岸博幸

日本の大学院教授、実業家、元官僚 (1962-)

岸 博幸(きし ひろゆき、1962年昭和37年〉9月1日 - )は、日本大学院教授実業家、元官僚慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授、専門分野は経営戦略、メディア/コンテンツ・ビジネス論、経済政策[1]。また、RIZIN(格闘技団体)アドバイザー

きし ひろゆき
岸 博幸
生誕 (1962-09-01) 1962年9月1日(61歳)
日本の旗 日本 東京都
出身校 一橋大学経済学部卒業
コロンビア大学大学院修了
職業 国家公務員経済産業省
大学教員
会社役員
テンプレートを表示

通商産業省(現:経済産業省)官僚、元総務大臣秘書官。元内閣官房参与

来歴・人物 編集

東京都生まれ[2]日比谷高等学校を経て[3]一橋大学経済学部卒業[4]

1986年(昭和61年)、大学を卒業し、通商産業省(経済産業省)に入省[5][6]。同期入省者には、鈴木寛藤末健三中尾泰久後藤久典らがいた。1990年よりコロンビア大学経営大学院に留学し、MBA取得[5][6][7][8]

通産省通商政策局総務課、工業技術院総務部産業科学技術開発室を経て、1995年より朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO)に出向、1998年、通産省に復職。その後、資源エネルギー庁長官官房国際資源課を経て、2000年、内閣官房情報通信技術(IT)担当室に出向しグループリーダーを務めた[9]

2001年(平成13年)の第1次小泉内閣発足を機に経済財政政策担当大臣補佐官に就任(大臣は竹中平蔵)、2002年からは金融担当大臣補佐官兼務。2004年以降は竹中経済財政政策担当・郵政民営化担当大臣政務担当秘書官に就任[6][7][5]。側近として、情報通信政策や郵政民営化などに携わる。「B層」の言葉が生まれるきっかけとなった宣伝企画立案を行なった、広告会社・スリードの代表を竹中に引き合わせたのも岸である。

また、1998年坂本龍一らと共にメディア・アーティスト協会を設立、同協会事務局長を2000年に同協会が解散するまで務め、著作権保護のあり方についての議論に加わった。

2004年からは慶應義塾大学助教授に就任。総務大臣となった竹中の下で総務大臣秘書官を兼任した。2006年第3次小泉改造内閣内閣総辞職及び、竹中の議員辞職にあわせ、経済産業省を退官し、慶應義塾大学デジタルメディア・コンテンツ統合研究機構准教授に就任、2年後の2008年に慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授に就任した[6][7][5]。ほかに、2007年から2010年3月までエイベックス・グループ・ホールディングス株式会社取締役コーポレート企画本部担当[5]。2008年から総務省通信・放送問題タスクフォース委員も務める[5]

2008年6月には、衆議院議員江田憲司や元財務官僚の高橋洋一らと共に「官僚国家日本を変える元官僚の会(脱藩官僚の会)」を設立。いわゆる脱藩官僚としてテレビ番組などにも出演する[10]

2010年3月よりエイベックス・マーケティング株式会社取締役。同年4月よりエイベックス・グループ・ホールディングス株式会社顧問[5][7]。新生ホームサービス株式会社特別顧問。2013年から大阪市特別顧問大阪府特別顧問、大阪府市統合本部特別顧問[11][12]。いわゆる維新系の学者、評論家の一人である。

2021年7月9日、内閣官房参与を命じられた[13]。担当は、成長戦略、規制改革、 経済・産業政策、広報戦略[14]

2023年7月24日、多発性骨髄腫に罹患していることを公表し、同年8月下旬まで入院治療することを明らかにした[15]。8月18日、退院を報告[16]

主張 編集

加計学園問題 編集

民進党が内閣府に、石破4条件のうち「獣医師の需給をどう判断したのか」と何度も追及したことについて、特区の制度上内閣府ではなく所管省庁が判断することであり、新設が決定したということは文科省も農水省も「新設が不要と論証できなかったことを意味」するにすぎないとし、内閣府に獣医師の需給判断など聞くこと自体がおかしいし「単なるいじめ」にすぎないと述べ、民進党は「政策議論や改革には関心がないダメ政党」であると述べている[17]

前川喜平による「総理のご意向」のために「逆らえなかった」という言い分は「間違っている」とし、「特区を活用した加計学園の獣医学部新設に問題があるのであれば、国家戦略特区諮問会議やワーキンググループ」で発言すべきだったと述べている[18]。また、首相の安倍晋三の「ご意向」が文科省の岩盤規制の突破であったとしても「現実には止められなかったのは、文科省には説得材料がなかったから」であり、「こんなことで行政がゆがめられたというならば、政治主導は全て行政をゆがめることになる」と主張している[18]。前川の座右の銘が「面従腹背」であることについて、「論外だ。そんなことを正々堂々という官僚なんて官僚のクズだと思う」と批判している[18]。また、出会い系バー通いを暴露されたために、「女性の貧困の実地調査」という屁理屈を考え出したとし、「所詮は屁理屈に過ぎず、リアリティーは感じられない」としている[18]

「大臣ご確認事項に対する内閣府の回答」というタイトルの流出文書に「官房長官、官房長官の補佐官、両副長官、古谷副長官補、和泉総理大臣補佐官等の要人には、『1、2ヵ月単位で議論せざるを得ない状況』と説明してある。」と書かれていることについて、官房長官の補佐官の担当はPFIのみで特区には関係ないため、「官房長官の補佐官に説明」する状況が生じるはずはないとし、この文言は「官邸の関与はすごい」と表現して「創作した職員(及びその人が所属するセクション)が水面下の根回しで関係者を自分の考える方向に誘導するため」に「文科省の職員による創作が入っている」のではないかと述べ、流出した文科省のペーパーの信頼性は非常に低いと主張している[19]

