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平妖伝』(へいようでん、拼音:Píng yāo zhuàn)は、北宋仁宗皇帝の頃に貝州(現在の河北省)で起こった王則の反乱に基づく物語。早くて代、遅くとも代には講釈師の題材となっていたと考えられ、代には羅貫中が20回本の『三遂平妖伝』を編纂し、後に明末の文人馮夢竜が、胡媚児の転生や九天玄女の天書を巡るエピソードを加えた40回本『三遂北宋平妖伝』を著した。

日本でも皆川淇園滝沢馬琴といった江戸の好事家たちに愛好されており、中でも滝沢馬琴は深く傾倒し、20回本を元に『三遂平妖伝国字評』を記している。

物語の概要編集

以下の概要と登場人物では、40回本の内容に基づいて解説する。

春秋時代、妖術を得た白猿の化身である袁公は女神九天玄女の弟子となり、玉帝によって天上の秘書の管理人に任命される。だが袁公は任された書の中から、三十六の天罡大変法と七十二の地煞小変法が記された秘冊『如意冊』を盗み出し、その内容を下界の白雲洞の石壁に全て刻んでおいた。この件が天帝に知れたため、袁公は以後、秘冊の内容が他人に漏れぬよう、白雲洞の石壁の番をすることになる。

だが宋の時代になると、蛋子和尚と呼ばれるガチョウの卵から生まれた僧により、この秘冊の内容が漏出してしまった。蛋子は老狐の化身聖姑姑と出会ってこの秘冊の内容を解読し、聖姑姑やその息子左黜と共に、秘冊に記された妖術を習得する。

一方、聖姑姑の娘である胡媚児は、かつて則天武后の愛人だった男張六郎の生まれ変わりであった。胡媚児は旅中に突風にさらわれ母と別れ別れになり、道士張鸞の世話になっていたが、太子(後の仁宗皇帝)を惑わそうとしたことで関聖に斬られてしまう。胡媚児は東京(とうけい)開封府の質屋胡浩の一人娘胡永児として転生するが、聖姑姑によって前世は母子だったことを告げられ、夜毎、秘冊に記された妖術の会得に励むことになった。

その後、聖姑姑一行は貝州へと移り、胡永児(胡媚児)は前世の因縁によって、則天武后の生まれ変わりである軍人王則と結ばれる。

さてその頃、貝州の知事が兵士たちに俸禄を支給しない出来事が起こった。これに出くわした王則は、兵士たちに米と銭を与えたが、このうち左黜が用意した米と卜吉(張鸞の弟子)が用意した銭が貝州の倉庫から盗まれたものだったため、知事は怒り、王則を投獄する。だが王則は左黜たちによって救い出され、知事は彼らの手で討たれてしまった。王則は貝州の支配者となるが、この謀反は都に伝えられ、仁宗皇帝によって王則討伐の命が下される。

かくして、天上の秘冊の力を得た妖人たちは妖術を駆使して討伐軍と戦い、貝州の土地を騒がせることとなる。

主な登場人物編集

聖姑姑(せいここ)
普段は老婆の姿をしているが、もとは雁山に住んでいた老狐。息子の左黜が怪我をきっかけに名医・厳三点に出会うが、娘の媚児にも災厄が降りかかることを告げられたので、求道のために住処の洞穴を離れる。旅中で子供たちと別れ別れになるが、夢に出てきた則天武后のお告げによって華陰県の巡検・楊春の元に留まり、蛋子和尚と会って秘冊の内容を解読して、妖術を習得した。
左黜(さちゅつ)
もとは老狐(聖姑姑)の産んだ雄狐。元の名を胡黜児(こちゅつじ)という。若い読書人に化けて趙壱の妻をたぶらかそうとしたため、趙壱から弓矢で射られ、左足に障害がのこった。左黜・左瘸児(さかじ)と呼ばれるのはそれに由来する。
胡媚児(こびじ)
もとは老狐(聖姑姑)の産んだ雌狐。則天武后の愛人だった張六郎の生まれ変わり。後に胡浩の娘・胡永児として転生したが、聖姑姑と再会して妖術を身につけ、前世の因縁に従って則天武后の生まれ変わりである王則と結婚した。
蛋子和尚(たんしおしょう)
蛋子、即ちガチョウの卵から生まれた僧。作品後半では弾子和尚とも書かれる。その出生ゆえに寺の弟子たちに陰で蔑まれたため、育ての親である寺男が死んだのをきっかけに雲遊に出る。旅の途中、白雲洞の石壁に記された秘冊のことを知り、三度にわたる挑戦の後、七十二の地煞小変法を写し取ることに成功する。その後聖姑姑と出会って彼女の弟子となり、妖術を習得した。王則反乱後はその一党から離れ、諸葛遂智という老僧になりすまして文彦博の討伐軍に参加する。
張鸞(ちょうらん)
もとの名を張大鵬といい、冲霄処士と号す。聖姑姑と離れ離れになってしまった胡媚児の世話を見ていたが、彼女が命を落したため、胡浩の家に転生する手助けをした。後に博平県にて雨乞いの術を行ったところ、左黜との術比べになり、それを蛋子和尚によって仲裁された。その後、聖姑姑に引き合わせられ、一党に加わる。王則が東平郡王を称したときに「丞相」になったが、文彦博の討伐軍が迫ると強硬派の左黜らと合わず、卜吉とともに天台山に去った。
王則(おうそく)
貝州の軍人で、則天武后の生まれ変わり。胡永児(胡媚児)を娶り、聖姑姑たち妖人と共に反乱を起こす。
九天玄女(きゅうてんげんにょ)
女神。二個の弾丸を用いて戦う。春秋時代に趙国に招かれて下界に降りたところ、袁公に出会い、彼を弟子とした。
袁公(えんこう)
道術を会得した通臂の猿の化身。九天玄女の弟子となったが、後に自身が石壁に刻んでしまった秘冊の内容を守るために、白雲洞の番人を務めることになった。
包拯(ほうじょう)
北宋の名臣(実在)。作中では包竜図(ほうりゅうと)、包待制、包大尹(ほうたいいん)などと呼ばれる。はじめ東京開封府の長官として登場し、弾子和尚ら妖人の出没に対処する。河北で王則の反乱が拡大すると、枢密使に任命され、反乱討伐軍の総帥として文彦博を仁宗に推挙する。
文彦博(ぶんげんはく)
北宋の名臣(実在)。文招討とも呼ばれる。齢79の老身ながら、王則討伐の総帥に任命される。
馬遂(ばすい)
三遂の一人。王則と同郷の親友であり、彼と義兄弟の契りを結んでいた。官軍に属し、王則討伐の際に功績を立てる。
李遂(りすい)
三遂の一人。官軍に属し、王則討伐の際に功績を立てる。
諸葛遂智(しょかつすいち)
三遂の一人。老僧の姿で文彦博の前に現れるが、実は蛋子和尚がなりすましたものである。

日本語訳書編集

平妖伝を題材とした作品編集