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強化人間

サイエンスフィクションの登場人物

強化人間(きょうかにんげん)とは、サイエンス・フィクション作品において、何らかの手段によって人工的に能力を強化された人間の事を指す。ブーステッドマン (Boosted Man) と呼ばれる事も多い。

「肉体を強化した」という意味でのキャラクターはサイボーグなどを含め様々な作品に登場するが、本記事では主に精神面を改造強化した『ガンダムシリーズ』の強化人間についてのみ詳述する。

薬物投与・洗脳マインドコントロールといったかなり非人道的なテーマの産物である。

ガンダムシリーズ編集

宇宙世紀における強化人間編集

強化人間とは編集

宇宙世紀を世界観とするガンダム作品における強化人間 (Cyber-Newtype) とは、投薬や心理操作により人の潜在能力からニュータイプと同じような感応能力を人工的に引き出し、またそれをモビルスーツの操縦能力に特化させ(サイコミュの項を参照)、身につけた人間の事を指す。初出はTVシリーズ第二作『機動戦士Ζガンダム(1985年)』。

『機動戦士ガンダム』では、ニュータイプについて研究を行うフラナガン機関にて才能を強化したララァ・スン少尉が登場するが、彼女は強化人間ではなく通常のニュータイプである。また、後に元々あるニュータイプの素質を人工的に高める施術が確立されたが、これを受けたとされる者(プルツークェス・パラヤなど)も、本質的な意味での強化人間とは言えない。

強化人間たちは兵器としてかなり強引に生み出され、人間ではなく兵器として虐待に近い扱いを受けていた経緯もあり、その多くが情緒的に不安定で自制心を欠き、感情の赴くままに暴走して悲劇的な最期を遂げている(強化人間が横暴な上官に反抗する、あるいは暴走して指揮統率を乱すのは、Zガンダムから逆襲のシャアにかけてのガンダムシリーズの定番展開だった)。

強化人間の能力とは編集

強化人間は、ニュータイプのように独特の感応波(脳波、サイコウェーブ)を発する事が出来る。この感応波によって、離れていても他者やその状況を正確に認識する能力、遠く離れた場所にいる同じ能力を持った人間との意思疎通能力を発揮する。また、サイコミュ(サイコ・コミュニケーター)という装置を使い、感応波でビットファンネルといった遠隔誘導攻撃端末を操作することも出来る。

多くの強化人間は身体能力の底上げも同時に行われており、パイロットに掛かるG(加速度)等の問題で強化人間にしか扱えないギャプランなどの専用モビルスーツも存在する。強化人間は瞬間的に300Gという衝撃を受けても戦闘を継続することが出来るという描写がある[1]。白兵戦時に人間離れした腕力などで常人を圧倒するといった描写こそみられなかったが、『機動戦士ガンダムΖΖ』では強化人間となったキャラ・スーン宇宙服であるパイロット用ノーマルスーツを腕力のみで引き裂いたり、モビルスーツの爆発に巻き込まれても肉体には目立った損壊がみられない[2]といった、肉体的な強化を伺わせるような描写も見られた。

被験者に対して薬物投与や強迫観念を植え付ける等のマインドコントロールといった、人体にとっては過酷な過程が必要な事もあり、対象となった人間は精神的な障害や情緒不安定な状態を引き起こしてしまうことが多い。

強化人間の製作経緯編集

ニュータイプと言われた人々はテレパシー予知能力などの特異な才能を持つ。予知能力があり、敵の意思を読む事が出来る事は、機先を制するパイロットには有益な能力であるため、宇宙時代の軍事世界にあっては有能とされた。人類はそのインテリジェンスを、同族を加害することに躊躇なく投下する動物であるから、それが一部のニュータイプの採用に繋がり、ニュータイプ研究所の開設ともなった[3]。本来は、自然淘汰が突然変異を待つにしても自然の理に準ずるのが種の変革だが、人類の特異な才能と意思は、ニュータイプを人工的に作ってしまう事に何の痛痒も抱かなかった[4]

一年戦争の終戦後、連邦軍にてジオン公国軍の施設や軍事資料が押収され、その中にニュータイプに関する資料が発見された。これをもとに連邦側が人工的に生み出されるニュータイプ、強化人間を作り上げる事になる。

