まれる(昭和61年3月20日基発151号、婦発69号)。
  3. ^ 「人力により行われる土石、岩石若しくは鉱物の掘削又は掘採の業務」とは、ショベルスコップ等の器具を用いて人力により行う掘削又は掘採の業務をいうものであること(平成18年10月11日基発1011001号)。
  4. ^ 「動力により行われる鉱物等の掘削又は掘採の業務」とは、削岩機、車両系建設機械等の機械を操作して行う掘削又は掘採の業務をいうものであること。「遠隔操作により行うもの」とは、トンネルボーリングマシンシールドマシンによる掘削等、掘削の作業が機械化され、掘削機械と離れた操作室において掘削作業を操作するもの等をいうものであること(平成18年10月11日基発1011001号)。
  5. ^ 「発破による鉱物等の掘削又は掘採の業務」には、装薬のための穿孔、装薬及び結線等の業務を含むものであること(平成18年10月11日基発1011001号)。
  6. ^ 「ずり、資材等の運搬若しくは覆工のコンクリートの打設等鉱物等の掘削又は掘採の業務に付随して行われる業務」とは、ずい道建設現場や鉱物の掘採現場における、人力、動力及び発破による掘削又は掘採の業務に伴って行われる当該掘削又は掘採以外の業務が該当するものであること。「ずり、資材等の運搬若しくは覆工のコンクリートの打設等」の業務はその例示であること。なお、ここでいう「鉱物等の掘削又は掘採の業務」は、第1号から第3号に掲げる坑内で行われる鉱物等の掘削又は掘採の業務に限定されるものではないこと。例えば、坑外で掘削した鉱物等を縦坑に投入し、坑内において業務を行う場合についても、「鉱物等の掘削又は掘採の業務に付随して行われる業務」に含まれるものであること。「鉱物等の掘削又は掘採に係る計画の作成、工程管理、品質管理、安全管理、保安管理その他の技術上の管理の業務」とは、例えば、ずい道建設工事の施工に当たり、施工内容、工程等の内容を把握した上で、その施工計画を作成し、工事全体の工程の把握、工程変更への適切な対応等具体的な工事の工程管理、品質確保の体制整備、検査及び試験の実施等の業務であること。また、労働安全衛生規則において規定されている事業者が講ずべき安全衛生管理措置のうち、技術者が行うことが想定されるものについてはこれに含まれるものであること。「鉱物等の掘削又は掘採の業務に従事する者及び鉱物等の掘削又は掘採の業務に付随して行われる業務に従事する者の技術上の指導監督の業務」とは、例えばずい道建設工事の施工に当たり、建設工事の施工を担当する外注の専門工事業者等に対し、施工方法の指示や、工事の進捗状況の監督、施工計画に変更があった場合に専門工事業者に対する必要な指示を行うこと等の業務であること。なお、資材等の運搬、コンクリートの打設等の作業について、作業方法の教育の業務であって、実演しながら行うものについては、「技術上の指導監督の業務」には当たらず、就業制限の対象となること(平成18年10月11日基発1011001号)。
  7. ^ 18歳未満の者は、年少者労働基準規則により、1~24号すべて就業させてはならない。
  8. ^ 「職場における腰痛予防対策指針」(平成25年6月18日基発0618第1号) によれば、「重量物を取り扱う作業を行わせる場合には、事業者は、単に重量制限のみを厳守させるのではなく、取扱い回数等の作業密度を考慮し、適切な作業時間、人員配置等に留意しつつ、次の対策を講ずること。なお、重量物とは製品、材料、荷物等のことを指し、人を対象とした抱上げ等の作業は含まない。」とされ、さらに「満18歳以上の男子労働者が人力のみにより取り扱う物の重量は、体重のおおむね40%以下となるように努めること。満18歳以上の女子労働者では、さらに男性が取り扱うことのできる重量の60%位までとすること。この重量を超える重量物を取り扱わせる場合、適切な姿勢にて身長差の少ない労働者2人以上にて行わせるように努めること。この場合、各々の労働者に重量が均一にかかるようにすること。」とされる。

関連項目 編集