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対米外国投資委員会英語: Committee on Foreign Investment in the United StatesCFIUS(シフィウス))は米国政府の省庁間委員会であり、米国の企業や事業への外国の直接投資の国家安全保障への影響を検討する。財務長官が議長を務めるCFIUSには、国防総省国務省商務省などの16の米国の省庁の代表者と(最近では)国土安全保障省が含まれている。CFIUSは、1975年にジェラルド・フォード大統領の大統領令11858により設立された。レーガン大統領は、この評価プロセスを1988年の大統領令12661でCFIUSに委任した。これは、米国議会がエクソン・フロリオ改正条項で外国投資を審査する権限を大統領に与えることに対応したものである。

プロセス編集

外国企業による買収に関与する全ての企業は、自発的にCFIUSに通知することになっているが、CFIUSは自発的に提出されていない取引を検討することができる。

CFIUSは外国の買収者によって米国企業が取得された結果、企業の技術や資金が認可された国に移転する可能性を大半の審査での一番の関心事である[1]

CFIUSの審査は、30日間で買収を承認または法定調査の開始を決定する。後者が選択された場合、委員会は買収を許可するかまたは投資の撤回を命じるかどうかを決定するためにさらに45日を要する。CFIUSに提出されたほとんどの取引は、法定調査なしに承認される[2]。しかし、2012年にCFIUSに提出された114件のうち約40%が調査に移った[3]

CFIUSは、公衆衛生や電気通信などの重要なインフラの買収に関しては精査している[4]

CFIUSは、「中国とイランへの高度コンピュータの販売に関する制限」を参照している[5]。また、2005年初めのイギリスの企業「BAEシステムズ」によるユナイテッド・ディフェンス買収など米国の同盟国の企業との取引についても審査している。BAEシステムズの買収とCFIUSに提出された大部分の取引は難なく承認されているが、少なくとも1つの取引がCFIUSがより詳細に検査した時に中止された[6]

歴史編集

1975年、フォード大統領は大統領令11858を発令しCFIUSを創設した。 [7][8] 財務長官が議長となり、国務長官、国防長官、商務長官、経済問題担当大統領補佐官、国際経済政策委員会の事務局長で構成されていた。 大統領令ではまた、「委員会は直接投資とポートフォリオの両方における米国への外国投資の影響を監視し、そのような投資に関する米国の政策の実施を調整する行政機関内で第一の継続的責任を負う」と規定した。 特に、CFIUSは次のように指示されている:[9]

  1. 米国における外国投資の動向と重要な発展の分析の準備を手配する。
  2. 米国における将来の主要な外国政府投資に関する事前協議のために、外国政府との取り決めに関するガイダンスを提供する。
  3. 委員会の判断で米国の国益に重大な影響を及ぼす可能性のある米国への投資を見直す。
  4. 必要に応じて新たな法律や外国投資に関する規制の提案を検討する。

1980年、ジミー・カーター大統領は大統領令12188を発令し、通商代表部を加えたほか、国際経済政策委員会の事務局長に代わって大統領経済諮問委員会の議長を加えた [10]

1988年、日米貿易摩擦の最中での富士通によるフェアチャイルドセミコンダクターの買収提案によって引き起こされた議会の懸念によりエクソン・フロリオ修正条項が成立した[11][12]。エクソン・フロリオ修正条項は国家安全保障を脅かす合併、買収、引き継ぎ提案を大統領が拒否できる権限を与えるものであった。1988年、ロナルド・レーガン大統領は大統領令 12661を発令して司法長官行政管理予算局局長をCFIUSに加えた[13]

1992年、バード修正条項は、買収者が外国政府に代わって行動し、国家安全保障に影響を及ぼす合併、買収および買収の検討をCFIUSに要求した。1993年、ビル・クリントン大統領は大統領令12860に基づき、CIFUSに科学技術政策局長国家安全保障問題担当大統領補佐官、経済政策問題担当大統領補佐官を追加した[14]。2003年、ジョージ・W・ブッシュ大統領は大統領令13286号に基づきCIFUSのメンバーに国土安全保障長官を追加した[15]

