富士政治大学校(ふじせいじだいがっこう)は、日本私塾養成学校民社同盟系の研修機関。公益財団法人富士社会教育センター内に1969年に設立された。初代学長は西村栄一

概要 編集

1969年、民社党委員長の西村栄一によって、静岡県御殿場市富士社会教育センターが創立された。同年4月に財団法人として認可を受け、7月に設立登記を完了した[1][2]。8月1日、センター内に労働組合員向けの研修機関として「富士政治大学校」を開設し、西村は同校の初代学長に就任した[3]。民社党初代委員長で当時常任顧問西尾末広が最高顧問に就任した[4]

神奈川県座間市議会議員の松橋淳郎によれば、「一説によると、同学校は、昭和40年代共産主義ファシズムに対して、中央情報局(CIA)の支援を受けて創立したとも言われている」という[5]

富士山麓の静岡県御殿場市に本校、岡山県ゼンセン中央教育センター内に西部本校が置かれ、同盟中立労連・純中立・一部総評系の労組から派遣された若手組合員に対し[注 1]、「二泊三日を標準としたカリキュラムで、民主社会主義の理論と実践活動についての集中教育」を行った[2]。教育期間中に民社党関係者が入党勧誘を行い、ここで入党した青年党員は「民社党青年隊」の中核メンバーとなった[2]。同校の研修を取材した貴重な体験ルポである宇治芳雄『洗脳の時代』(汐文社、1981年)および同書を紹介した斎藤貴男『「東京電力」研究 排除の系譜』(講談社、2012年)によれば、「全郵政ッ」「躍進ッ」または「全逓ッ」「粉砕ッ」といった掛け声を繰り返す「カケアイコール」、もたれかかってくる女性講師を胸で支えたり、女性講師と抱き合って風船を割ったりする「エンカウンティング・トレーニング」(心理学者の村田宏雄が指導)、講師が敵対する労組の組合員や民青などに扮して受講者を質問攻めにする「信念強化訓練」や「行動強化訓練」などファナティックな訓練が行われていたという[6]。また前述の松橋市議によれば、旧海軍江田島教育が取り入れられているという[5]

1979年に松下幸之助が設立した松下政経塾との共通性が指摘されており、横浜市立大学商学部の平智之は人的な連続性を裏付ける証拠として、鉄鋼労連委員長や金属労協議長を務めた宮田義二が同塾の塾長や相談役、鉄鋼労連委員長や連合会長を務めた鷲尾悦也電力総連会長や連合会長を務めた笹森清が同塾の評議員を務めていることをあげている[7]。2012年9月に死去した宮田の「お別れ会」は富士社会教育センターや松下政経塾など5団体の代表が発起人となって開催された[8]

新型コロナ問題が発生した2020年以降は政治専科開催困難となり、2021年は地方議員フォーラムと称し Zoom (アプリケーション)活用しオンライン開催。

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ 石上大和『民社党』によれば同盟系およびJC系の労組の若手活動家。斎藤貴男『「東京電力」研究 排除の系譜』によれば労働組合員や民社党員。

出典 編集

  1. ^ 当財団について”. 公益財団法人 富士社会教育センター. 2023年9月26日閲覧。
  2. ^ a b c 石上大和『民社党――中道連合の旗を振る「責任政党」』教育社、1978年、83頁
  3. ^ 『西村栄一伝―激動の生涯―』506頁
  4. ^ 三宅明正「インフォーマル・グループ小史―横船「二八会」史料から― (PDF) 」『市史研究よこはま』第14号、2002年
  5. ^ a b 富士政治大学校 講習会 座間市議会議員 松橋じゅんろう(2016年11月16日)
  6. ^ 斎藤貴男『「東京電力」研究 排除の系譜』講談社、2012年、304-308頁
  7. ^ 平智之「松下政経塾と「中田人脈」の研究 (3) (PDF) 」tomocci.com(2003年7月10日)
  8. ^ 宮田義二さんお別れの会(2012年9月1日) 金属労協/JCM(2012年9月1日)

参考文献 編集

  • 赤旗日曜版特別取材班「富士政治大学校のすべて」『労働運動』第168号(新日本出版社、1979年)
  • 向笠良一、戸木田嘉久、木元進一郎、高木督夫編著『工場調査――巨大工場と労働者階級(上・下)』(新日本出版社、1980年)
  • 中村菊男、高橋正則編著『西村栄一伝――激動の生涯』(富士社会教育センター、1980年)
  • 宇治芳雄『これが洗脳暴力狂育――同盟、鉄労等の富士政治大学校の実体』(国鉄労働組合大阪地方本部、1981年)
  • 青木慧『ニッポン丸はどこへ行く』(朝日新聞社、1982年)
    • 改題増補『日本式経営の現場』(講談社文庫、1987年)
  • 青木慧『政労使秘団――組織と人脈』(汐文社、1983年)
  • 芹沢寿良イデオロギー攻勢の今日的状況と労働組合運動の課題 (PDF) 」(高知短期大学『社会科学論集』第四六号 抜刷、1983年)
  • 小野実「反共労働者教育と富士政治大学校の役割」『労働運動』第222号(新日本出版社、1984年)
  • 日本の労働組合運動編集委員会編『労働組合組織論』(大月書店、1985年)
  • 高橋祐吉『企業社会と労働組合』(労働科学研究所出版部、1989年)
  • 伊藤郁男、黒沢博道編『民社党の光と影――元党本部書記局員による民社党研究論集』(富士社会教育センター、2008年)

関連項目 編集

外部リンク 編集