強化人間の研究年表編集

機動戦士Zガンダム編集
  • U.C.0087 - 0088

グリプス戦役では、初めて強化人間が試験的に「実用化」され、フラナガン機関と同様にニュータイプの研究を行っていた地球連邦下の組織、ムラサメ研究所(日本)で強化を施されたフォウ・ムラサメオーガスタ研究所(アメリカ)で強化を施されたロザミア・バダムバスク・オム率いる強化人間部隊のゲーツ・キャパなどが実戦投入された。宇宙世紀において初めての強化人間はゲーム『機動戦士ガンダム ギレンの野望』シリーズにて登場したプロト・ゼロ(ゼロ・ムラサメ)であるとされるが、これはあくまでもゲーム内における設定である。

機動戦士ZZガンダム編集
  • U.C.0088 - 0089

第一次ネオ・ジオン抗争時には、強化人間の研究は主にハマーン・カーンの率いるネオ・ジオンで継続されていて、初期の段階では普通の人間であったが後日強化人間として手術されたキャラ・スーンやマシュマー・セロが登場する。 強化前との人物像の変化が観察できるシーケンスが確認でき、キャラ・スーンは元々強化前の段階からモビルスーツ搭乗時に情緒が不安定になり時に戦闘の継続が困難となる性癖があったが、強化後はその傾向がほぼ克服されており、マシュマー・セロはファンネルなど大量のサイコミュ兵器を遠隔操作する能力や、巨大なモビルアーマーを単独で操縦する能力などに主眼が置かれていたそれまでの強化人間と異なり、一般的なモビルスーツの操縦能力が極端に高められるという、アムロ・レイなどの主人公側のニュータイプに類似した能力が持たせられていた。しかし、両名ともジュドー・アーシタ達との過去の交流の記憶がマインドコントロールで消し去られ、キャラ・スーンは露出狂的な性癖、マシュマー・セロはハマーン・カーンへの過度の従属心が更に肥大化するという、他作品の強化人間における情緒不安定による悲劇とは別の意味での精神状態の悪化や悲哀が描写されていた。また、キャラ・スーンにはランスニーのギーレン兄弟、マシュマー・セロにはイリア・パゾムという異性の護衛役兼監視役が配属されており、作中具体的な明言はないものの、強化の結果性的な面で何らかの問題を抱え込んだ可能性が示唆される描写[5]が見られた。両名は共に作中終盤で戦死するが、情緒不安定により自滅するというよりは、最期まで主君の命令通り眼前の敵を撃滅する事に固執して相打ち同然に散っていくという、他作品の強化人間の悲劇的な最期とは一風異なる結末[6]が描き出されていた。

また、ネオ・ジオンは10歳程度の少女の見た目をしたクローン・ニュータイプであるプルシリーズも開発している。

機動戦士ガンダム MSV-R ジョニー・ライデンの帰還編集
  • U.C.0091

漫画『機動戦士ガンダム MSV-R ジョニー・ライデンの帰還』では、一年戦争当時のジオン公国による「兵員不足を補うため、一般人の能力を「底上げする」ための強化人間」の試験作として、ユーマ・ライトニング、イングリッド0が登場している。ただし前者のユーマは、一般的な意味の強化人間とは異なり、感応能力より身体能力の強化に重点を置いた強化が施されている。このため後の強化人間と比較して精神は安定しているが、肝心の能力面は通常のエースパイロットと大差がない。一方、イングリッド0はプルシリーズと同様に生まれながら強化されており、サイコミュ能力も発現している。

機動戦士ガンダム 逆襲のシャア編集
  • U.C.0093

第二次ネオ・ジオン抗争では、シャア・アズナブルの率いるネオ・ジオンによって強化されたギュネイ・ガス(グラーブ・ガス)が登場する。彼は同軍の参謀カイザス・M・バイヤーからは当初情緒不安定を懸念されていたが、歳相応の血気盛んさにも近く、同軍の総帥であるシャア・アズナブルもそれを単なる若さ故と一蹴し、グリプス戦役期の強化人間と比較すれば精神的障害・情緒不安定さはあまり見られないように思われた。しかし、高いNT能力を持つ少女クェス・パラヤが現れてからは徐々に情緒不安定の様相を見せ始め、最終的に上司であるニュータイプ研究所所長ナナイ・ミゲルに反逆するような態度を見せた。ギュネイは、第一に心理的な刷り込み操作を、二義的な物として薬物による神経反射作用の促進を施され[7]サイコミュを操る能力はロンド・ベルの撃った核ミサイルを全基撃墜するなど高い水準を示した。しかし、肉体的にはネオ・ジオンの兵士達との喧嘩の際に殴り倒されるなどそこまで強いわけではなかった[8]

