広告宣伝車
広告宣伝車(こうこくせんでんしゃ)とは、トラックの荷台にあたる箇所の側面などに大判の広告を掲出するなど、商品やサービスなどの広告・宣伝を主たる目的として運行・設置される自動車である。
多くは、人目の多い繁華街などを走行しながら通行人等の目に触れさせることで宣伝活動を行い、音声や映像などによる宣伝を伴う場合もある。広告宣伝車による広告を仲介・実施する業者のあいだでは「アドトラック (ad truck)」という呼称が好んで用いられるほか、「車体広告」、「広告トラック」、「移動媒体」などとも呼ばれる。
概要編集
広告宣伝車は、商品やサービスを掲示・広告しながら繁華街などを繰り返し低速走行するなどによって、歩行者や通行車両などに周知することを目的としている。自動車が登場した時代から使われている古典的な方法で有り、広告媒体としても古い部類に入る。1936年には米オスカー・マイヤー社のウィンナーモービルが、日本では1909年に明治屋がキリンビールの宣伝のためビール瓶型の自動車を採用している[2]。
広告宣伝車は、掲示による広告を主たる目的としている点で、搬送業務を行っているトラックの荷台に商品や会社名が書かれている例や、旅客輸送を行うバスが車体広告を掲載(ラッピングバスを含む)、音声による広告を主目的とする街宣車(選挙カーを含む)などは異なる。
広告宣伝車として使用される車輌はトラックが一般的であり、大型トレーラーから軽トラックまで様々であるが、広告宣伝車として改造されたバスが用いられる例もある。広告される商品は、芸能・テレビ番組、ウェブサイト、性風俗、パチンコ店など多岐に渡る。
日本で広告宣伝車が運行される場合、道路交通法や道路運送法のほか、自治体が定める屋外広告に関する条例などに則る必要がある[3]。
批判と規制編集
広告宣伝車が用いる広告の手法では次第に色やライトの使い方がエスカレートし、なかには風俗店の広告もあるなど、街の景観を悪化させていることが問題となった[4]。また、広告や宣伝目的のために街中で大型自動車を走行させることについては、それが無用な排出ガスの増加や交通渋滞の惹起につながっているとして、環境面からの批判もなされる[5]。
東京でも渋谷や新宿、秋葉原といった繁華街に広告宣伝車が増加[6]、大型トラックの荷台に蛍光色や原色をちりばめたり、眩しい照明を使ったりして若者の目を引こうとする派手な広告には、都民から苦情が相次ぐようになった[6]。また、有識者による東京都の広告物審議会でも、「最近の広告宣伝車は公序良俗の面から見ても行き過ぎ」との指摘が相次いだ[6]。
このため東京都は2011年(平成23年)3月、「屋外広告物条例施行規則」を改正し、従来、電車・バス業界が取り組んできた広告デザインの自主規制を、広告宣伝車でも始めることとした[6]。これは、広告宣伝車が公道での走行許可を得る際にデザイン審査を受ける制度で[4]、118社が加入する公益社団法人「東京屋外広告協会」によるデザイン審査をパスして「審査済証」を交付されなければ区市町村からの許可が下りないという内容である[6]。
この改正条例は同年10月に施行されたが、これには罰則がなく、また東京都外の広告宣伝車には適用されないなど欠陥が指摘されている[4]。実際、事業者を対象として改正条例施行前に東京都内で開催された事前説明会では、参加者から「(都内の繁華街を)都外ナンバーがたくさん走るようになるだけで、まじめにやっている業者の仕事が無くなる」との訴えがなされたという[6]。
車輌の架装編集
通常のトラックの荷台にあたる広告掲出面には、広告の内容や画像などを掲載した広告シートが取り付けられる。広告シートの素材の多くはFFシートやターポリンなどであり、大型インクジェットプリンターを用いて広告が印刷されている。広告シートは、テントを張るような鳩目方式や、アメリカ製のクイックジップ方式などによってトラック荷台の掲出面へ取付けられる。
また、日没後の広告への注目度を高める目的から、広告掲出面の裏側に照明装置を装備していることもある。
多くの広告宣伝車には拡声装置が備え付けられ、音楽・ナレーション・キャッチフレーズを流している。
脚注編集
関連項目編集
外部リンク編集
- 広告宣伝車による広告の取扱いについて(東京都都市整備局、2011年9月9日)
- 広告宣伝車 自主審査基準(公益社団法人 東京屋外広告協会)