メインメニューを開く

山姥切国広(やまんばぎりくにひろ[1])は、安土桃山時代刀工堀川国広作の日本刀重要文化財(工芸品)に指定されている(個人蔵)。重要文化財としての名称は「刀〈銘二九州日向住国広作/天正十八年庚(刀)弐月吉日平顕長(山姥切)〉/かたな〈めいきゅうしゅうひゅうがのじゅうくにひろさく/てんしょうじゅうはちねんかのえ(かたな)にがつきちじつたいらのあきなが(やまうばぎり)〉[2][3]」。

概要編集

南北朝時代備前長船派の刀工・長義(「ながよし」または「ちょうぎ」)作の刀・山姥切長義(徳川美術館蔵、重要文化財「刀〈銘本作長義天正十八年庚寅五月三日二九州日向住国広銘打/長尾新五郎平朝臣顕長所持云々〉」)の写しとして、堀川国広が作った刀である。

国広は新刀[4]の初期を代表する刀工。日向国出身で、現存作刀の年紀は天正4年(1576年)から慶長18年(1613年)に及ぶ。国広はもと飫肥藩伊東家の家臣であったが、同家没落後は山伏となり、九州各地で作刀した。天正12年(1584年)作の太刀の銘に「日州古屋之住国広山伏之時造之」とある。天正18年(1590年)には野州足利(栃木県足利市)で作刀している。国広は豊臣家と縁の深い刀工で、慶長4年(1599年)以降は京一条堀川に定住し、多くの弟子を育てた。慶長19年(1614年)頃に没したと推定される[5][6]

本作は刃長70.6センチ、反り2.8センチ。身幅広く、反り浅く、先反りが付いて大切先となる、新刀期の刀姿である。国広の地鉄には板目肌が流れてざんぐりとするもの[7]と、肌がよく約(つ)むものとがあるが、本作の地鉄は前者である。刃文は湾れ(のたれ)主調で互の目(ぐのめ)交じり、足・葉(よう)が盛んに入り、帽子(切先の刃文)は乱れ込んで先掃きかけて返る。彫物は表裏に棒樋(ぼうひ)を掻き通す。茎(なかご)は生ぶ。茎先は栗尻。目釘孔は1個。銘は表に「九州日向住国広作」、裏に「天正十八年庚寅弐月吉日 平顕長」と切る。本作は、国広が足利城長尾顕長からの依頼を受け、顕長所有の備前長船長義の刀を写して打ったものである。長義の刀は天正14年(1586年)に顕長が北条氏直から拝領したものであった。天正18年(1590年)、国広は長義の刀を磨り上げる[8]とともに、その写しとして本刀を打った。国広には「野州足利学校打之」銘の短刀があり、本刀も足利で打ったものと思われる。「山姥切」の号の由来は不明であり、「山姥切」が本来、本刀と本科(本歌)の長義の刀のどちらを指すのかも不明である[9][10][11]

来歴編集

戦前には旧国宝指定および重要美術品認定を受けておらず、1962年6月21日に重要文化財に指定された[12]

2017年3月4日から4月2日にかけて、足利市立美術館で約20年ぶりに公開展示された[13]。期間中の来場者数は延べ37,800人で、同館の設立以来、過去最多。その8割以上が10~30代の女性だったとされ、ブラウザゲーム『刀剣乱舞』の影響が指摘される[13][14][15][16]

脚注編集

  1. ^ 終了しました――特別展『今、超克のとき。山姥切国広 いざ、足利。』
  2. ^ 国指定文化財等データベース
  3. ^ 文化遺産データベース
  4. ^ 慶長期以降の日本刀を指す。
  5. ^ 『日本のかたな』p.33, p.329
  6. ^ 『刀工大鑑 太鼓版』、p.202 - 203
  7. ^ 「板目肌流れる」とは、地鉄の鍛え肌が「板目」を主調として「柾目」(平行線状)が混じるものをいう。「ざんぐりとする」は堀川物の地鉄を形容する際に使われる用語で、諸説あるが、鍛え肌の模様が目立って見える状態を指すとされる。
  8. ^ 「磨り上げる」とは、元来長寸の太刀を、実用上の理由から短く切り詰めて仕立て直すこと。
  9. ^ 『日本のかたな』p.329
  10. ^ 『刀工大鑑 太鼓版』、p.202 - 203
  11. ^ 作風説明は『日本のかたな』p.329および『解説版 新指定重要文化財 6 工芸品III』、pp.232 - 233、による。
  12. ^ 昭和37年6月21日文部省告示第26号
  13. ^ a b 特別展『今、超克のとき。山姥切国広 いざ、足利。』 - 栃木県足利市公式サイト
  14. ^ 写真でつづる「山姥切国広展」
  15. ^ 「山姥切国--広」展 最多入館で幕 3万7820人、刀剣に熱く ゲーム話題、女性続々 足利市立美術館 /栃木”. 毎日新聞. 2018年1月5日閲覧。
  16. ^ 「山姥切」展、経済効果4億円 足利市立美術館、入館者最多3万7820人 栃木”. 産経新聞. 2018年1月5日閲覧。

参考文献編集

  • 『解説版 新指定重要文化財 6 工芸品III』、毎日新聞社、1982
  • 東京国立博物館編『日本のかたな』(展覧会図録)、1997
  • 得能一男・光芸出版『刀工大鑑 太鼓版』、光芸出版、2013、ISBN 978-4769401476

関連項目編集