機動戦士ガンダムUC One of Seventy Two編集
  • U.C.0095

地球連邦軍アナハイム・エレクトロニクス社が、ネオ・ジオン残党軍をターゲットにして行った合同演習では、 フェネクスのパイロットとして強化人間のリタ・ベルナルが登場する[9]。リタはNT能力の素養を見せた事から、過去にティターンズによって誘拐後ニュータイプ研究所に送られ、そこでマシーンと繋がる為に記憶を消去し頭の一部を空っぽにする処置を受けていた。

機動戦士ガンダムUC編集
  • U.C.0096

第三次ネオ・ジオン抗争では、プルシリーズの生き残りで12番目のマリーダ・クルスジオン共和国が開発したフル・フロンタルが登場する。

機動戦士ガンダム ムーンクライシス編集
  • U.C.0099

漫画『機動戦士ガンダム ムーンクライシス』では、この作品限定で強化人間はブーステッドマンと呼称されている。

機動戦士ガンダムF91編集
  • U.C.0123

コスモ・バビロニア建国戦争では、クロスボーン・バンガードの軍事部門の指導者カロッゾ・ロナはラフレシア・プロジェクトによって自分の体に手術を施して強化人間となっていた。演説中に狙撃されてもマスクで弾く、宇宙空間でも生身で活動し、MSのコクピットハッチを素手で無理矢理こじ開けるなど、過去の強化人間とは別次元の身体能力を発揮した。

機動戦士Vガンダム編集
  • U.C.0153

ザンスカール戦争において、ファラ・グリフォンカテジナ・ルースなどは小説版ではスーパーサイコ研究所によって手術を施されて強化人間となっていた。

未来世紀における強化人間編集

機動武闘伝Gガンダム』には強化人間に近い要素としてDG細胞バーサーカーシステムが登場する。DG細胞に感染した人間は精神の凶暴化及び身体能力の向上といった現象が発生する。さらに侵食が脳まで達すれば理性すら持たないゾンビ兵となってしまう。ただしこれは強靭な精神力があれば押さえ込み、逆に制御することさえ出来るほか、侵食がさほど進んでいなければ医学的な処置による除去も可能。バーサーカーシステムはノーベルガンダム及びウォルターガンダムに搭載されたシステムで、外部から精神をコントロールしつつ能力を大幅に強化するというもの。これは不可逆的なものではないものの、精神面の安定と引き換えの力という側面は強化人間と共通している。

アフターウォーにおける強化人間編集

機動新世紀ガンダムX』を始めとするアフターウォーを舞台とする作品には、人工ニュータイプ(じんこうニュータイプ、Cyber-Newtype)と呼ばれる人間が登場する。

人工ニュータイプの場合、ベルティゴなどのニュータイプ専用モビルスーツに搭乗しなければその能力を発揮することは出来ず、特にニュータイプ用兵器ビットは、その能力を大幅に使わなければならない。

また、1ヶ月に一度、シナップスシンドロームと呼ばれる後遺症が起こる。これは無理な強化をなされたために人工ニュータイプが激烈な苦痛を伴う発作を起こす症状の事であり特殊薬品の投与などの適正で高度な措置をしない限り、発作から逃れることは出来ない。

本作では、カリス・ノーティラスが人工ニュータイプである。カリスに強化を施したノモア・ロングことドーラット博士が人工ニュータイプを作った真の目的は巨大モビルアーマー「パトゥーリア」の生体ユニットにするためであり、成功例たるカリスも当然例外ではなかった。また、人工ニュータイプを作り出す技術は作中の時代ではノモアしか持っていなかったようである。

『機動戦士ガンダムSEED』シリーズ編集

前述の定義「何らかの手段によって人工的に能力を強化された人間」という意味ではコーディネイターも強化人間の一種という広義的な解釈が可能だが、作中では強化人間的な性質はさほど与えられておらず宇宙世紀におけるスペースノイドに近い扱いである。

『機動戦士ガンダム00』編集

西暦2300年代初頭を舞台とする『機動戦士ガンダム00』には中国インドロシアを中心とする「人類革新連盟」(通称「人革連」)が極秘で研究している「脳量子波」を使う「超兵(ちょうへい)」と呼ばれる強化人間兵士が登場する。デザインベビーナノマシンを投入していることが作中の台詞に出てくる。また、アレルヤ・ハプティズム(ハレルヤ)などの戦災孤児を集めて実験を続けていたようである。尚、人革連軍に配属された超兵1号、ソーマ・ピーリス(マリー・パーファシー)は自分は完全体でありアレルヤを出来損ないの失敗作だと言うが、ハレルヤ曰く“脳量子波による超反射能力の速度域に思考が追いつかない”ピーリスの方が不完全であり「反射と思考の融合こそ完全な超兵のあるべき姿だ」と作中で言っている。また、2ndでは思うような結果を出せずに焦った「超人機関」が別の人格を上書きすることで実験により失われていたマリーの五感を復元し、ピーリスとして軍に送り出すことで組織の存続を図ったことが発覚した。人格の分裂こそ起きたものの、唯一の成功例たる完全体の「真の超兵」はアレルヤだけである。刹那やイノベイドも含めた他の脳量子波使いが「ELS」の脳量子波に苦悶する姿が描かれており、アレルヤのみが「もう1人のアレルヤ」ハレルヤにより他者の脳量子波の遮断が可能な唯一の存在となっている。また、アレルヤやマリーの他にも超兵はおり、『機動戦士ガンダム00P』2ndには能力は低いものの7歳の超兵レナード・ファインズが「次世代技術開発研究所」のデルフィーヌ・ベデリアと共に登場する。レナードは漫画版で「ELS」と融合している。

