宇宙皇子

日本の小説、メディアミックス作品

宇宙皇子』(うつのみこ)は、藤川桂介による歴史伝奇ファンタジー小説。1984年昭和59年)から1998年平成10年)まで執筆された。カバーと挿絵はいのまたむつみ[1]が担当。第3期よりカバー・イラストと口絵のみ担当(以降の本文挿絵は所 智一)。2013年9月時点で累計部数は1000万部を記録している[2]

宇宙皇子
著者 藤川桂介
イラスト いのまたむつみ
発行日 1984年6月 - 1998年6月
発行元 角川書店
ジャンル 歴史伝奇ファンタジー
日本の旗 日本
言語 日本語
形態 新書判 / 文庫判
ウィキポータル 文学
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地上編・天上編・妖夢編・煉獄編・黎明編の全5部構成。他に外伝「拾異伝」が出版。実際に日本各地に伝承され信仰されている修験者「役行者」こと役小角の弟子として、架空の人物「宇宙皇子」が、金剛山で葛藤しながら成長していく姿を描く。

物語の舞台は飛鳥地方周辺に始まり、現実の西暦600年代半ば(壬申の乱以降)から、数百年間にわたり展開している。なお作中では年代を星暦として表現している。

ストーリー 編集

頭部に角を持ちながらこの世に生を受け、年を経るにつれ“宇宙皇子”と呼ばれるようになった少年の数奇な一生が大まかなストーリーとなっている。

用語 編集

金剛山
実在の金剛山についてはリンク先を参照。
作中では、役小角が道場を開き、各地から集まった修験者達が共同で生活をしつつ、修験者としての修行を続ける修行場となっている。後述するように彼らは「鬼」と呼ばれ、厳しい修行によって卓越した技術・体術を持つ。作中での日本全国の修験者達の中心とも言うべき存在であり、朝廷によってたびたび討伐の対象になることもある。
葛城山
宇宙皇子が幼少期を過ごした山であり、小角が初めて修験者の道に入った聖域でもある。元々は少数の修験者が住んでいただけであったが、作中では宇宙皇子の発案もあり、「もう一つの金剛山」として禅童子と韓国広足、鬼の一部らが移り住み、禅童子の指導の下金剛山と同じように鬼達の修行場となっている。
金剛山や大峰山に役小角を慕って集まった修験者達、また宇宙皇子作中では、それ以外の日本各地に散在する霊山で修行する修験者達を「鬼」と呼ぶ。中には流民として流れるうちに辿り着いた者、宇宙皇子やその仲間の様に、幼少で両親を亡くし、小角や他の鬼によって拾われ、否応無しに鬼として育った者達も居る。
金剛山の鬼は小角を中心として禅童子・智童子という腹心の補佐、その下に金剛山を守護する軍鬼、鬼達の食料を司る庫裏鬼、祭事を司る祭鬼、朝鮮半島中国大陸から流れてきた者を纏めた客鬼、鬼達に小角の教えや飛鳥の法律を教える法鬼と言った様に社会構造を構築しており、各鬼は道士>鬼士>通常の鬼と段階分けされている。
後に小角直属の遊撃部隊として禅童子の指揮下にあって個々の判断で動く「遊鬼」が作られ、宇宙皇子とその仲間がこれに任命された。作者が意図したかどうかは不明だが、この「遊鬼」は後に道士・鬼士といった後進の指導者になる、一種の幹部候補生の様な存在になっている。

作品一覧 編集

  • 宇宙皇子 地上編:全10巻(新書 カドカワノベルズ/のち角川文庫)。新装版・出版ワークス(2014年)
  • 宇宙皇子 天上編:全10巻(カドカワノベルズ/のち角川文庫)
  • 宇宙皇子 妖夢編:全10巻(カドカワノベルズ/のち角川文庫)
  • 宇宙皇子 煉獄編:全10巻(カドカワノベルズのみ)
  • 宇宙皇子 黎明編:全8巻(角川文庫のみ)
  • 宇宙皇子 拾異伝:全4巻(角川文庫のみ)

アニメ版 編集

テレビ東京の開局25周年を記念した劇場アニメとして、1989年3月11日に『宇宙皇子(地上編)』(『ファイブスター物語』と併映)が、1990年9月22日に『天上編 宇宙皇子』が、それぞれ上映された。なお、後者は1990年から1992年にかけ、全13巻のOVAとして制作された作品のダイジェスト版である。

