妊娠高血圧症候群
妊娠高血圧症候群(にんしんこうけつあつしょうこうぐん、英: Hypertensive Disorders of Pregnancy(HDP))とは、主として妊娠後期に見られる高血圧と蛋白尿を主とする一連の疾患群の総称である。
妊娠高血圧症候群 | |
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分類および外部参照情報 | |
診療科・ 学術分野 | 産科学 |
ICD-10 | O13-O14 |
ICD-9-CM | 642 |
DiseasesDB | 5208 |
MedlinePlus | 000898 |
eMedicine | med/3250 |
MeSH | D046110 |
GeneReviews |
旧来より妊娠中毒症(にんしんちゅうどくしょう)として知られている。
名称編集
旧来より「妊娠中毒症」と呼ばれてきたが、2005年に日本産科婦人科学会により「妊娠高血圧症候群」と名称の変更がなされた[1]。
改名の大きな理由としては、病態が明らかにされてきたことがあり、「中毒症」という「原因毒」が存在するわけではないということが大きいとされている[1]。
病態編集
子宮動脈が何らかの要因によって収縮し、それによる昇圧物質が母体に分泌されることで高血圧が生じ一連の症状・所見を呈してくるという学説が広く受け入れられているが、はっきりとした証拠に基づいた定説は現段階では存在しない。
定義・分類編集
妊娠20週以降から分娩後12週までの期間に、高血圧または高血圧に蛋白尿を伴い、かつこれらの症状が単なる偶発合併症でないとき、妊娠高血圧症候群と診断する[2]。日本産科婦人科学会の周産期委員会の定義・分類がある。妊娠32週未満に発症するものを早発型(EO, early onset type)、32週以後に発症するものを遅発型(LO, late onset type)という[1]。
妊娠20週以降に高血圧のみ発症する場合は妊娠高血圧症、高血圧と蛋白尿を認める場合は妊娠高血圧腎症と分類される[3]。2018年からは蛋白尿を認めなくても、肝機能障害、腎機能障害、神経障害、血液凝固障害や胎児発育遅延となれば、妊娠高血圧腎症に分類されるようになった[3]。収縮期血圧が140mmHg以上(重症では160 mmHg以上)、あるいは拡張期血圧が90mmHg以上(重症では110 mmHg以上)になった場合、高血圧が発症したとする[3]。
臨床像編集
本症の病態の基本は血管の攣縮である。血管の攣縮によって腎血流が低下すれば、高血圧、蛋白尿、浮腫をおこし、脳血管が攣縮すれば子癇を起こし、肝血管が攣縮すればHELLP症候群を生ずる。胎盤血流が低下すれば、IUGRや胎児ジストレスを起こすこととなる。
治療編集
絶対安静をとる。発症予防のために食事療法を行う。
多くの降圧薬が妊婦では禁忌とされているため、通常の高血圧ではほとんど使用されていない塩酸ヒドララジン、α-メチルドパ等の内服ないし点滴静注による降圧療法が主とされてきた[4]。最近ではCa拮抗薬の有用性が少しずつ認められるようになってきており、欧米諸国のガイドラインでも使用を認めている。日本では多くのCa拮抗薬が妊娠中は禁忌とされているため、実際の医療現場では治療に混乱が見られ、解決されていない問題となっている。しかしながら、2022年12月にようやく、頻用されているCa拮抗薬、アムロジピンとニフェジピンの妊婦への禁忌指定が解除された[5]。それ以前からニカルジピンの注射薬は使用可能であったので、治療薬の選択肢が増えつつある。
脚注編集
- ^ a b c 伊藤昌春、草薙康城「診療の基本:妊娠高血圧症候群」(PDF)『日産婦誌』第58巻第5号、2006年5月、p.p.61-70、ISSN 0300-9165、2011年1月14日閲覧。
- ^ 病気がみえるVol.10 「産科」92ページ メディックメディア社発行 ISBN 978-4896324631
- ^ a b c “妊娠高血圧症候群|公益社団法人 日本産科婦人科学会”. www.jsog.or.jp. 2022年12月28日閲覧。
- ^ 医師国家試験のためのレビューブック 産婦人科 178ページ メディック・メディア ISBN 978-4896325003
- ^ “高血圧の治療に使われる2つの薬が"妊婦禁忌"解除へ ~妊娠中に高血圧を抱える女性が、安心して治療に臨める環境づくりに貢献~ | 国立成育医療研究センター”. www.ncchd.go.jp. 2022年12月27日閲覧。
参考文献編集
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関連項目編集
外部リンク編集
妊娠高血圧症候群 日本産科婦人科学会