新型コロナウイルス対策 編集

2020年5月3日のテレビ番組の放送で、新型コロナウイルスの感染拡大防止策で政府が配る布マスクの一部を調達したユースビオ社について、岸が「マスクを受注したのは政府の人間とつながりがあったから」と発言したことに対して、同社の代理人弁護士は、虚偽の情報により「癒着に基づく不正があった」との誤解を招き名誉を傷つけられたとして、謝罪、損害賠償、放送内容の訂正や主要紙への謝罪広告を求める通告書を11日付でTBSと岸に送付した[20][21]。それに対しTBSはユースビオ社に「評論の範囲であり、名誉棄損には当たらない」との回答を行っている[22]

出演 編集

現在

テレビ
ラジオ

過去

テレビ
ラジオ

著書・論文 編集

著書 編集

  • 『ブレインの戦術 : 永田町を動かした政務秘書官のテクニック』あさ出版、2006年
  • 『ネット帝国主義と日本の敗北:搾取されるカネと文化』幻冬舎幻冬舎新書〉、2010年
  • 『アマゾン、アップルが日本を蝕む:電子書籍とネット帝国主義』PHP研究所〈PHPビジネス新書〉、2011年
  • 『オリンピック恐慌』幻冬舎〈幻冬舎新書〉、2018年

論文 編集

  • 「ポップカルチャーと安全保障」 Project-P、2003年

脚注 編集

  1. ^ 教員紹介慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科
  2. ^ 岸博幸 NHKプロモーション
  3. ^ 週刊東洋経済10月8日発売号『高校力 公立の逆襲 大学より濃い校風と人脈』
  4. ^ 岸博幸 講演依頼.com
  5. ^ a b c d e f g 「岸博幸」講演依頼.com
  6. ^ a b c d 「岸博幸」 慶應義塾大学
  7. ^ a b c d 「岸博幸」NHKプロモーション
  8. ^ 「岸博幸」NHKプロモーション
  9. ^ 岸博幸(インタビュアー:澁川修一)「「ITを実際の社会に落としていく」内閣官房・岸博幸氏」『CNET Japan』、朝日インタラクティブ、2004年7月12日https://japan.cnet.com/article/20069742/2023年7月24日閲覧 
  10. ^ 「07/29東京 【経済全般】 岸博幸氏 講演 フジトミの日経225・NYダウ投資セミナー」株式会社フジトミ
  11. ^ 大阪市特別顧問及び特別参与について 大阪市
  12. ^ 特別顧問一覧 大阪府
  13. ^ “内閣官房参与に岸博幸氏 成長・広報戦略担当”. 産経ニュース (産経デジタル). (2021年7月9日). https://www.sankei.com/article/20210709-5NDJAS6RYRJRTLNHIWLHGTVU3U/ 2023年7月24日閲覧。 
  14. ^ 内閣総理大臣辞令』(PDF)(プレスリリース)内閣官房、2021年7月9日https://www.kantei.go.jp/jp/content/000085563.pdf2021年7月14日閲覧 
  15. ^ "岸博幸氏 多発性骨髄腫を公表 8月末まで入院、抗がん剤治療控え「かなりしんどそうではあります」". Sponichi Annex. スポーツニッポン新聞社. 2023年7月24日. 2023年7月24日閲覧
  16. ^ “多発性骨髄腫の岸博幸氏が退院を報告「並外れた体力あって良かった」”. テレ朝news (テレビ朝日). (2023年8月18日). https://news.tv-asahi.co.jp/news_geinou/articles/hot_20230818_120.html 2023年8月18日閲覧。 
  17. ^ 加計問題を「無限ループ」に陥れた官邸・野党・マスコミの罪”. ダイヤモンド・オンライン. ダイヤモンド社 (2017年6月9日). 2017年7月26日閲覧。
  18. ^ a b c d “岸博幸・慶大院教授インタビュー 「加計学園問題は改革つぶし」「前川は官僚のクズ」”. 産経ニュース (産経デジタル): p. 2. (2017年6月12日). https://www.sankei.com/article/20170612-ZZIKCDNHGFPR7HM3J6FAFLPKU4/2/ 2023年7月24日閲覧。 
  19. ^ 加計問題の内部文書流出に見える文科省「真の体質」”. ダイヤモンド・オンライン. ダイヤモンド社 (2017年6月23日). 2017年7月26日閲覧。
  20. ^ “アベノマスク「ユースビオ」TBSと岸氏に謝罪要求”. 日刊スポーツ. (2020年5月13日). オリジナルの2020年5月13日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20200513133733/https://www.nikkansports.com/general/news/202005130000669.html 2023年7月24日閲覧。 
  21. ^ 神庭亮介 (2020年5月14日). “ユースビオがTBSに謝罪・訂正を要求 サンジャポ評論家「多分、政府の人間とつながり」”. バズフィードジャパン. 2020年5月16日閲覧。
  22. ^ TBS 「サンジャポ」岸博幸氏発言に見解「評論の範囲であり、名誉棄損には当たらない」”. Sponichi Annex (2020年5月28日). 2020年7月5日閲覧。

外部リンク 編集

官職
先代
高橋洋一
内閣官房参与
経済・財政政策担当)

2021年
次代
内閣総辞職