幽明志怪シリーズ

幽明志怪シリーズ』(ゆうめいしかいシリーズ)は、津原泰水による日本の小説シリーズ集英社および筑摩書房より刊行されている。

概要編集

猿渡という男を語り手とした(一部例外あり)短篇の連作。ホラーともミステリーともつかぬ不可思議なストーリー、主人公猿渡の飄々とした語り口(作者曰く、「センテンスの長い、饒舌で脇道に逸れがちな、それでいて度忘れの多い文章」)が特徴である。 各短編は時系列順には収録されておらず、『猫ノ眼時計』巻末の年表で正確な時系列を確認することが出来る。

2012年刊行の第3巻『猫ノ眼時計』で完結とされていたが、2019年11月、著者の開講する文章講座の同人誌『エビス・ラビリンス』に、新作短篇「エルビスさんの帽子」が寄稿された。

あらすじ編集

以下を参照。

主な登場人物編集

猿渡(さるわたり)
本シリーズの主人公にして、一連の作品の語り手(『夕化粧』を除く)。ただし『新京異聞』のみ別人格(後述)。
過半の作品において「三十路を越えて定職につけずにいるぐうたら」。後に小説家となり所帯を持つ。
瀬戸内の離島、零落れた網元の家系の出。父親は中学時代に他界。母親、妹、弟がいる。高校時代は本土へ通学、大学進学時に上京した。
豆腐が大好物であり、食い道楽、大酒飲み。祖父の影響で歌舞伎などの古典芸能に詳しく、読書家でもある。カメラや自動車への関心も強い。作中、自動車はたびたび事故等により乗り換えている。
下の名前は設定されていない。また「猿渡」という名前は著者が近所の表札から拝借したものだという[1]
『新京異聞』のみ舞台となる年代が異なり、この「猿渡」は「恐らく彼の祖父」とされている[2]
伯爵(はくしゃく)
怪奇小説家としてその筋では有名で、黒尽くめの服装と長身から「伯爵」と綽名されている。ただし『新京異聞』のみ別人格(後述)。
大宮在住。猿渡とは交通事故を機に知り合い、共に豆腐好きであることから親しくなる。目指す食べ物のためなら労を厭わないという点でも意気投合し、猿渡は無職であった時期にはしばしば、各地の名物を目的に取材旅行に同行した。
『新京異聞』のみ舞台となる年代が異なり、本作の「猿渡」同様にこの「伯爵」も他作品とは別人という体裁となっている。「猿渡」の学生時代の先輩で、新京交響楽団の常任指揮者。
モデルは小説家の井上雅彦[3]
五十嵐 アイダベル(いがらし アイダベル)
『日高川』『城と山羊』『続・城と山羊』に登場。
鳥取にある旅館の娘。元シンガー/ソングライターで、猿渡は20代の頃、彼女の全国ツアーにベーシストとして参加したことがある。伯爵の熱烈なファン。奇矯な性格で、猿渡は彼女を清姫に擬えている。パイロキネシスの持ち主との疑惑がある。
奈々村(ななむら)
『奈々村女史の犯罪』『ピカルディの薔薇』『夢三十夜』に登場。
伯爵の、後に猿渡の担当編輯者。猿渡曰く、「そのうち書かせたいと思う題材を律儀に予告してくる習性」がある。奈々緋沙緒という歌手の伯母がいる。中井英夫虚無への供物』の登場人物である奈々村久生の姪[1]
エキセントリックな性格。著者の「週刊小説」での担当編輯者が原型となっている[4]
伊予田(いよだ)
『猫背の女』『埋葬蟲』『玉響』『猫ノ眼時計』に登場。
猿渡の大学時代からの友人。渋谷にある「雑賀昆虫普及社」勤務。仕事で訪れたマダガスカルで、同行した部下と共に蟲に寄生される(『埋葬蟲』)。後にこれが原因と思われる偏頭痛を起こし入院、苦痛のあまり医薬品を手当たり次第に濫用し心不全で死亡する(『玉響』)。
秦 遊離子(はた ゆりこ)
『蘆屋家の崩壊』『城と山羊』『続・城と山羊』に登場。
どこか人間離れしたような美女。猿渡とは大学時代の同級生であり、交際していたが突然退学。猿渡は彼女の暮らす福井県小浜市の集落を訪れ、10年ぶりの再会を果たすが、血の混淆を恐れる家族に襲われ、命からがら逃げ出す。集落は蘆屋道満(秦道満)こと道摩法師の末裔の村であり、霊力を保つための近親婚の風習があった(『蘆屋家の崩壊』)。後に瀬戸内の也美乃島で偶然に再会。実兄であり夫でもある三千崇が営む豊穣苑という団体で、邪教の巫女となっていた(『城と山羊』『続・城と山羊』)。
落合 花代(おちあい はなよ)
『カルキノス』『ケルベロス』に登場。
「スクリーム・クイーン」の異名をとる女優。猿渡と伯爵とは怪奇映画祭で知り合う。葉子という双子の妹がいる。
津原泰水の他作品にも名前が登場する。

作品一覧編集

脚注編集

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  1. ^ a b ちくま文庫『ピカルディの薔薇』「跋」。
  2. ^ ちくま文庫『ピカルディの薔薇』「跋」、著者ツイッターアカウント2018年9月12日投稿”. 2019年12月1日閲覧。
  3. ^ 単行本『蘆屋家の崩壊』「跋」(ちくま文庫版では当該文は削除)。
  4. ^ 多目的掲示板2012年 6月15日投稿”. 2019年12月6日閲覧。、ちくま文庫『蘆屋家の崩壊』「跋」。