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安全衛生委員会(あんぜんえいせいいいんかい)とは、労働安全衛生法において定められている、労働者の意見を事業者の行う安全衛生に関する措置に反映させる制度である。

目次

概要編集

労働安全衛生法等により、一定の事業者には事業場における安全衛生を確保するための措置(安全衛生管理体制)が義務付けられているが、安全衛生を確実なものとするためには事業者の方で一方的に制度を設けるだけでは不十分である。労働者が安全衛生に十分に関心を持ち、その意見が事業者の行う安全衛生に関する措置に反映される必要がある。その目的で委員会の設置規定が設けられている。

  • 安全委員会(労働安全衛生法第17条)
  • 衛生委員会(労働安全衛生法第18条)
  • 安全衛生委員会(労働安全衛生法第19条)

事業者は、委員会を毎月1回以上開催するようにしなければならず(労働安全衛生規則第23条1項)、委員会の議事で重要なものに係る記録を作成して、これを3年間保存しなければならない(労働安全衛生規則第23条4項)。また、事業者は委員会の開催の都度、遅滞なく委員会における議事の概要を労働者に周知させなければならない(労働安全衛生規則第23条3項)。委員会を設置したことやその開催状況について行政官庁への届出義務はない。

事業者は、議長たる委員以外の委員の半数については、当該事業場に労働者の過半数で組織する労働組合があるときにおいてはその労働組合[1]、ないときには労働者の過半数を代表する者の推薦に基づき指名しなければならない(労働安全衛生法第17条4項、第18条4項、第19条4項)[2]。委員会の構成員数については、事業場の規模、作業の実態に応じて適宜決定すべきものとされる。派遣先の事業者は、安全・衛生に関し経験を有する派遣労働者を委員会の委員に指名することができ、この場合当該派遣労働者の派遣期間が委員の任期中に終了しないよう配慮すべきである。

委員会を設けている事業者以外の事業者は、安全・衛生に関する事項について関係労働者の意見を聴くための機会を設けるようにしなければならない(労働安全衛生規則第23条の2)。

委員会の開催に要する時間は労働基準法上の労働時間であると解されるため、委員会が法定労働時間外に行われた場合には、出席した労働者に対して、使用者は割増賃金を支払わなければならない(昭和47年9月18日、旧労働省労働基準局長名通達602号)。

安全委員会編集

事業者は、以下の事業場ごとに、安全委員会を設けなければならない(労働安全衛生法第17条1項)。

  • 林業、鉱業、建設業、運送業(道路貨物運送業・港湾運送業)、製造業(木材・木製品製造業・化学工業・鉄鋼業・金属製品製造業・輸送用機械器具製造業)、清掃業、自動車整備業、機械修理業・・・50人以上の労働者を常時使用
  • 上記以外で、安全管理者の選任を要する業種・・・100人以上の労働者を常時使用

安全委員会は、以下の事項を調査審議し、事業者に対し意見を述べるものとする(労働安全衛生法第17条1項)。

  1. 労働者の危険防止のための基本となるべき対策に関すること
  2. 労働災害の原因及び再発防止対策で、安全に係るものに関すること
  3. その他、労働者の危険防止に関する重要事項(労働安全衛生規則第21条)

安全委員会の委員は、以下の者をもって構成される。安全委員会の議長は1.の者がなる(労働安全衛生法第17条2項、3項)。

  1. 総括安全衛生管理者、又は総括安全衛生管理者以外の者で当該事業場においてその事業の実施を統括管理するものもしくはそれに準ずる者のうちから事業者が指名したもの(1名)
  2. 安全管理者のうちから事業者が指名した者
  3. 当該事業場の労働者で、安全に関し経験を有する者のうちから事業者が指名した者