2007年に外国投資及び国家安全保障法(FINSA)により、法定権限を持った委員会が設置されたほか、CIFUSのメンバーを6名の閣僚と検事総長に減らし、労働長官国家情報長官を追加し、ホワイトハウスが任命した7名を削除した。2008年、ブッシュ大統領は、法を実施する大統領令13456により米国貿易代表部と科学技術政策局長を追加した[16]。FINSAは、大統領に対し、一定の買収取引について国家安全保障調査を実施すること、議会のためにより幅広い監督業務を提供することを求めているほか、大統領が合併、買収および引き継ぎを中断または禁止する権限を持つ唯一の存在であり続けることを要求する

著明な事例編集

1990年、2012年、2016年、2017年、2018年に大統領が買収を阻止しているが[17]、他の買収案件も考慮されており、しばしば明確に反対されることもある:

  • 1990: ジョージ・H・W・ブッシュ大統領は「MAMCO Manufacturing」の中国機関への売却を無効にし、「航技進出口」に対しシアトルに拠点を置く「MAMCO」への投資の撤回を命じた[18]
  • 2000: NTTコミュニケーションズベリオの買収[要出典]
  • 2005: レノボによるIBMパーソナルコンピューター事業の買収はCFIUSに承認された[19]
  • 2005: ウゴ・チャベス政権とベネズエラの選挙機械の更新で契約したオランダの企業「スマートマティック」によるカリフォルニア州オークランドの「セコイア・ボウティング・システム」の買収[20]
  • 2005: 2005年6月、中国海洋石油総公司(中国国有の石油・ガス大手企業)の子会社(CNOOC Limited、ニューヨーク証券取引所と香港証券取引所に上場)は、アメリカの石油会社「ユノカル・コーポレーション」に185億ドルの現金買収提案を行い、シェブロン・テキサコによる提示額を超えトップになった。買収案はCFIUSとブッシュ政権によって反対されなかったが、一部の議員によって批判され、米国下院での投票に続いて、国家安全保障の観点から検討される必要があるという理由でブッシュ大統領が入札に言及した。2005年7月20日、ユノカル・コーポレーションはシェブロン・テキサコからの171億ドルの買収提案を受け入れると発表し、8月10日に臨時株主総会で買収が承認された[21]。8月2日、CNOOC Limitedは、米国の政治的緊張に言及し、入札からの撤退を発表した。
  • 2006: 国有企業の「ドバイ・ポーツ・ワールド」がニューヨーク港、ニュージャージー港など米国の一部の港で主にコンテナ船向けの多くのターミナルを賃借運営している「P&O」の買収を計画していた[22]。この買収は当初はCFIUS及びブッシュ大統領によって承認されていたが、最終的に議会によって反対された。
  • 2010 ロシアの企業がアメリカのウラン生産の20%をコントロールする「ウラニウム・ワン」の経営権を獲得した[23]。CIFIUSの国務省代表のホセ・フェルナンデスは賛成票を投じた。
  • 2012年: 中国企業の「サニーグループ」が所有する「ラルズ・コーポレーション」[24] が買収した小規模風力発電企業4社のプロジェクトがオレゴン州ボードマンにある米海軍の武器システム訓練施設に近かったため、バラク・オバマ大統領が発電企業の投資の撤回を命じた。
  • 2014年: レノボによるIBMのPCサーバ事業の買収がCFIUSに承認される[25]
  • 2016年: オバマ大統領は中国企業によるドイツ企業「アイクストロン」の米国子会社の買収を阻止した[26]フィリップスのルミレッズ部門を「GOスケールキャピタル」と「GRSベンチャーズ」に26億ドルで売却する取引が中国の窒化ガリウム応用に関する懸念から阻止された[27]。また、フェアチャイルドセミコンダクターはCFIUSの監査を理由に中国企業側の買収提案支持を撤回した[28]
  • 2017年:トランプ大統領は中国政府関連ファンドによる米半導体メーカー「ラティス・セミコンダクター」の買収を阻止した[29]。また、CFIUSはアリババの買収も阻止し[30]日本ソフトバンクグループフォートレス・インベストメント・グループを子会社化した際はアリババとの関係を警戒されてCFIUSによる業務運営への制限を受けた[31]
  • 2018年:トランプ大統領はCFIUSの異議に基づきシンガポール半導体大手ブロードコムによる米クアルコム買収を阻止した[32]

