居酒屋 (小説)

フランスのエミール・ゾラの1877年の小説

居酒屋』(いざかや、原題:L'assommoir )は、フランスの文豪エミール・ゾラ1877年に書いた自然主義の小説で代表作。20巻シリーズのルーゴン・マッカール叢書の第7巻。原題の「ラソモワール」は、この物語の中で頻繁に登場する居酒屋の名前。小説『ナナ』は本作の主人公ジェルヴェーズの娘ナナの成長後を描いた作品である。

居酒屋
L'assommoir
1877年版の表紙
1877年版の表紙
作者 エミール・ゾラ
フランスの旗 フランス
言語 フランス語
ジャンル 長編小説
刊本情報
出版年月日 1877年
シリーズ情報
次作ナナ (小説)
ウィキポータル 文学 ポータル 書物
テンプレートを表示
1879年アメリカで舞台劇として上演された際のポスター、オーガスティン・ダリーの絵

あらすじ 編集

若く美しいジェルヴェーズ (Gervaise) は、クロード (Claude) とエティエンヌ (Etienne) という息子2人と恋人のランティエ (Lantier) と一緒にパリに住んでいる。ランティエは何も言わずに稼いだ金を持ったまま失踪してしまい、置き去りにされたジェルヴェーズは貧苦に悩む。しかしジェルヴェーズはクーポー (Coupeau) という労働者を知り、クーポーは彼女を愛し、決して暴力はふるわないと約束し、二人は結婚し、よく働いて3年がたち、アンナ (Anna) という娘が生まれる。ジェルヴェーズは洗濯屋を開く。

ある日、通りから呼んでいるナナを見るために、クーポーは窓の近くに寄り、そこから地上に転落し、働けなくなり、酒びたりになる。ある日の昼飯の時、ランティエが戻ってきて三人が奇妙な同居を始める。クーポーはジェルヴェーズを叩くようになり、ランティエはよく働くジェルヴェーズとの関係を復活させる。ジェルヴェーズの同居は土地の人の反感をかい、店はさびれ、金がなくなり、ランティエは去ってゆき、クーポーは気が狂って病院で死ぬ。ジェルヴェーズは孤独のまま死に、死後2日たって発見された。

登場人物 編集

  • ジェルヴェーズ・マッカール (Gervaise Macquart)
洗濯女。足が不自由。1828年生まれ。
4歳年上のランティエとの間に14歳でクロードを、18歳でエチエンヌを産む。
クーポーと結婚後に洗濯屋を開業。クーポーとの間にアンナを産む。
  • アンリ・クーポー (Henri Coupeau)
ジェルヴェーズの夫。ブリキ屋根職人。屋根から落下し怪我をして以来、酒の味を覚えアルコール依存症となる。またジェルヴェーズやアンナへ暴力を振るう。
最終的にサント・アンヌ病院に7回抑留され、そこで死亡した。
  • オーギュスト・ランティエ (Auguste Lantier)
ジェルベーズの内縁の夫。帽子屋。クロードとエティエンヌの父。
駆け落ちしジェルヴェーズの前から姿を消す。後にクーポー夫妻の店に居候する。
  • クロード・ランティエ (Claude Lantier)
ランティエとジェルヴェーズの長男。制作の主人公。1842年生まれ。
  • エチエンヌ・ランティエ (Etienne Lantier)
ランティエとジェルヴェーズの次男。グージェと共に鍛冶場で働く。ジェルミナールの主人公。1846年生まれ。
  • アンナ・クーポー (Anna Coupeau)
クーポーとジェルヴェーズの娘。造花女工になるが、後に家出。ナナの主人公。1852年生まれ。
  • グージェ (Gouje)
鍛冶屋。クーポー夫妻の隣人。母親と同居している。ジェルヴェーズに思いを寄せ、洗濯屋の開店資金を貸す。
  • ロリユ夫妻 (Les Lorilleux)
クーポーの次姉と夫。金細工職人。ジェルヴェーズを良く思っていない。アンナの名付け親。
  • クーポー婆さん (Maman Coupeau)
クーポーの母。クーポー夫妻と同居。
  • マダム・ルラ (Madame Lerat)
クーポーの長姉。造花女工。未亡人。
  • ヴィルジニー・ポワソン (Virginie Poisson)
ランティエの駆け落ち相手であるアデールの姉。ジェルヴェーズとは小説の冒頭で大喧嘩する。後にポワソンという巡査と結婚。
  • ボッシュ夫妻 (Les Boche)
クーポー夫妻の住むアパートの門番。
  • コロンブ (Le père Colombe)
居酒屋「ラ・ソモワール」の主人。
  • バズージュ (Le père Bazouge)
葬儀人夫。
  • ビジャール (Le père Bijard)
酒乱の錠前職人。妻や娘のラリーを暴行の末に殺す。

日本語訳一覧 編集

  • 「酒場」 水上斎訳 天佑社、1923年
  • 木村幹訳 新潮社、1923年、復刻 本の友社、1999年
  • 「酒場」 原田譲訳 榎本書店、1926年
  • 河原万吉ほか訳 潮文閣、1927年
  • 斎藤一寛訳 上・下 春陽堂世界名作文庫、1932-33年、角川文庫、1956年、復刻版・ゆまに書房、2008年
  • 田辺貞之助河内清共訳 上下 三笠文庫、1952年、岩波文庫、1955年/集英社・筑摩書房版「文学全集」にも収録
  • 戸張智雄訳 三笠書房、1956年
  • 関義安東次男訳 上・下 青木書店、1956年、関義・改訳、旺文社文庫、1966年
  • 黒田憲治訳 河出書房新社、1961年、新版1967年、1980年
  • 古賀照一訳 世界文学全集 新潮文学全集 新潮社、1970年、新潮文庫 改版2006年
  • 清水徹訳 世界文学全集 集英社、1974年、新版1978年、1990年

映像化 編集

居酒屋 (1931年の映画)
アメリカ合衆国の映画
原題:The Struggle
監督:D・W・グリフィス
主演:ハル・スケリー英語版
居酒屋 (1933年の映画)
フランスの映画
原題:L'Assommoir
監督:ガストン・ルーデ
主演:リーヌ・ノロ
居酒屋 (1956年の映画)
フランスの映画
原題:Gervaise
監督:ルネ・クレマン
主演:マリア・シェル

外部リンク 編集