派遣労働者を受け入れている場合、安全委員会の設置義務は派遣先事業者のみに課せられる(労働者派遣法第45条)。

衛生委員会編集

事業者は、業種を問わず、常時50人以上の労働者を使用する事業場ごとに、衛生委員会を設けなければならない(労働安全衛生法第18条1項)。

衛生委員会は、以下の事項を調査審議し、事業者に対し意見を述べるものとする(労働安全衛生法第18条1項)。

  1. 労働者の健康障害を防止するための基本となるべき対策に関すること
  2. 労働者の健康の保持増進を図るための基本となるべき対策に関すること
  3. 労働災害の原因及び再発防止対策で、衛生に係るものに関すること
  4. その他、労働者の健康障害防止及び健康の保持増進に関する重要事項(労働安全衛生規則第22条)
    • 衛生に関する規程の作成
    • 危険性又は有害性等の調査及びその結果に基づき講ずる措置のうち、衛生に係るもの
    • 安全衛生に関する計画(衛生に係る部分)の作成・実施・評価・改善
    • 衛生教育の実施計画の作成
    • 新規化学物質等の有害性の調査並びにその結果に対する対策の樹立
    • 作業環境測定の結果及びその結果の評価に基づく対策の樹立
    • 健康診断等の結果[3]並びにその結果に対する対策の樹立
    • 労働者の健康の保持増進を図るため必要な措置の実施計画の作成
      • 平成29年6月施行の、産業医の巡視頻度を「少なくとも二月に1回」に変更するための調査審議を含む[4](平成29年3月31日基発0331第68号)。
    • 長時間にわたる労働による労働者の健康障害の防止を図るための対策の樹立
    • 労働者の精神的健康の保持増進を図るための対策の樹立
    • 厚生労働大臣、都道府県労働局長、労働基準監督署長、労働基準監督官、労働衛生専門官から文書により命令・指示・勧告・指導を受けた事項のうち労働者の健康障害の防止に関すること

衛生委員会の委員は、以下の者をもって構成される。衛生委員会の議長は1.の者がなる(労働安全衛生法第18条2項~4項)。

  1. 総括安全衛生管理者、又は総括安全衛生管理者以外の者で当該事業場においてその事業の実施を統括管理するものもしくはそれに準ずる者のうちから事業者が指名したもの(1名)
  2. 衛生管理者のうちから事業者が指名した者
  3. 産業医のうちから事業者が指名した者(専属の者である必要はない)
  4. 当該事業場の労働者で、衛生に関し経験を有する者のうちから事業者が指名した者
  5. 当該事業場の労働者で、作業環境測定を実施している作業環境測定士である者を指名することができる

派遣労働者を受け入れている場合、衛生委員会の設置義務は派遣元派遣先事業者ともに課せられる(労働者派遣法第45条)。

労働時間等設定改善委員会(労働時間等の設定の改善に関する特別措置法第6条・第7条)が設置されていない事業場において、一定の要件を満たす衛生委員会に、当該事業場における労働時間等の設定の改善に関する事項を調査審議させ、事業主に対して意見を述べさせることを労使協定に定めたときは、当該衛生委員会を労働時間等設定改善委員会とみなして、労使協定に代わる決議を行わせることができる(安全衛生委員会も同様であるが、安全委員会にはこの権限は認められていない)。

安全衛生委員会編集

事業者は、安全委員会及び衛生委員会を設けなければならないときは、それぞれの委員会の設置に代えて、安全衛生委員会を設置することができる(労働安全衛生法第19条1項)。

安全衛生委員会は、安全委員会及び衛生委員会の調査審議事項のすべてを調査審議し、事業者に対し意見を述べるものとする(労働安全衛生法第19条1項)。

安全衛生委員会の委員は、以下の者をもって構成される。安全衛生委員会の議長は1.の者がなる(労働安全衛生法第19条2項~4項)。

  1. 総括安全衛生管理者、又は総括安全衛生管理者以外の者で当該事業場においてその事業の実施を統括管理するものもしくはそれに準ずる者のうちから事業者が指名したもの(1名)
  2. 安全管理者及び衛生管理者のうちから事業者が指名した者
  3. 産業医のうちから事業者が指名した者(専属の者である必要はない)
  4. 当該事業場の労働者で、安全に関し経験を有する者のうちから事業者が指名した者
  5. 当該事業場の労働者で、衛生に関し経験を有する者のうちから事業者が指名した者
  6. 当該事業場の労働者で、作業環境測定を実施している作業環境測定士である者を指名することができる

脚注編集

  1. ^ 当該労働組合との間に労働協約によって別段の定めをした場合は、議長の選任及び半数の委員の指名についてはその限度において労働安全衛生法の規定を適用しない。
  2. ^ 委員の「半数」とは、最低基準としてその半数は労働者の過半数で組織する労働組合等の推薦に基づき指名しなければならない趣旨であるので、推薦に基づき指名された委員の数が半数を超えても差し支えない(平成17年1月26日基安計発0126002号)。
  3. ^ 「健康診断の結果」について、これに受信者個々の健康診断結果は含まない。職場の健康管理対策に資することができる内容のものであればよい。
  4. ^ 衛生委員会における調査審議の結果として産業医に提供すべきものとしては、例えば、以下の情報が考えられ、事業場の実情に応じて、適切に定める必要がある(平成29年3月31日基発0331第68号)。
    • 労働安全衛生法第66条の9に規定する健康への配慮が必要な労働者の氏名及びその労働時間数(同条の規定に基づく面接指導の実施又は面接指導に準ずる措置の対象となる者は、安衛則52条の8第2項各号に規定する者としている。)
    • 新規に使用される予定の化学物質・設備名及びこれらに係る作業条件・業務内容
    • 労働者の休業状況