通知と調査編集

CFIUSの通知と調査(1988–2011)[33][34][35]

通知 調査 通知撤回 大統領決定
1988 14 1 0 1
1989 204 5 2 3
1990 295 6 2 4
1991 152 1 0 1
1992 106 2 1 1
1993 82 0 0 0
1994 69 0 0 0
1995 81 0 0 0
1996 55 0 0 0
1997 62 0 0 0
1998 65 2 2 0
1999 79 0 0 0
2000 72 1 0 1
2001 55 1 1 0
2002 43 0 0 0
2003 41 2 1 1
2004 53 2 2 0
2005 65 2 2 0
2006 111 7 19 2
2007 138 6 15 0
2008 155 23 23 0
2009 65 25 7 0
2010 93 35 12 0
2011 111 40 6 0
2012 114 45 22 1
2013 97 3 48 5
2014 147 3 51 9
Total 2,380 219 117 15

参考文献編集

  1. ^ Schlager, Ivan; Beahn, John; Gafni, Jonathan; Tuesley, Malcolm; Gruenspecht, Joshua; Kabealo, John. "Implications of National Security Reviews on Foreign Acquisitions of US Businesses". Transaction Advisors. ISSN 2329-9134.
  2. ^ Sills, Gay Hartwell (2006年). “Committee on Foreign Investments in the United States (CFIUS)”. U.S. Department of Treasury, Office of the Assistant Secretary International Affairs, Office of International Investment. 2006年3月25日時点のオリジナル[リンク切れ]よりアーカイブ。2006年3月26日閲覧。
  3. ^ Steptoe & Johnson LLP (2014年1月13日). “CFIUS Report: Significant Increase In Scuttled Deals”. 2014年1月20日閲覧。
  4. ^ Richardson, Jeffrey. "A Modern Approach to Tackling CFIUS Concerns". Transaction Advisors. ISSN 2329-9134.
  5. ^ Rash, Wayne (2005年1月24日). “Suppose IBM-Lenovo Deal Doesn't Happen”. eWeek.com. http://www.eweek.com/article2/0,1759,1754093,00.asp 
  6. ^ McCarthy, Ellen (2006年3月24日). “Purchase by Israeli Firm Called Off”. Washington Post. p. A06. http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2006/03/23/AR2006032302382.html 
  7. ^ 大統領令 11858 of 5 7, 1975, 40 F.R. 20263
  8. ^ United States House Committee on Ways and Means (December 2010). Overview and Compilation of U.S Trade Statues. I. Government Printing Office. pp. 290–291. ISBN 978-0-16-087511-3. https://books.google.com/books?id=epQXv23t84UC&pg=PA290. 
  9. ^ Jackson, James K. (2008年4月8日). “The Committee on Foreign Investment in the United States (CFIUS)”. Congressional Research Service. pp. 3. 2009年1月25日時点のオリジナル[リンク切れ]よりアーカイブ。2009年1月2日閲覧。
  10. ^ 大統領令 12188 of 1 2, 1980, 45 F.R. 969
  11. ^ Omnibus Trade and Competitiveness Act of 1988, sec. 5021, Pub.L. 100–418, 102 Stat. 1425 1988年8月23日制定
  12. ^ “Cold Feet: Fujitsu drops its Fairchild bid”. TIME Magazine. (1987年3月30日). http://www.time.com/time/magazine/article/0,9171,963877,00.html 
  13. ^ 大統領令 12661 of 12 27, 1988, 54 F.R. 779
  14. ^ 大統領令 12860 of 9 3, 1993, 58 F.R. 47201
  15. ^ 大統領令 13286, sec. 57, of 2 28, 2003
  16. ^ 大統領令 13456 of 1 23, 2008
  17. ^ “Obama blocks Chinese purchase of small Oregon wind farm project”. Associated Press. The Oregonian. (2012年9月28日). http://www.oregonlive.com/environment/index.ssf/2012/09/oregon_wind_farm_purchase_by_c.html 2012年9月28日閲覧。 