『機動戦士ガンダムAGE』編集

機動戦士ガンダムAGE』を始めとするアドバンスド・ジェネレーションの作品群には他シリーズのような不可逆的な強化人間こそ登場しないものの、これらのコンセプトを受け継ぐ要素としてXラウンダーとしての能力を付加・増幅する代わりに精神面に多大な負荷をかける装置ミューセルが登場する。主にヴェイガンのパイロットが使用するほか、主人公の一人であるアセム・アスノも使用したことがある。詳細は機動戦士ガンダムAGE#技術・兵器を参照。

『ガンダムビルドファイターズ』編集

ガンダムビルドファイターズ』に登場するフラナ機関が擁する技術「エンボディシステム」がこれに該当する。これはプラフスキー粒子を視認させることによってガンプラバトルを有利にするというものだが、過剰な出力をかけるとパイロットの人格の凶暴化や錯乱、最悪の場合廃人にまで追い込んでしまう危険性を持つ。主にアイラ・ユルキアイネンがこのシステムを使用したほか、前述の副作用を逆手にとってメイジン・カワグチの洗脳にも用いられた。ただし本作の直接の続編である『ガンダムビルドファイターズトライ』を始めとする本作の派生作品群にはこのシステムは登場していない。

『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』編集

機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』を初めとするP.D.を舞台とする作品には脊髄に端子を埋め込むことで人体と機械の物理的接続をする「阿頼耶識システム」が存在する。主人公である三日月・オーガスを始めとした鉄華団の少年兵達など数多くの人物が該当し、特にTVシリーズにおいては主人公としては初の不可逆的な強化人間といえる。これによって訓練をほとんど行わずに機動兵器を操作できるほか、直感的な操縦が可能となるために機械的な操縦と比較してより自由度が高くなるアドバンテージが得られる。人体に機械的な処理をするという意味では上記の強化人間達と共通するが、決定的な違いとして純粋に機械との接続を目的としたものであって上記の例のように感応性や思考能力や反応速度、身体能力といった人間としての能力は一切向上しない点が挙げられる。

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  1. ^ 『機動戦士ガンダム Twilight Axis』など。
  2. ^ 強化人間以外の同時期の一般パイロットでは、オウギュスト・ギダンのように爆炎の中で肉体が損壊していき白骨化するといった描写が見られたが、強化人間ではキャラ・スーン以外にもプルツーがクイン・マンサの爆発に巻き込まれて負傷した際にも肉体には目立った外傷があまり見られないといった事例があった。
  3. ^ 小説『機動戦士Zガンダム 第四部 ザビ家再臨』24ページ>
  4. ^ 小説『機動戦士Zガンダム 第四部 ザビ家再臨』24~25ページ>
  5. ^ 作中キャラ・スーンが興奮の余りジュドー・アーシタの顔面を胸の谷間に挟み込む等の性的な誘惑行動を起こした時、ギーレン兄弟は「若い男や強化人間を見ると性的な面で暴走を起こす」という主旨の発言を行っているが、強化前には自らの巨乳を任務遂行や状況打開の為の「女性の武器」として利用しようとする姿勢こそ見られたが、色情症が疑われる状況にまでは至っていなかった為。
  6. ^ 第三者から見れば単に捨て石にされただけのようにも見えるが、彼女達の立場から見れば主君への忠節を全うした結果とも解釈できる上、敵部隊の撃滅という最終任務自体は概ね達成している事から。
  7. ^ 小説『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア ベルトーチカ・チルドレン』89ページ
  8. ^ 小説『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア ベルトーチカ・チルドレン』204~205ページ
  9. ^ 『one of seven two』の段階ではパイロットの詳細は設定されておらず、リタは小説『機動戦士ガンダムUC 不死鳥刈り』で設定された

関連項目編集