劇場版 編集

宇宙皇子
監督 吉田憲二
脚本 富田祐弘
寺田憲史
武上純希
原作 藤川桂介
製作 角川春樹
筧容徳(プロデューサー)
佐藤昭司(プロデューサー)
中島順三(プロデューサー)
出演者 古谷徹
山田栄子
池田秀一
音楽 河野土洋
石川光(音楽プロデューサー)
主題歌 ダ・カーポ『夢狩人』
製作会社 角川書店
配給 東宝
公開   1989年3月11日(地上編)
上映時間 82分
製作国   日本
言語 日本語
配給収入 4億円[3]
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スタッフ 編集

第1作
第2作
  • 企画 - 田宮武、鵜之沢伸、倉益琢眞
  • 製作 - 角川春樹、山科誠、国保徳丸
  • 監督 - 今沢哲男
  • 脚本 - 富田祐弘、武上純希
  • 作画監督 - 山崎展義
  • 美術 - 松本健治
  • 音楽 - 川崎真弘
  • スクリプター - いのまたむつみ、東映動画
  • プロデューサー - 横山賢二、小湊洋市、高野顕、飯島佐知子、岡哲男

主題歌 編集

オープニングテーマ
「夢狩人(ゆめかりうど)」(劇場版第一作)
作詞 - 藤川桂介 / 作曲 - ダ・カーポ
「未来への神話」(劇場版第二作、OVA)
作詞 - 荒木とよひさ / 作曲 - 都志見隆 / 編曲 - 山川恵津子 / 歌 - 浜田良美
エンディングテーマ
「かぎりなき愛を」(劇場版第一作)
作詞 - 藤川桂介 / 作曲 - ダ・カーポ
「蒼い瞳の中に」(劇場版第二作、OVA)
作詞 - 荒木とよひさ / 作曲 - 都志見隆 / 編曲 - 山川恵津子 / 歌 - 浜田良美

キャスト 編集

第1作
第2作

OVA 編集

主題歌については、劇場版の#主題歌を参照。

タイトル 編集

話数 タイトル 発売日
天上編1 皇子よ! 今こそ旅立て 1990年10月24日
天上編2 無残! 阿修羅王 1990年11月21日
天上編3 再会! 戯女市の女 1990年12月15日
天上編4 星狩場の聖神伝説 1991年1月23日
天上編5 天をゆさぶれ! 愛の絆 1991年2月20日
天上編6 執念の神狩り 1991年3月20日
天上編7 哀れ! 天人五衰 1991年6月26日
天上編8 花の森幻惑 1991年7月24日
天上編9 補陀落恋渡海 1991年8月21日
天上編10 日輪に焼身浄化 1991年10月23日
天上編11 めぐり逢い輪舞 1991年12月18日
天上編12 落葉帰根 1992年1月22日
天上編13 珍皇子よ試練を越えて 1992年2月29日

キャスト (OVA) 編集

カセットブック版 編集

1988年から1992年にかけて、カドカワカセットブックとして全10巻が発売された。

タイトル(カセットブック) 編集

  1. はるかに遠き都よ
  2. 明日香風よ挽歌を
  3. 妖かしの道 地獄道
  4. 西海道穏び(のび)流し
  5. 名もなき花々の散華
  6. 一会に賭けた日々
  7. まほろばに熱き轍を
  8. 愛しき太陽(てだ)に死す
  9. さらば夢狩人(かりゅうど)たち
  10. 愛、果てしなき飛翔

キャスト(カセットブック) 編集

脚注 編集

  1. ^ 書下ろしも含め、イラストを集成した『宇宙皇子 いのまたむつみ画集』(1987年)、『宇宙皇子Ⅱ いのまたむつみ画集』(1993年)がある、各角川書店。
  2. ^ “伝説の古代ファンタジー巨編 待望の新装版で復刊決定!”. ダ・ヴィンチニュース. (2013年9月6日). https://ddnavi.com/news/160598/a/ 2023年12月10日閲覧。 
  3. ^ 中川右介「資料編 角川映画作品データ 1976-1993」『角川映画 1976‐1986 日本を変えた10年』角川マガジンズ、2014年、284頁。ISBN 4-047-31905-8 

外部リンク 編集