  18. ^ Bush, George (1990年2月1日). “Message to the Congress on the China National Aero-Technology Import and Export Corporation Divestiture of MAMCO Manufacturing, Incorporated”. Federation of American Scientists. 2012年9月28日閲覧。
  19. ^ “レノボによるIBMのPC事業買収が大きく前進--米政府が承認”. CNET. (2005年3月10日). https://japan.cnet.com/article/20081208/ 2018年4月6日閲覧。 
  20. ^ Golden, Tim (2006年10月31日). “Voting Machine Company Submits to Inquiry”. The New York Times. https://www.nytimes.com/2006/10/31/us/politics/31vote.html 2010年4月30日閲覧。 
  21. ^ http://www.nicmr.com/nicmr/data/topics/us/us2005_03.html 資本市場の主な出来事]
  22. ^ "22 PORTS IN ARAB DEAL, NOT JUST 6 AS REPORTED". WND. February 24, 2006.
  23. ^ Qiu, Linda (2016年6月30日). “Donald Trump inaccurately suggests Clinton got paid to approve Russia uranium deal”. Politifact. http://www.politifact.com/truth-o-meter/statements/2016/jun/30/donald-trump/donald-trump-inaccurately-suggests-clinton-got-pai/ 2017年7月29日閲覧。 
  24. ^ Banerjee, Neela, and Don Lee, "Obama blocks Chinese firm's Oregon wind farm projects", LA Times, September 29, 2012.
  25. ^ “米IBM:レノボへのサーバー事業売却でCFIUSから承認”. ブルームバーグ. (2014年8月16日). https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2014-08-16/NADQ046K50Y701 2018年4月6日閲覧。 
  26. ^ McLaughlin, David (2016年12月2日). “Obama Blocks Chinese Takeover of Aixtron as U.S. Security Risk”. Bloomberg News. https://www.bloomberg.com/news/articles/2016-12-02/obama-blocks-chinese-takeover-of-aixtron-as-u-s-security-risk 2017年2月27日閲覧。 
  27. ^ Paul Mozur; Jane Perlez (2016年2月5日). “Concern Grows in U.S. Over China’s Drive to Make Chips”. The New York Times: p. B1. https://www.nytimes.com/2016/02/05/technology/concern-grows-in-us-over-chinas-drive-to-make-chips.html 2017年2月27日閲覧。 
  28. ^ Fairchildの買収をFTCが承認 - ON Semiconductorの狙いを探る” (2016年8月30日). 2018年4月6日閲覧。
  29. ^ 中国政府関連ファンドの米ラティス買収、トランプ大統領が阻止reuters(2017年9月14日)2018年3月3日閲覧
  30. ^ アリババ傘下アント、マネーグラム買収断念-米政府の承認得られず”. ブルームバーグ (2018年1月3日). 2018年4月6日閲覧。
  31. ^ 米当局、ソフトバンクに業務制限 投資会社買収で、中国との関係警戒”. Bloomberg (2018年4月6日). 2018年4月6日閲覧。
  32. ^ トランプ氏、大統領令でブロードコムによる米クアルコム買収を阻止Reuters(2018年3月13日)2018年3月13日閲覧
  33. ^ Graham, Edward M; David M. Marchick (May 2006). US National Security and Foreign Direct Investment. Peterson Institute. p. 57. ISBN 978-0-88132-391-7. http://www.petersoninstitute.org/publications/chapters_preview/3918/02iie3918.pdf. 
  34. ^ CFIUS, "Covered Transactions, Withdrawals, and Presidential Decisions 2006-2008" Archived 2009年8月6日, at the Wayback Machine., Accessed March 27, 2009.
  35. ^ CFIUS, "Covered Transactions, Withdrawals, and Presidential Decisions 2008-2010", Accessed August 25, 2011.

外部リンク編集